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親が「個人事業主」でした。
事業用の銀行口座や売掛金はどう相続しますか?

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

親御さんが個人事業主として長年ビジネスを営んできた場合、万が一のことが起きたときに事業用の資産や負債がどのように扱われるのかは、残されたご家族にとって非常に切実な問題です。

法人とは異なり、個人事業主の財産は事業用であっても個人の財産と一体として扱われます。そのため、銀行口座の凍結をはじめ、スムーズな事業継続や相続手続きには特有のステップを踏む必要があります。

今回は、個人事業主の親御さんを亡くされた相続人の方に向けて、銀行口座の扱い、売掛金や買掛金の処理、そして最新の法改正や税務手続きの注意点まで詳しく解説します。

個人事業主の親が亡くなったとき、銀行口座や売掛金はどうなる?

Q 親が使っていた「個人事業用の銀行口座」や「売掛金」はどのように相続しますか?
A 個人事業用の口座であっても、名義人が死亡した時点で銀行口座は凍結されます。そのため、売掛金の回収や引き落とし口座の変更には、遺産分割協議を経て相続人名義への変更または新規口座への移行手続きが必要です。また、売掛金や買掛金もすべて「遺産」の一部として、他の財産と一緒に遺産分割の対象となります。

親御さんが亡くなると、たとえ屋号がついた事業用の口座であっても、金融機関が死亡を確認した段階で口座は凍結され、入出金ができなくなります

これにより、取引先からの売掛金の入金が止まったり、光熱費やリース料などの引き落としがストップしたりといった影響が生じます。事業を継続する場合でも廃止する場合でも、まずは口座の凍結解除に向けた手続きを進めなければなりません。

売掛金・買掛金も相続財産に含まれる

個人事業主の財産は、現金や不動産だけでなく、事業に関する債権・債務もすべて相続の対象です。

  • 売掛金(未回収の売上):将来お金を受け取る権利であり、プラスの相続財産となります。
  • 買掛金・未払金(仕入代金や経費):支払う義務であり、マイナスの相続財産(債務)となります。

これらは相続人全員の共有財産となるため、誰がどのように回収・支払い担当を引き継ぐのかを明確にする必要があります。

事業継続の判断と速やかな口座・名義変更の手続き

親の事業をそのまま引き継いで継続する場合、実務上の手続きを迅速に行うことが求められます。

金融機関での口座凍結解除と口座変更

凍結された事業用口座の資金を引き出すには、遺産分割協議が調うのを待つか、相続人全員の同意書を添えて金融機関所定の手続きを行う必要があります。

しかし、事業資金の停滞を防ぐためには、取引先に対して親の逝去を伝え、新しく相続人名義(または事業を引き継ぐ相続人の屋号付き口座)を早めに開設し、振込先口座を変更してもらうのが実務的です。

売掛金の確実な回収に向けた注意点

取引先との信頼関係を維持しつつ売掛金を回収するためには、以下のような対応が必要です。

  • 取引先へ速やかに連絡し、今後の振込先口座を案内する
  • 未回収の売掛金リストを作成し、モレがないよう管理する
  • 必要に応じて「事業承継に関する同意書」を取引先と取り交わす

忘れてはならない重要な税務手続き「準確定申告」

個人事業主が亡くなった場合、通常の確定申告とは別に「準確定申告」という特別な手続きが必要になります。

準確定申告とは

亡くなった方のその年の1月1日から死亡した日までの所得を計算し、相続人が代わりに税務署へ申告・納税する手続きです。

  • 申告期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
  • 対象:売掛金の回収分や、死亡日までに発生したすべての事業所得

期限が非常に短いため、葬儀や相続手続きに追われる中で速やかに税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

不動産や許認可の引き継ぎに関する注意点

事業で店舗や事務所、土地などを賃借または所有していた場合、名義変更の手続きが発生します。

不動産の相続と義務化への対応

親名義の店舗や自宅兼事務所を相続する場合、相続登記(不動産の名義変更)が法的に義務化されています。不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わないと、過料の対象となるリスクがあります。

また、2026年4月からは、住所や氏名が変わった際の変更登記も義務化されるため、事業用不動産を保有している場合は速やかな権利関係の整理が不可欠です。

各種許認可の引き継ぎ

飲食店や建設業、古物商など、事業を行う上で行政の「許認可」が必要だった場合、個人の死亡によってその許認可は原則として消滅します。

  • 被相続人の許可をそのまま引き継ぐことは原則できません。
  • 新たに相続人が許可を取得し直すか、事業譲渡の手続きを踏む必要があります。
  • 許認可の種類によっては、死亡後一定期間内の申請で引き継ぎが認められる特例もあるため、所轄官庁や専門家に確認しましょう。

まとめ:個人事業の相続は専門家への相談を

個人事業主の相続は、通常の預貯金や不動産の相続に比べ、売掛金の回収、準確定申告、取引先への対応、許認可の変更など多岐にわたる複雑な実務が伴います。

「何から手をつければいいか分からない」「事業を円滑に引き継ぎたい」とお悩みの方は、相続問題に強い弁護士や税理士などの専門家に早めにご相談ください。適切なサポートを受けることで、トラブルを防ぎ、スムーズな事業承継を実現することができます。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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