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遺産分割調停が不成立になった時の「自動的な審判手続きへの移行」

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

遺産相続において、相続人同士の話し合いがまとまらない場合に利用されるのが「遺産分割調停」です。しかし、調停委員を介しても合意に至らず、「調停不成立」となってしまうケースは少なくありません。

調停が不成立に終わった場合、手続きがどのように進むのか不安に感じられる方も多いでしょう。従来であれば、改めて裁判所に「審判」の申し立てを行う必要がありましたが、現在の法制度では自動的に次のステップへ移行する仕組みが整えられています。

この記事では、遺産分割調停が不成立になった際に自動的に移行する「審判手続き」の仕組みや、その流れについてわかりやすく解説します。

遺産分割調停が不成立になるとどうなる?

Q 遺産分割調停が不成立になった場合、自分で改めて裁判所に審判の申し立てをし直さなければなりませんか?
A いいえ、ご自身で改めて申し立てを行う必要はありません。現在の家事事件手続法により、調停が不成立になると、原則として自動的に「審判手続き」に移行する仕組みになっています。

遺産分割調停は、あくまでも相続人同士の「話し合い」による解決を目指す場です。そのため、お互いの主張が平行線をたどり、これ以上の歩み寄りが期待できないと判断された場合には、調停は「不成立」として終了します。

以前の法制度では、調停が不成立になった後に遺産分割を実現させるためには、改めて「審判」を申し立てるという二度手間が発生していました。しかし、法改正により、当事者の負担軽減と迅速な紛争解決を図るため、調停不成立と同時に自動で審判手続きへ移行する運用が定着しています。

自動移行の仕組み(家事事件手続法第284条)

調停期日においてこれ以上の合意形成が無理であると判断されると、家庭裁判所の調停委員会は調停の終了(不成立)を告げます。

これと同時に、家事事件手続法第284条の規定に基づき、裁判所は自動的に遺産分割の「審判」を開始します。これを実務上、審判への移行または「移行決定」などと呼びます。

この制度があることで、以下のようなメリットが生じます。

  • 新たに審判の申し立て手数料(収入印紙など)を再度基本から納め直す必要が原則として生じない
  • 申し立て書類をイチから作り直す手間が省ける
  • 調停で蓄積された資料やこれまでの主張がそのまま審判に引き継がれる

調停から審判へ移行した後の手続きの流れ

調停が不成立となり審判へ移行すると、手続きの性質が「話し合い」から「裁判官による判断(裁定)」へとガラリと変わります。

1. 審判期日の指定または書面審理

審判に移行すると、裁判官がすべての事情を考慮した上で遺産の分け方を決定します。必ずしも対面での審判期日が開かれるとは限らず、当事者から提出された書面やこれまでの調停記録をもとに「書面審理」を中心として進められることも多いのが特徴です。

2. 当事者の主張と証拠の提出

審判では、裁判官に自分の主張を正しく理解してもらうことが重要になります。

  • これまでの調停で主張しきれなかった補足事項
  • 自身の主張を裏付けるための新たな客観的証拠
  • 故人(被相続人)の生前における特別受益や寄与分に関する主張

これらを「審判申し立て書」や「意見書」などの書面形式で提出します。

3. 審判の言い渡し(裁判官による決定)

当事者双方の主張や提出された証拠を十分に検討した上で、裁判官が「誰にどの財産をどのように取得させるか」という審判を下します。これが「審判書」として当事者に送付されます。

審判の結果に不満がある場合の対応

裁判官が下した審判の内容に不服がある場合でも、そのまま諦めなければならないわけではありません。法律によって不服申し立ての手段が用意されています。

  • 即時抗告(そくじこうこく)の活用 審判書が送達された日の翌日から2週間以内という極めて短い期間内に、上位の裁判所(高等裁判所)に対して「即時抗告」を行うことができます。
  • 確定の効果 この2週間の不服申立期間内に誰も即時抗告を行わなかった場合、審判の内容は確定し、確定判決と同一の効力を持つことになります。

なお、審判によって不動産の相続などが確定した場合には、近年の法改正に伴い定められている各種義務(2024年の相続登記義務化や、2026年4月にスタートする住所変更登記の義務化、さらに所有不動産記録証明制度など)に則り、速やかに名義変更や必要な手続きを行うことが極めて重要です。

まとめ

遺産分割調停が不成立になった場合でも、自動的に審判手続きへと移行するため、手続きが途中で頓挫してしまうわけではありません。

しかし、調停の「話し合い」の場から、裁判官が法と証拠に基づいて決定を下す「審判」の場へ移行するということは、より専門的で論理的な主張や証拠の提示が勝敗(結果)を分けることになります。

ご自身の正当な権利をしっかりと主張し、納得のいく遺産分割結果を導き出すためには、早い段階で相続問題に強い弁護士などの専門家に相談し、的確なサポートを受けながら審判手続きに臨むことを強くお勧めいたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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