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遺留分の計算方法は?
遺留分率と対象となる財産の範囲、具体的な計算モデル

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

遺留分とは何か?基礎知識と権利を守るためのポイント

Q 遺留分の計算方法はどのように行いますか?相続人の構成ごとの遺留分率と対象財産の範囲を教えてください
A 【遺留分の計算方法と対象財産の範囲】遺留分の計算は、全体の遺留分率(原則2分の1、直系尊属のみの場合は3分の1)に各相続人の法定相続分を掛け合わせて算出します。対象となる財産は、相続開始時の積極財産に生前贈与(原則として相続開始前1年以内のものや、当事者双方が損害を加えることを知って行った贈与など)を加え、債務を控除した額がベースとなります。
【注意点と弁護士活用のメリット】遺留分を侵害された場合に行う「遺留分侵害額請求」には、相続開始と侵害を知った日から1年以内(知らなかった場合は相続開始から10年)という極めて短い消滅時効があります。正確な財産評価や複雑な生前贈与の持ち戻し計算が必要となるため、時効を迎える前に相続問題に強い弁護士へ早期に相談することをおすすめします。

遺言書によって「すべて長男に相続させる」といった偏った内容が残されていても、残された家族の生活保障や公平性を図るために民法で定められているのが遺留分(いりゅうぶん)です。

遺留分が認められているのは、配偶者、子(およびその代襲者)、直系尊属(父母や祖父母など)であり、兄弟姉妹には遺留分は認められません。遺留分を侵害された相続人は、財産を多く受け取った人に対して金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」を行えます。

遺留分侵害額請求の注意点と時効

遺留分侵害額請求権には消滅時効があります。相続の開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った日から1年間行使しないと、時効によって権利が消滅します。また、知らなかったとしても、相続開始の時から10年が経過すると自動的に消滅するため、早めの対応が不可欠です。

相続人の構成ごとの「遺留分率」一覧

遺留分の割合(遺留分率)は、誰が相続人になるかによって法律で細かく定められています。全体の遺留分率をベースに、それぞれの法定相続分を掛け合わせて計算します。

直系尊属(父母や祖父母)のみが相続人の場合は全体の3分の1、それ以外のケースでは原則として全体の2分の1が遺留分として確保されます。

相続人の組み合わせ別の個別遺留分率

具体的な相続人の構成ごとの個別の遺留分率は以下の通りです。

  • 配偶者のみの場合:2分の1
  • 配偶者と子(またはその代襲者)の場合:配偶者が4分の1、子が合わせて4分の1(子が複数の場合は均等割)
  • 配偶者と直系尊属(父母など)の場合:配偶者が3分の8、直系尊属が合わせて6分の1
  • 子のみの場合:合わせて2分の1(複数の場合は均等割)
  • 直系尊属のみの場合:合わせて3分の1(複数の場合は均等割)
  • 兄弟姉妹のみの場合:遺留分なし(0)

このように、配偶者がいるかどうか、また子がいるか親がいるかによって、請求できる割合が大きく変動します。

遺留分の計算の基礎となる「対象財産の範囲」

正確な遺留分を算出するためには、手元にある現在の遺産だけではなく、過去に行われた生前贈与なども含めて計算のベースとなる金額を確定させる必要があります。これを遺留分算定の基礎財産と呼びます。

計算の基礎となる財産の範囲には、主に以下のものが含まれます。

  • 相続開始時に被相続人が所有していたすべての積極財産(預貯金、不動産、株式など)
  • 被相続人が生前に行った一定の贈与の価額
  • 相続人全員で負担すべきマイナスの財産(借入金や未払金などの負債)

相続開始時の財産からマイナスの財産を差し引き、さらに生前贈与された財産の価額を足し戻すことで計算のベースを作ります。近年注目されている2024年の相続登記義務化や不動産関連の法改正とも絡み、不動産の正確な時価評価がトラブルの火種になりやすいため注意が必要です。

計算対象となる生前贈与のルール

生前贈与がすべて遺留分の計算に含まれるわけではありません。原則として対象になるのは以下の贈与です。

  • 相続人に対する贈与:相続開始前の10年間に行われたもの
  • 第三者(相続人以外)に対する贈与:相続開始前の1年間に行われたもの
  • 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与:期間の制限なく対象

なお、2019年7月1日以後の相続に関する民法改正により、生前贈与の持ち戻し計算の期間や評価方法にも変更が入っているため、古い情報には注意してください。

具体的な計算モデルでシミュレーション

それでは、実際に具体的な事例を使って遺留分の計算方法をシミュレーションしてみましょう。

【事例】

被相続人(父)が亡くなり、相続人は「母」と「子2人(長男・次男)」の合計3人。 遺言書によって「すべての財産(総額6,000万円)を長男に相続させる」と指定されていた。次男が受け取れる遺留分の金額を計算します。

ステップ1:遺留分算定の基礎財産の確定

今回の事例では生前贈与や負債がないものとし、相続開始時の財産6,000万円をそのまま基礎財産とします。

ステップ2:総体的遺留分率の乗算

配偶者と子が相続人の場合、全体の遺留分率は2分の1です。 したがって、全相続人の遺留分の合計額は以下のようになります。 6,000万円 × 2分の1 = 3,000万円

ステップ3:個別遺留分(次男の分)の算出

遺留分の総額3,000万円を、各相続人の法定相続分に応じて割り振ります。 今回の法定相続分は、母が2分の1、長男が4分の1、次男が4分の1です。 次男の個別の遺留分率は、全体の遺留分(2分の1)× 次男の法定相続分(4分の1)= 8分の1 となります。

金額に換算すると以下の通りです。 6,000万円 × 8分の1 = 750万円

この事例では、次男は長男に対して750万円の遺留分侵害額を請求することができます。

まとめ:正確な計算とスムーズな解決のために

遺留分の計算は、相続人の構成、生前贈与の有無、不動産の評価額など、多くの要素が複雑に絡み合うため、一般の方だけで正確に算出することは非常に困難です。

特に不動産が含まれる場合や、複雑な生前贈与がある場合は、計算ミスによって後のトラブルに発展するリスクが高まります。遺留分に関する疑問や、実際に侵害額請求を検討される際は、相続問題に強い弁護士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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