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相続人の中に「失踪宣告(7年以上行方不明)」を受けた者がいる時

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

家族が亡くなり遺産の相続手続きを進めようとした際、長年行方不明になっている親族がいて困った経験はないでしょうか。連絡が取れないままでは遺産分割協議を進めることができず、遺産分割は事実上のストップとなってしまいます。

このような場合に法的解決策となるのが、家庭裁判所に申し立てる「失踪宣告」です。行方不明者を法律上死亡したものとみなすことで、残された相続人だけで遺産分割協議を進めることが可能になります。本記事では、普通失踪宣告の仕組みと手続きの流れについてわかりやすく解説します。

失踪宣告とは?行方不明者がいる場合の遺産分割

Q 相続人の中に7年以上行方不明の人がいる場合、どのように遺産分割を進めればよいですか?
A 家庭裁判所に「失踪宣告」の申立てを行い、認められるとその人が死亡したものとみなされます。これにより、その人を除外するか、またはその人の代襲相続人を交えて残りの相続人で遺産分割協議を進めることができます。

遺産分割協議は、原則として相続人全員が参加しなければ無効となります。そのため、行方不明者が1人でもいると、預金の解約や不動産の名義変更(相続登記)の手続きが一切進められません。

音信不通の親族がいる場合、そのまま放置していると2024年4月から施行された相続登記の義務化(正当な理由なく放置すると過料の対象となるペナルティ)などのリスクが生じます。このような膠着状態を解消するために利用されるのが、法律上の死亡擬制の効果を持つ失踪宣告です。

「普通失踪」の要件とは

失踪宣告には、事故や災害に巻き込まれた場合の「危急失踪(審判から1年)」と、通常の行方不明を対象とする「普通失踪」があります。

相続手続きで問題になるケースの多くは、この普通失踪に該当します。普通失踪が認められるための要件は以下の通りです。

  • 生死が分からない状態(行方不明)が7年間継続していること
  • 最後の目撃情報や連絡が途絶えた時点から、7年の期間が経過していること

この期間を満たしている場合、家庭裁判所へ申立てを行うことで、法律上の死亡が認められることになります。

家庭裁判所への失踪宣告の申立て手続き

失踪宣告を利用するためには、管轄の家庭裁判所へ正式な申し立てを行う必要があります。ここでは、具体的な手続きの流れと必要書類について解説します。

申立てができる人(利害関係人)

誰でも自由に申し立てができるわけではありません。失踪宣告を申し立てることができるのは、失踪者の「利害関係人」に限られます。

相続手続きの文脈における利害関係人とは、主に以下のような方を指します。

  • 亡くなった被相続人の他の相続人
  • 失踪者の配偶者や子などの親族
  • 受遺者(遺言によって財産をもらう指定を受けている人)など

必要な書類と費用の目安

申立てにあたっては、様々な証明書類を集める必要があります。一般的に必要となる書類は以下の通りです。

  • 家事審判申立書
  • 行方不明者の戸籍謄本・戸籍附票
  • 申立人の利害関係を証明する資料(被相続人の戸籍謄本など)
  • 行方不明を裏付ける証拠資料(警察の行方不明者届の受理証明書、手紙やメールの履歴など)

費用としては、裁判所へ納める収入印紙代、官報公告料、そして連絡用の郵便切手代などがかかり、数万円程度を見込んでおく必要があります。

失踪宣告が認められた後の相続手続きの進め方

家庭裁判所による審判が確定すると、行方不明者は民法上「死亡したもの」として扱われます。この法的効果が発生した後の遺産分割の進め方には注意が必要です。

死亡とみなされるタイミングと相続関係

普通失踪の宣告を受けた場合、失踪期間である「7年間が満了した時」に死亡したものとみなされます。

ここで注意すべきなのは、「被相続人(最初に亡くなった人)よりも前に亡くなった」とみなされるのか、「後に亡くなった」とみなされるのかによって、相続の権利関係が大きく変わる点です。

  • 被相続人より先に失踪者が死亡した場合: 失踪者に子ども(代襲相続人)がいる場合、その子どもが代わりに相続人となります。子どもがいない場合は、他の相続人で分割します。
  • 被相続人より後に失踪者が死亡した場合: 失踪者自身も一度財産を相続したことになるため、失踪者の財産とあわせて、失踪者の相続人(配偶者や子どもなど)を交えて改めて遺産分割協議を行う必要があります。

最新の法改正と不動産相続時の注意点

近年、相続をめぐる法制度は大きな変化を迎えています。2024年4月からは相続登記の義務化がスタートし、不動産を取得した相続人はその事実を知った日から3年以内に登記申請を行わなければならなくなりました。

さらに、2026年4月に向けて住所変更登記の義務化や、全国の不動産情報を一元管理する所有不動産記録証明制度の導入など、権利関係を明確化するための法整備が進んでいます。失踪宣告を伴うような複雑な相続であっても、法定期限内に適切に手続きを行わなければ、思わぬ不利益を被るおそれがあります。

失踪宣告の申し立てから審判確定までには、官報公告の期間なども含めて数ヶ月以上の時間がかかることが一般的です。行方不明の相続人がいて遺産分割が進まずにお悩みの方は、複雑な法的判断や戸籍調査を伴うため、できるだけ早い段階で相続問題に強い弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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