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「市街化調整区域」や「保全森林」の山林を国庫帰属させるための申請書類

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

山林の相続手続きを進める中で、利用価値のない山林を手放したいと考える方が増えています。特に、市街化調整区域や保全森林に指定されている山林は、処分が難しく固定資産税や管理の負担だけが重くのしかかるケースが少なくありません。

そこで検討されるのが、2023年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度」です。この制度を利用すれば、一定の要件を満たすことで、相続した不要な土地を国に引き渡すことができます。しかし、市街化調整区域や保全森林の山林を申請するには、通常の土地とは異なるハードルが存在します。

この記事では、林道に接していない山林や保安林指定がある土地の国庫帰属申請における注意点や、10年管理負担金について詳しく解説します。

市街化調整区域や保全森林の山林は国庫帰属の対象になるか?

Q 市街化調整区域や保安林指定のある山林でも、国庫帰属の申請は可能ですか?
A 申請自体は可能ですが、法令により管理や処分が制限されている土地は「却下要件」や「不承認要件」に該当しやすいため注意が必要です。保安林などの一定の法令制限がある土地は、原則として国庫帰属の「却下対象」とされています。

相続土地国庫帰属制度では、すべての土地が無条件に引き取ってもらえるわけではありません。特に都市計画法上の市街化調整区域については、開発行為が厳しく制限されているものの、直ちに却下されるわけではありません。

しかし、森林法に基づく「保安林」や「保安施設地区」などに指定されている土地は、原則として申請が却下される土地に該当します。保安林は水源の涵養や土砂災害の防止など、公益的な目的のために国や県が厳格に管理すべき性質のものであるため、私人の判断で容易に国庫帰属させることが認められていないためです。

保安林指定がある土地の特例と解除の手続き

もし相続した山林が保全森林(保安林)に指定されている場合、そのままでは国庫帰属の申請が却下されてしまいます。

そのため、国庫帰属を希望するのであれば、事前に森林法に基づく保安林の指定解除が可能かどうかを都道府県の林務担当部署等に確認・相談する必要があります。ただし、公益上の理由から解除が認められないケースも多いため、専門的な知識を持った弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

林道に接していない山林(接道義務・管理のハードル)の申請上の注意

山林の国庫帰属審査において、大きな壁となるのが「土地の形状やアクセス状況」です。特に、林道や公道に接していない(いわゆる「囲繞地(いにょうち)」や「無道路地」と呼ばれる)山林は、管理上の大きな問題となります。

国が土地を引き取るためには、国がその土地を適切に管理・維持できることが大前提となります。そのため、以下のような状態の山林は、不承認要件に該当する可能性が高くなります。

  • 通常の管理や処分をするために、他の土地を通行しなければならない土地(他人の土地を通らないと入れない)
  • 崖崩れや土砂流出などの危険性があり、その除去費用や対策工事が必要な土地
  • 境界が明確に定まっていない土地(隣地との境界紛争がある場合など)

林道に接していない山林の場合、測量や将来の国によるパトロール・管理作業用の車両が入れないため、「管理に過大な費用や労力がかかる土地」とみなされ、不承認となるリスクが非常に高くなります。

申請書類の作成と「10年管理負担金」の仕組み

国庫帰属の審査を進めるためには、法務局(法務局長)に対して膨大な申請書類を提出する必要があります。山林の場合、通常の宅地等とは異なる専門的な資料が求められます。

主な必要書類の例

  • 土地の図面(境界確認書、地積測量図など)
  • 現況がわかる写真や資料
  • 登記事項証明書
  • 森林の状況を示す書類(森林簿の写しなど)

また、申請が承認された場合、申請者は土地を国に引き渡すだけでなく、「負担金」を納付しなければならない点に注意が必要です。

10年管理負担金とは

国庫帰属が認められた土地の管理には、国が10年間管理するために必要な費用を算出した「10年分の管理費用(負担金)」を一括して納付する義務があります。

  • 山林の場合の原則:原則として一律の金額ではなく、面積に応じた基本額に加え、現況に応じた算定が行われます。
  • 最低負担金額:宅地や畑、田、森林など地目に関わらず、原則として最低20万円の負担金が必要です。
  • 注意点:樹木の伐採や土砂崩れ対策が必要な山林の場合、管理費用がさらに高額になるおそれがあります。

まとめ:複雑な山林の国庫帰属は専門家への相談を

市街化調整区域や保安林指定のある山林、さらに林道に接していない山林の国庫帰属申請は、法令の調査や境界の確定、行政との折衝など、一般の方が行うには非常にハードルが高い手続きです。

また、2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており、使わない山林であっても放置することはできません。誤った認識で申請を行うと、時間と手数料(審査手数料は1筆ごとに14,000円)が無駄になってしまうこともあります。

山林の国庫帰属や相続手続きについてお悩みの方は、ぜひ一度、不動産登記や行政手続きに強い法律事務所や専門家にご相談ください。状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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