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相続人全員が「相続放棄」した場合の「相続財産清算人」選任と財産処分

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

代々受け継いできた実家や、故人が残した預貯金。もし、相続人全員が「相続放棄」をした場合、その遺産は一体どうなるのでしょうか。誰も相続しないからといって、そのまま放置することはできません。誰もいなくなった遺産の管理や処分には、法的な手続きが必要となります。

この記事では、全員が相続放棄をした後に必要となる「相続財産清算人」の選任申し立てと、その具体的な流れや予納金について、法律の専門家の視点から分かりやすく解説します。

相続人全員が相続放棄をすると遺産はどうなる?

Q 相続人全員が相続放棄をしたら、誰も住まなくなった家や借金はどうなりますか?
A 相続人が誰もいなくなった遺産は「相続財産法人」という独立した財産体となります。放置すると危険なため、家庭裁判所によって選任された「相続財産清算人」が、借金の返済や財産の売却・国庫への帰属といった清算手続きを行います。

故人に借金がある場合や、遠方の不動産を誰も引き継ぎたくない場合など、相続人全員が相続放棄を選択するケースが増えています。しかし、相続放棄をしても、次の管理者が決まるまでの間は「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」遺産を管理する義務が法律上残ります(民法940条)。

特に空き家となった実家の管理不足による倒壊や、近隣への迷惑問題、税金の滞納などは深刻なトラブルに発展しがちです。そのため、法的に遺産を清算する人物として登場するのが「相続財産清算人」です。

相続財産清算人とは何か

相続財産清算人とは、家庭裁判所によって選任される専門家(通常は弁護士や司法書士などの法律職)のことです。

主な役割は以下の通りです。 ・故人の財産の調査と目録の作成 ・債権者や受遺者に対する債権申出の公告 ・借金や税金の支払い(換価処分) ・残余財産の国庫帰属手続き

相続人が誰もいなくなった財産を適正に管理・処分し、利害関係人の権利を守るために非常に重要な役割を担っています。

相続財産清算人の選任申し立て手続き

相続財産清算人を選任してもらうためには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

誰が申し立てできるのか

この手続きは、誰でも勝手に行えるわけではありません。申し立てができるのは以下の利害関係人です。 ・利害関係人(特定の相続放棄をした者、受遺者、債権者、特定遺贈を受けた者など) ・検察官

なお、実務上は、管理義務を免れたい元相続人や、お金を回収したい債権者が申し立てを行うケースが大部分を占めます。

申し立てに必要な書類と費用

家庭裁判所へ申し立てる際には、主に以下の書類等が必要となります。 ・相続財産清算人選任の申し立て書 ・故人の出生から死亡までの戸籍謄本類 ・相続人全員の戸籍謄本および住民票(除票) ・財産に関する資料(不動産の登記簿謄本、預貯金通帳のコピーなど) ・収入印紙および連絡用の郵便切手

また、最も注意すべきなのが「予納金」の問題です。

高額になることもある?「予納金」の仕組み

相続財産清算人を選任する際、家庭裁判所から「予納金」の納付を求められるケースがほとんどです。

予納金とは何か

予納金とは、相続財産清算人の報酬や手続きにかかる費用をあらかじめ裁判所に予納するものです。相続財産の中に十分な現金があれば、そこから清算人の報酬が支払われますが、あるのは価値のない不動産ばかりで現金がない場合、清算人は無報酬で動くことになってしまいます。

これを防ぐため、裁判所は申し立て人に対し、数十万円から場合によっては100万円以上の予納金を納めるよう命じます。

予納金が払えない場合の注意点

予納金を用意できない場合、相続財産清算人の選任申し立てが却下されてしまうことがあります。

「お金がないから清算人を置けない」というジレンマに陥ることも少なくありません。そのため、実家や土地の処分目的で相続放棄を検討している場合は、相続放棄をする前に、財産の価値や清算コストについてのシミュレーションを専門家と行うことが強く推奨されます。

2024年以降の法改正と不動産の行方

近年の法改正により、不動産の管理や登記に関するルールは厳格化しています。

相続登記の義務化(2024年4月施行)住所変更登記の義務化(2026年4月までに施行予定)

これらは、所有者不明の土地や空き家問題に対処するためのものです。相続放棄によって一時的に管理義務逃れができたとしても、適切な清算手続きを行わずに放置し続けることは、行政指導や過料の対象となるリスクを高めます。

さらに、最終的に誰も相続人がおらず、相続財産清算人によっても清算しきれなかった財産は、最終的に「国庫(国)」に帰属することになります。

まとめ:トラブルを防ぐために弁護士などの専門家に相談を

相続人全員が相続放棄をした場合の財産処分は、手続きが複雑であり、予納金といった金銭的負担も発生します。「放棄をすればすべて終わり」ではなく、その後の法的責任や清算手続きの流れを正しく理解しておくことが不可欠です。

自己判断で放置してしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。実家の処分や相続放棄、相続財産清算人の選任でお困りの際は、ぜひ一度、相続問題に強い弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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