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被相続人が「生前贈与」で取得した土地は相続土地国庫帰属の対象になるか

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

相続が発生した際、使い道のない農地や山林、管理が難しい実家の土地などを手放したいと考える方は少なくありません。そこで検討されるのが、一定の要件を満たすことで国に土地を引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」です。

しかし、この制度を利用できるのは、原則として相続や遺贈によって土地を取得した人に限られます。では、被相続人が生前に他者から「生前贈与」や「売買」によって取得した土地は、この制度の対象になるのでしょうか。結論から申し上げますと、こうした土地は対象外となる厳格なルールが存在します。

本記事では、生前贈与された土地と相続土地国庫帰属制度の関係について、法律の仕組みや例外規定、注意すべき最新の法改正情報も含めてわかりやすく解説します。

Q 被相続人が生前贈与で取得した土地は、相続土地国庫帰属の対象になりますか?
A 原則として対象外となります。相続土地国庫帰属制度を利用できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した人に限定されているため、被相続人が生前贈与や売買で取得していた土地は、そのままでは申請の要件を満たしません。

相続土地国庫帰属制度の基本ルール:対象となるのは「相続・遺贈」のみ

相続土地国庫帰属制度は、所有者不明土地の発生を予防するために創設された国の制度です。しかし、どのような土地でも無制限に引き取ってもらえるわけではありません。

法律上の大きな前提として、この制度の申請主体となれるのは、「相続または遺贈(遺言による財産の譲渡)」によってその土地を取得した相続人に限られています。

生前贈与された土地が対象外である理由

被相続人が生前に第三者(あるいは親族間)から「生前贈与」や「売買」によって取得していた土地は、亡くなった時点では被相続人の所有財産として相続財さらに含まれます。しかし、法律の定義上、その土地を最初に取得した原因は「相続」ではなく「生前贈与(契約)」です。

国が管理コストを負担してまで不要な土地を引き取るこの制度では、自らの意思で売買や贈与という契約によってリスクのある土地を取得したケースまで救済の対象には含めていません。そのため、「被相続人の代で生前贈与により取得した土地」は、形式的な要件の段階で申請資格が失われてしまうのです。

遺贈であれば対象になるのか

ここで注意が必要なのが「遺贈」との違いです。遺言書によって特定の相続人に土地を譲る「遺贈」であれば、制度の対象に含まれます。ただし、これはあくまで「亡くなったことに伴う財産の移転」であるためであり、被相続人が生前に受けた「生前贈与」とは法的な位置づけが異なります。

例外的に対象となるケースとは

原則として生前贈与の土地は対象外ですが、実務上や法解釈において、以下のようなケースでは判断が分かれる、あるいは別の解決策が必要となります。

共有持分の一部が相続である場合

例えば、土地全体のうち「5分の4」の持分を被相続人が生前贈与で取得しており、残りの「5分の1」の持分を相続時に相続人が相続や遺贈で取得したというような、複雑な共有状態のケースです。 この場合、国庫帰属の申請ができるのは、あくまで相続によって取得した持分部分のみ、あるいは土地全体としての適格性が厳しく審査されることになります。実務上は極めて複雑な手続きを伴うため、専門家への相談が不可欠です。

相続人が生前贈与を受けていた場合

被相続人ではなく、相続人自身が被相続人から生前贈与を受けていた土地についても、当然ながら相続土地国庫帰属制度の対象外となります。親が元気なうちに子へ名義変更(生前贈与)を済ませていた土地は、将来的に子どもが国に返そうとしても、この制度は利用できないため注意が必要です。

制度利用ができない場合の選択肢と最新の法改正

生前贈与された土地が相続土地国庫帰属制度の対象外である場合、相続人はどのように対応すべきでしょうか。また、近年相次ぐ不動産関連の法改正についても留意しておく必要があります。

放置するリスクと「相続登記の義務化」

土地の引き取り手がなく、そのまま放置し続けることは推奨されません。さらに、2024年4月1日からは「相続登記の義務化」がスタートしており、相続によって土地を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わないと、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。 さらに、2026年4月からは住所変更登記の義務化も控え、国は不動産の所有者情報を徹底的に把握しようとしています。生前贈与された土地であっても、相続が発生した以上は確実に名義の整理を行わなければなりません。

国庫帰属が使えない場合の対策

生前贈与された土地であって国庫帰属制度が使えない場合、以下の方法を検討する必要があります。

  • 相続放棄の検討(※ただし、他のプラスの財産もすべて手放すことになります)
  • 相続人同士での話し合いによる遺産分割の工夫
  • 近隣住民や民間事業者への売買・無償譲渡(民間の不用地引き取りサービス等)
  • 相続土地そのものの有効活用や管理委託

生前贈与と相続では、適用される法律や利用できる救済措置が大きく異なります。「親から生前贈与された土地があるが、管理しきれないので国に返したい」と考えている方は、制度の対象外であるという大原則を踏まえ、早い段階で弁護士や司法書士などの専門家に相談し、最適な相続対策を講じることをお勧めします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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