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被相続人に「内縁の妻(事実婚)」がいる場合:内縁配偶者への特別分与

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

被相続人に内縁の妻がいる場合の相続問題

Q 内縁の妻(事実婚)には法律上の相続権がありますか?
A 法律婚と異なり、内縁の妻(事実婚の配偶者)には民法上の法定相続権がありません。そのため、何もしなければ遺産を1円も受け取ることができなくなってしまいます。

被相続人(亡くなった方)に戸籍上の婚姻関係はないものの、長年にわたり生活を共にしてきた内縁の妻(事実婚の配偶者)がいる場合、残された財産の扱いは法律上の夫婦とは大きく異なります。

現在の日本の法律では、内縁関係にある者に相続権は認められていません。そのため、突然の別れが訪れたとき、内縁の妻は自宅や生活資金を失うリスクに直面します。しかし、法律上の救済措置や事前の対策を講じることで、内縁の配偶者に財産を引き継がせることは可能です。

本記事では、内縁の妻が財産を受け取るための具体的な方法である生前遺言による遺贈と、特別縁故者としての財産分与の申立てについて分かりやすく解説します。

法律上の相続権がない理由と直面するリスク

なぜ内縁の妻には相続権がないのでしょうか。それは、民法上の「配偶者」とは、婚姻届を提出した法律上の夫婦に限られると定められているためです。

内縁の妻には相続権がないため、以下のような深刻なリスクが発生します。

  • 故人が遺言書を残していなかった場合、血縁関係のある相続人(子供、親、兄弟姉妹など)に全財産が渡る。
  • 相続人から「自宅からすぐに出て行ってほしい」と立ち退きを要求される可能性がある。
  • 故人の預貯金が凍結され、生活費の確保が困難になる。

こうした事態を防ぐためには、生前からの確実な法的対策が不可欠となります。

自宅に住み続けたい場合のリスクと対策

長年暮らした自宅が故人の名義であった場合、相続権のない内縁の妻は、相続人から所有権を主張されると居住権を失ってしまいます。2020年に施行された配偶者居住権についても、対象となるのは法律婚の配偶者に限られており、内縁の妻は適用外です。そのため、より一層の自衛策が必要となります。

生前遺言を活用した自宅の遺贈・財産承継

内縁の妻に確実に財産を残すための最も確実で有効な手段が、生前遺言書の作成です。

遺言書によって、内縁の妻に対して財産を「相続させる」ことはできませんが、「遺贈(いぞう)」という形で特定の財産を譲ることができます。

遺言書による生前対策のポイント

  • 「遺贈する」旨を明確に記載する:「内縁の妻〇〇に対し、以下の不動産(または預貯金)を遺贈する」と具体的に特定して記載します。
  • 遺留分への配慮:故人に子供や親などの法定相続人がいる場合、その人たちには遺留分(最低限の相続財産を請求できる権利)が認められています。内縁の妻への遺贈額があまりにも高額であると、後々相続人との間で遺留分侵害額請求のトラブルに発展するおそれがあるため、バランスを考慮した遺言書作成が必要です。
  • 公正証書遺言の利用:自筆証書遺言は形式不備や紛失、偽造のリスクがあるため、公証役場で作成する公正証書遺言を選ぶことを強くおすすめします。専門家のサポートを受けながら確実な文面を作成しましょう。

相続人がいない場合の「特別縁故者」としての財産分与

では、遺言書が残されておらず、さらに故人に法律上の相続人が一人もいない(相続人不在)場合はどうなるのでしょうか。

このようなケースでは、内縁の妻は「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」として、家庭裁判所に申し立てを行うことで、遺産の一部または全部の分与を受けられる可能性があります。

特別縁故者としての認められる要件と手続き

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者を指します。長年事実婚関係にあった内縁の妻は、この「生計を同じくしていた者」や「特別の縁故があった者」に該当し得ます。

手続きの流れは以下の通りです。

  • 相続人捜査の公告(家庭裁判所による相続人不存在の確定)
  • 相続人不在が確定した後、一定の期間内(原則として公告期間満了後3か月以内)に、家庭裁判所へ特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行う。
  • 家庭裁判所が実態を調査し、生前の貢献度や関係性の深さを考慮して財産分与の額を決定する。

この手続きは、相続人が全くいない場合に限られます。したがって、兄弟姉妹などの法定相続人が一人でも存在する場合は利用できないため、やはり生前遺言による備えが重要となります。

2024年以降の法改正と不動産登記の重要性

近年の法改正により、不動産の相続や権利関係に関するルールが大きく変更されています。

2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており、遺言や遺産分割によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。

また、2026年4月からは住所変更登記の義務化もスタートします。遺言によって自宅の遺贈を受けた内縁の妻が不動産の名義を自身のものに変更する(移転登記)際も、正確かつ速やかな手続きが求められます。

内縁関係という法的な枠組みの外にある関係性だからこそ、法律の要件や最新の法改正に対応した厳密な手続きが必要です。トラブルを未然に防ぎ、大切な生活基盤を守るためにも、相続問題に精通した弁護士や司法書士などの専門家へ早めにご相談されることを強く推奨します。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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