平成30年・令和元年の相続法大改正とは?背景と全体像
相続に関するルールは、なんと約40年もの間、大きな見直しがされてきませんでした。しかし、日本が超高齢社会に突入したことや、家族の形態が多様化したことに伴い、現実に合わない部分が多く出てきました。
そこで、平成30年(2018年)から令和元年(2019年)にかけて、実に約40年ぶりとなる「相続法の大改正」が段階的に施行されました。この法改正は、残された配偶者の生活を守るための仕組みづくりや、遺産分割をめぐるトラブルの防止、遺言書の利用促進などを目的としています。
今回の改正内容を正しく理解することは、これからの相続トラブルを防ぐうえで非常に重要です。以下に、実務上特に重要な4つのポイントを分かりやすくおさらいします。
1. 残された配偶者の生活を守る「配偶者居住権」の新設
配偶者短期居住権と配偶者長期居住権
これまでの相続では、夫が亡くなった場合に自宅が夫名義であると、残された妻が自宅に住み続けたくても、他の相続人から自宅の明け渡しや売却を求められて住まいを追出されてしまうリスクがありました。また、自宅を相続すると他の財産(現金など)を十分に受け取れず、生活資金に困窮するという問題もありました。
この問題を解決するために新設されたのが、「配偶者居住権」です。
- 配偶者短期居住権:被相続人の配偶者が、被相続人の死亡時にその建物に無償で住んでいた場合、原則として最低6ヶ月間は自宅にそのまま住み続けられる権利です。
- 配偶者長期居住権:遺産分割や遺言によって、配偶者が終身または一定期間、その建物に無償で住み続けられる権利です。所有権よりも低い評価額で権利を取得できるため、現金などの他の財産も合わせて相続しやすくなります。
2. 自筆証書遺言のルール緩和と法務局での保管制度
財産目録のパソコン作成が可能に
従来、自筆証書遺言は、財産の目録も含めてその全文を自筆で書く必要があり、遺産の数が多い場合には作成が大きな負担となっていました。
改正により、自筆証書遺言の本文は手書きのままにする必要がありますが、添付する「財産目録」については、パソコンでの作成や通帳のコピー、不動産の登記事項証明書の添付が認められるようになりました。これにより、遺言書の作成ハードルが大幅に下がりました。
自筆証書遺言書保管制度の創設
さらに、せっかく書いた自筆証書遺言が「紛失する」「見つからない」「相続人に破棄・隠匿される」といったリスクを防ぐため、全国の法務局(遺言書保管所)で自筆証書遺言を保管してもらえる制度がスタートしました。法務局で保管される遺言書については、家庭裁判所での「検認」の手続きが不要になるという大きなメリットもあります。
3. 遺留分に関するルールの見直し:「遺留分金銭請求権」への一本化
遺留分侵害額の請求は金銭で行う
兄弟姉妹以外の相続人には、最低限遺産を取得できる権利である「遺留分」が認められています。これまでは、遺留分を侵害された相続人が請求を行うと、原則として「不動産や株式などの共有持ち分」が移転する仕組みになっていました。
しかし、このルールでは「不動産が細分化されて売却できなくなった」「遺産の共有関係をめぐって新たなトラブルに発展した」といった弊害が生じていました。
そこで改正により、遺留分侵害額の請求権は、一律で「金銭を請求する権利(遺留分金銭請求権)」に一本化されました。これにより、金銭以外の財産が共有状態になるのを防ぎ、相続トラブルの早期解決が期待できるようになっています。
4. 近年の法改正(2024年〜2026年)への影響と今後の注意点
相続登記の義務化や最新制度との連動
平成30年・令和元年の相続法大改正で整備された各種の権利や手続きは、近年のさらなる法改正の土台となっています。
例えば、令和6年(2024年)4月からは相続登記の申請が義務化され、令和8年(2026年)4月からは住所変更登記の義務化も控えています。さらに、不動産の所有者をスムーズに把握するための「所有不動産記録証明制度」なども導入されています。
これら一連の法改正は、いずれも「放置された不動産の解消」や「円滑な遺産分割」を目指したものです。平成30年・令和元年の改正における配偶者居住権の活用や遺言書の作成とあわせて、最新の法令に則った適切な相続手続きを進めることが、円満な相続の第一歩となります。相続や不動産の登記に関して不安がある場合は、専門家に早めに相談することをおすすめします。
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