遺産の分割について話し合いがまとまらず、家庭裁判所の調停手続を利用するケースは少なくありません。被相続人が賃貸マンションやアパートなどの収益物件を所有していた場合、相続開始から遺産分割が完了するまでの間に発生した家賃収入(不動産賃料収入)は、どのように扱われるのでしょうか。
この記事では、遺産分割調停における家賃収入の法的な位置づけと、調停内での具体的な清算方法について詳しく解説します。
遺産分割調停中の家賃収入は誰のものになるのか?
民法上、相続開始から遺産分割が終了するまでに不動産から生じた家賃などの「法定果実」は、遺産分割の対象財産には含まれないというのが最高裁判所の判例(定着した実務上の見解)です。
これらは相続人が各々の法定相続分に応じて当然に取得するものとされています。例えば、相続人が子2人(法定相続分各2分の1)であれば、発生した家賃も原則として2分の1ずつに分けて取得する権利があります。
遺産分割協議や調停で「まとめられる」理由
法律上は各相続人の個人財産となる家賃ですが、実務の遺産分割調停においては、個別に計算して徴収し合うのは非常に煩雑です。そのため、以下のような理由から、調停の中で一緒に清算することが多く行われます。
- 相続人間での公平性を図るため
- 個別に請求し合う手間やトラブルを防ぐため
- 不動産を取得する人が将来の賃料も一括して管理・受領する方が合理的であるため
調停における家賃収入の具体的な清算方法
遺産分割調停の中で家賃収入を精算する場合、いくつかの方法が取られます。それぞれの特徴を理解し、自身のケースに合った方法を検討することが大切です。
1. 不動産を取得する相続人が一括して精算する
もっとも一般的なのは、遺産分割によって当該収益不動産を単独で取得することになった相続人が、他の相続人に対して、相続開始から調停成立時までに受け取った家賃のうちそれぞれの法定相続分相当額を金銭で支払う(清算する)方法です。
この場合、以下の点に注意が必要です。
- 不動産の維持管理費用(固定資産税や修繕費など)もその期間に発生しているため、家賃収入から経費を差し引いた純利益(ネットの収益)ベースで計算する。
- 誰がどの期間の家賃を実際に受領しているかを明確にするため、預金通帳などの資料を調停委員に提出して正確な金額を算出する。
2. 調停調書に「清算条項」を明記する
遺産分割調停がまとまると、合意内容が「調停調書」という公文書に記載されます。この調停調書には、遺産の分け方だけでなく、家賃の清算に関する合意についても必ず明確な金額や支払い期限を盛り込むことが極めて重要です。
口頭での約束や私的なメモで済ませてしまうと、後から「支払われていない」「金額が違う」といったトラブルに発展した際、強制執行の手続きをとることが難しくなります。調停調書に記載されていれば、万が一期日までに支払いがなされない場合に強制執行(差押えなど)の申し立てが可能になります。
家賃収入の管理と法改正に伴う注意点
遺産分割協議や調停が長期化すると、その間の家賃収入の管理や税務申告など、見落としがちな実務上の問題が生じます。
- 確定申告の義務:相続開始後の家賃収入は相続人それぞれの所得となるため、法定相続分に応じて各相続人が確定申告を行う必要があります。
- 不動産の登記義務化:近年、不動産の相続登記が義務化され、さらに2026年4月からは住所変更登記の義務化も予定されています。収益不動産の相続登記を放置すると過料の対象となるリスクがあるため、調停成立後は速やかに司法書士等の専門家に依頼して登記手続きを行いましょう。
- 所有不動産記録証明制度の活用:被相続人が複数の収益不動産を有していた場合、2026年までに本格稼働する制度を活用することで、正確な不動産リストを効率的に取得し、漏れのない遺産分割協議を進めることが可能になります。
まとめ
遺産分割調停中の家賃収入は、法的には相続人の個別財産ですが、実務上は調停内で一括して清算するのがスムーズです。
誰がいくら受け取るべきか、維持管理費用の控除はどうするのかなど、複雑な計算や感情的対立が生じやすいポイントでもあります。納得のいく解決を図るためには、法律の専門家である弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けながら調停を進めることを強くおすすめします。
📜 相続トラブル・遺産分割のお悩みは夕陽ヶ丘法律事務所へ
戸籍一括収集から不動産名義変更(登記)・遺産分割協議までワンストップ対応。
親族間の対立や複雑な手続きでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
- 初回相談料: 0円(30分無料)
- 明確な料金体系: 事前に見積提示・着手金分割相談OK
- 名義変更・不動産登記: 担当弁護士が直接対応・税理士とも連携