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親から「勘当(絶縁)」された子への遺産分割:親子関係の法的な不滅性

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

親から「お前とはもう縁を切る」「勘当だ」「一文無しにする」などと言われ、長年連絡を取っていなかったり、実家を出て音信不通になっていたりするケースは少なくありません。

親が亡くなったとき、このような「勘当された子供」であっても遺産を受け取る権利はあるのでしょうか。結論からお伝えすると、法律上の正式な手続きを経ていない限り、親子の縁を切ることはできず、相続権は消滅しません

本記事では、親から勘当されたと告げられた子供が持つ相続権の法的根拠と、遺産分割を進める上での注意点を分かりやすく解説します。

勘当された子供でも遺産の相続権はあるのか?

Q 親から口頭で「勘当だ」と言われていた場合、遺産を相続する権利はなくなりますか?
A 権利は失われません。日本の法律では口頭や手紙、遺言書による一方的な勘当には法的効力がなく、家庭裁判所で「推定相続人の廃除」の手続きが完了していない限り、実の子は法定相続人としての権利をそのまま持ち続けます。

日本法の下では、血縁関係や法律上の親子関係を当事者間の合意や親の一方的な意思表示だけで解消することはできません。そのため、実家を追い出されたり戸籍上の籍を残したまま「勘当」と言われたりしただけでは、相続権は一切失われないのです。

口頭や手紙による勘当の法的効力

テレビドラマなどで「勘当だ!お前の顔など見たくない」と言い渡すシーンが見られますが、現実の法律において、口頭や手紙、メールなどによる勘当には一切の法的効力がありません

親がどれほど強く怒っていたとしても、法的な親子関係が継続している以上、親が亡くなった際には法定相続人として遺産分割協議に参加する権利を有しています。

遺言書に「財産を一切渡さない」と書かれていた場合

親が遺言書に「長男には過去に勘当したので、一切の財産を相続させない」と遺すケースがあります。この場合でも、子供の相続権そのものが消えるわけではありません。

ただし、遺言書の内容は強力な効力を持つため、指定された相続人以外への財産分配が優先されてしまいます。しかし、このようなケースでも配偶者や子(兄弟姉妹以外の相続人)には遺留分(いりゅうぶん)という最低限の取り分を請求する権利が残されています。

親子関係を断ち切り、相続権を奪う唯一の方法「相続廃除」

親がどうしても特定の子供に遺産を渡したくない場合、法的に認められた唯一の手段が「推定相続人の廃除(すいていそうぞくにんのはいじょ)」です。

これは、被相続人(親)が生存している間に、家庭裁判所へ申し立てを行い、家庭裁判所が「廃除事由」があると認めた場合にのみ成立します。

相続廃除が認められる厳格な要件

相続廃除は、親の個人的な好き嫌いや一時的な感情だけで認められるものではありません。家庭裁判所が認めるには、以下のような重大な理由(廃除事由)が必要です。

  • 被相続人に対して虐待をしたとき
  • 被相続人に対して重大な侮辱を加えたとき
  • 推定相続人にその他の著しい非行があったとき

単に「連絡を取っていなかった」「親の意に沿わない結婚をした」といった理由では、相続廃除はまず認められません。したがって、口頭での勘当がいかに頻繁に行われていたとしても、法的な廃除手続きがなされていない限り、子供の相続権は確固として守られています。

勘当された子供が遺産分割に直面したときの注意点

親が亡くなり、勘当されていた子供が相続人として遺産分割に関わることになった場合、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。近年の法改正に伴う実務的な変更点も含めて確認しておきましょう。

他の相続人との遺産分割協議が必要

遺産分割は、すべての相続人が参加して話し合うことが法律で義務付けられています。長年音信不通であったり、勘当を理由に排除されかけたりしていたとしても、その子供を無視して行われた遺産分割協議は無効となります。

そのため、他の相続人(他の兄弟や後妻など)から連絡が来るか、あるいは自身が戸籍調査等を通じて親の死亡を知った場合、遺産分割協議への参加を求められます。

相続放棄という選択肢

「親とは縁を切ったつもりだから、一切関わりたくない」「プラスの財産よりも借金などのマイナス財産のほうが圧倒的に多い」という場合、相続人は相続放棄を選択することができます。

相続放棄をすれば、最初から相続人でなかったことになり、遺産分割の話し合いから完全に抜けることができます。ただし、相続放棄をするには、自分が相続人であることを知った日から原則として3か月以内に、家庭裁判所へ申述を行わなければならないため注意が必要です。

2024年相続登記義務化への対応

近年の法改正により、相続によって不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)を行うことが法律上の義務となりました。

勘当されていた場合でも、実家の土地や建物といった不動産の共有持分を相続する可能性があります。放置すると過料(罰金)の対象になるリスクがあるため、速やかに不動産の調査と権利関係の整理を行うことが求められます。

まとめ

親から「勘当」と言われた過去がある方にとって、親の死後に相続の手続きを進めることは心理的にも大きな負担となるかもしれません。しかし、法的な手続き(相続廃除)がなされていない限り、あなたには正当な相続権があります

一方的な言葉に惑わされることなく、ご自身の権利を守りつつ冷静に遺産分割に向き合うことが大切です。複雑な人間関係や他の相続人との交渉に不安がある場合は、相続問題に強い弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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