亡くなった方から遺産を多く受け取った相続人に対し、他の相続人が「遺留分侵害額請求」を行ってきた際、「まとまった現金が手元になく、支払いができない」と悩む方は少なくありません。遺産の大半が不動産であり、すぐに現金化できないケースも多々あります。
このような場合でも、泣き寝入りしたり、無理に借金をして支払ったりする必要はありません。民法には、現金がない受遺者や受贈者を保護するための救済制度が用意されています。
本記事では、遺留分の支払いに現金がない場合の具体的な対処法として、裁判所への「相当の期限の許与」の申し立てや、分割払いのための調停交渉について詳しく解説します。
遺留分の支払いに現金がない場合の解決策とは?
遺留分侵害額請求権を行使された場合、原則として金銭による速やかな支払いが求められます。しかし、不動産しか遺産がない場合や、現金を用意するために時間を要する場合は、以下のような法的な手段や交渉を検討します。
1. 裁判所による「相当の期限の許与」の活用
民法第1047条第5項では、金銭債務となった遺留分侵害額の支払いについて、受遺者(または受贈者)の請求により、裁判所が「相当の期限の許与」を認められることが規定されています。
- これにより、裁判所が認めれば、支払期限を数ヶ月〜1年程度猶予してもらうことが可能です。
- 「すぐには現金を用意できないが、半年後に所有している土地を売却すれば支払える」といった明確な見込みがある場合に有効な手段となります。
2. 分割払いを実現するための「遺産分割調停」や「民事調停」
裁判所に対する「相当の期限の許与」は、あくまで「期限の猶予(一括払いの前提)」であり、原則として何年も分割で支払うことは認められにくい傾向にあります。
そこで実務上多く用いられるのが、裁判所の調停手続を利用した分割払いの交渉です。
- 当事者間の話し合いだけで分割払いに合意してもらうのが難しい場合でも、調停委員を介して客観的な財産状況を示し、月々の分割払いで合意できれば、調停調書にその旨が記載されます。
- 調停調書には確定判決と同等の効力(債務名義)があるため、お互いに安心して分割払いを実行・受領することができます。
現金がないときに絶対やってはいけないNG行動
遺留分の請求を受けて焦ってしまい、以下のような不適切な対応を取ると、かえって事態を悪化させる原因になります。
- 請求を無視し続けること: 連絡を絶つと、相手方はすぐに裁判所に訴訟を提起してきます。財産の差し押さえ(強制執行)のリスクが高まるため、無視は絶対に避けてください。
- 相場を無視した安い金額で強引に示談すること: 正確な遺留分額を計算しないまま曖昧な金額で合意してしまうと、後からトラブルになることがあります。専門家の意見を聞きながら適正額を算出し、その上で支払方法を交渉しましょう。
不動産が主な遺産である場合の注意点
遺産が実家などの不動産である場合、現金がないからといって安易に低価格で売却してしまうのは得策ではありません。
現在、相続登記の義務化や、2026年4月にスタートする住所変更登記の義務化など、不動産を巡る法制度は厳格化しています。不動産の適切な価値を見極め、売却による現金化か、あるいは他の財産(預貯金など)とのバランスを考慮した上で遺留分に対応する必要があります。
また、相続した不動産の権利関係を明確にするためには、所有不動産記録証明制度なども視野に入れ、正確な財産把握を行うことが不可欠です。
まとめ:現金がない場合は弁護士にご相談を
遺留分の支払いに「現金がない」という問題は、法律上の制度や裁判所の手続きを活用することで解決の糸口が見つかります。裁判所に対する「相当の期限の許与」の申し立てや、相手方との分割払い交渉は、法律の専門的な知識と緻密な段取りが必要です。
「まとまったお金がなくて支払えない」「相手と直接話し合うのが困難である」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、相続問題に強い弁護士へ早めにご相談ください。あなたの状況に合わせた最適な解決プランをご提案いたします。
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