孫は直接の相続人になれるのか?
可愛い孫に対して、「自分の財産を直接残してあげたい」「学費やマイホーム資金の足しにしてほしい」と考える方は少なくありません。しかし、日本の民法では法定相続人の順位が厳格に定められており、第一順位は「子ども」です。子どもが存命である限り、原則として「孫」には相続権がありません。
例外として、親(被相続人の子)がすでに亡くなっている場合には「代襲相続」が発生し、孫が代わりに相続人となりますが、親が生きている状態で孫に財産を残すには、生前からの法的な対策が必要になります。
代襲相続以外で孫に財産を残す理由
子どもを飛ばして孫に財産を渡すことには、心理的な理由だけでなく、「相続税の負担を軽減する(一代飛ばしによる課税回数の減少)」という目的もよく挙げられます。孫に直接財産を引き継がせるための代表的な2つの方法について解説します。
方法1:遺言書で孫に「遺贈」する
最もシンプルで確実な方法は、生前に遺言書を作成し、「孫の○○に△△の財産を遺贈する」と書き残すことです。法定相続人以外の人に遺言によって財産を無償で譲ることを「遺贈(いぞう)」と呼びます。
遺贈のメリット
遺言書を作成するだけで実行できるため、孫本人の同意や煩雑な手続きが不要です。自分の意思だけで「どの孫に、どの財産を、どれだけ渡すか」を自由に決めることができます。特定の孫にだけ財産を残したい場合や、不動産など特定の財産を指定して渡したい場合に非常に有効です。
遺贈のデメリット・注意点
孫への遺贈は、本来財産を受け取るはずだった子ども(法定相続人)の取り分を減らすことになります。そのため、「遺留分(いりゅうぶん:一定の相続人に最低限保障された取り分)」を侵害してしまうと、死後に子どもと孫の間でトラブル(遺留分侵害額請求)に発展するリスクがあります。 また、孫は法定相続人ではないため、相続税がかかる場合には税額が「2割加算」されるという税務上のデメリットにも注意が必要です。
方法2:孫と「養子縁組」をする
もう一つの方法は、生前に孫と「養子縁組」を行うことです。養子縁組によって法律上の親子関係を結ぶことで、孫は「実子」と同じ扱いの第一順位の法定相続人となります。
養子縁組のメリット
孫が法定相続人になるため、基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を計算する際の「法定相続人の数」が1人増え、相続税の非課税枠が広がるというメリットがあります。また、養子になった孫には遺留分も認められるため、より強固な権利を持たせることができます。
養子縁組のデメリット・注意点
養子縁組を行うには当事者双方(孫が未成年の場合は親権者)の同意と役所への届け出が必要です。また、他の子どもたちから見れば、突然相続人が増えて自分の法定相続分が減ることを意味するため、事前の説明がないと親族間の感情的な対立を招く恐れがあります。 なお、孫を養子にした場合でも、相続税の「2割加算」の対象からは外れません(代襲相続人でもある場合を除く)ので、税務上の効果については慎重なシミュレーションが必要です。
不動産を孫に引き継がせる場合の注意点
孫に実家や土地などの不動産を残したい場合は、法改正の動向にも注意が必要です。
相続登記の義務化と所有不動産記録証明制度
2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が必須となりました(違反すると過料の対象)。孫へ遺贈した場合や養子縁組によって相続させた場合でも、速やかに名義変更を行わなければなりません。 また、2026年(令和8年)4月からは所有者の氏名や住所の変更登記も義務化されます。不動産を所有する責任は年々重くなっているため、単に財産を渡すだけでなく、不動産の維持管理や名義変更の手続きについて、事前に家族間でしっかりと共有しておくことが重要です。
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