親が亡くなった後、遺産分割の話し合いを進める中で、きょうだいのうちの一人が生前に親の預金を勝手に引き出していたことが発覚するトラブルは少なくありません。「親の世話をしたんだから自分の分だ」「お前の知ったことではない」と開き直られ、話し合いが進まないケースも多々あります。
このような使途不明金(横領された財産)を取り戻すためには、感情的な対立を避けて、客観的な証拠を集めた上で法的な手続きを進める必要があります。本記事では、預金の使い込みに対する具体的な調査方法と、取り戻すための民事手続きについてわかりやすく解説します。
親の使途不明金を取り戻す手順と法的手続き
親の財産がきょうだいに勝手に使われていた場合、泣き寝入りする必要はありません。遺産の公平な分割を実現するためには、以下のステップに沿って冷静かつ着実に対応することが重要です。
1. 銀行から取引履歴を取り寄せて証拠を集める
使途不明金を取り戻すための第一歩は、客観的な証拠の収集です。まずは被相続人(親)名義の口座がある金融機関に対し、過去の預金取引履歴(通帳のコピーや入出金明細)を開示請求します。
開示請求を行う際は、以下の点に注目して資金の流れを精査します。
- 親が寝たきりや入院中で、自力でATMに行けない時期に多額の現金が引き出されていないか
- 高額な窓口出金や、特定の口座への不自然な振込履歴がないか
- 親の生活費とは明らかに異なる使途の支出がないか
通帳や取引履歴は、後々の法的紛争において極めて強力な証拠となります。
2. 遺産分割協議での「特別受益」の主張
生前の使い込みが判明した場合、まずは相続人全員による遺産分割協議の場でその事実を指摘します。
もし使い込んだきょうだいが「あれは生前贈与だ」と主張する場合、それが認められると特別受益(被相続人から生前に受けた特別な利益)として扱われる可能性があります。特別受益にあたる場合、その金額を相続財産に持ち戻して(足し戻して)各人の相続分を計算するため、使い込みをした人は結果的に自身の相続分が減ることになります。
3. 話し合いで解決しない場合の民事手続き
当事者間の話し合いや遺産分割調停で解決しない場合、民事上の裁判手続きを利用して金銭を取り戻すことになります。主な手段として以下の2つがあります。
- 不当利得返還請求訴訟:法律上の正当な理由なく他人の財産で利益を得て、そのために他人に損失を与えたとして、返還を求める訴えです。
- 不法行為に基づく損害賠償請求訴訟:勝手な預金の引き出しが、他の相続人の相続権を侵害する「不法行為(違法な行為)」に該当するとして、損害賠償の支払いを求める訴えです。
訴訟を提起するためには、いつ、誰が、いくら引き出したのかを証明する証拠が不可欠となります。
不動産が含まれる場合の最新の注意点
使途不明金の調査と並行して、親が不動産を所有していた場合は相続登記の手続きも進める必要があります。2024年4月1日から相続登記の申請が法律上の義務化されており、正当な理由なく放置すると過料(罰則)が科されるおそれがあります。
また、2026年4月からは住所変更登記等も義務化される予定です。預金トラブルと不動産の相続手続きが複雑に絡み合うと、解決までの時間も長期化しやすくなります。
さらに、近年では「所有不動産記録証明制度」なども整備されており、被相続人が所有していた不動産の全容をスムーズに把握できるようになっています。預金だけでなく不動産も含めた財産全体を正確に把握することが、適正な相続解決への近道です。
使途不明金の回収は弁護士にご相談ください
きょうだい間での財産の使い込みトラブルは、当事者同士で話し合おうとすると感情的な対立が激化しやすく、決裂してしまうケースが後を絶ちません。また、銀行からの取引履歴の取り寄せや、不当利得返還請求・損害賠償請求といった法的手続きを個人で正確に行うのは非常に困難です。
確実かつ円満に使い込み金を取り戻し、適正な遺産分割を実現するためには、相続問題に強い弁護士への早期の相談をおすすめします。専門家に依頼することで、証拠集めのサポートから裁判手続きの代理まで一任することができ、精神的な負担も大幅に軽減されます。
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