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築古アパート・貸ビルの「既存不適格建築物・違法建築」の相続評価と処分

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

親族が亡くなって築古のアパートや貸ビルを相続した際、その建物が「既存不適格建築物」「違法建築物」であると判明し、途方に暮れる相続人の方少なくありません。こうした不動産は、通常の物件とは異なる特有の法的な問題があり、相続税の申告から売却などの処分に至るまで専門的な判断が求められます。

今回は、既存不適格・違法建築アパート・貸ビルの相続評価の仕組みと、実務における処分のポイントについて分かりやすく解説します。

既存不適格建築物・違法建築の相続における基礎知識

Q 既存不適格建築物と違法建築物は何が違うのですか?相続や売却への影響は?
A 【法的な違いと評価のポイント】既存不適格建築物は建築当時は適法でその後の法改正によるものであり違法ではありませんが、違法建築物は当初から法令に違反しています。どちらも相続税評価や再建築に大きな制限が生じます。
【相続と処分の注意点】収益物件の相続では、法的ステータスを正確に把握して適正な評価減を行う必要があります。トラブルを防ぐためにも、相続発生後は速やかに不動産と相続法務に精通した弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続が発生した際、対象となる不動産の法的ステータスを正確に把握することは極めて重要です。特にアパートや貸ビルなどの収益物件では、これらの状態が相続税の評価額や将来の収益性にダイレクトに影響します。

既存不適格建築物とは

建築当時は適法だったものの、都市計画の変更や法律の改正(例えば、新耐震基準への移行や容積率・建ぺい率の変更など)によって、現在の基準に適合しなくなった建物のことです。法律違反ではないため、そのまま使用し続けることは認められています。ただし、原則として建て替え(再建築)を行う際には、現在の法基準に合わせる必要があります

違法建築物とは

建築確認を受けずに建てられたり、意図的に容積率や建ぺい率をオーバーして建築されたりするなど、建てられた当時から法律に違反している建物です。行政から是正命令が出されるリスクがあり、銀行からの融資が非常に受けにくいため、資産価値が著しく低下する傾向があります。

既存不適格・違法建築の相続税評価の考え方

アパートや貸ビルといった賃貸用不動産は、「貸家建付地」や「賃貸用家屋」として評価され、一定の評価減を受けることができます。しかし、既存不適格や違法建築といったマイナス要素がある場合、さらに評価額を調整できる可能性があります。

土地(貸家建付地)の評価

再建築不可や容積率オーバーといった制限がある土地は、自由な利用や建て替えが制限されるため、市場での流動性が低くなります。そのため、土地の評価において「利用価値の低下」が認められるケースがあり、補正率を適用して評価額を下げられる場合があります

家屋(貸家)の評価

家屋の固定資産税評価額をベースに算出しますが、違法建築や著しい老朽化によって市場価値がほとんどない場合、専門的な鑑定評価を行うことで、相続税評価額を適正に引き下げられる可能性があります。自己判断で申告すると過大納税になるリスクがあるため注意が必要です。

2024年以降の法令改正と不動産処分の実務

不動産を相続した後は、放置せずに適切な処分や管理を行う必要があります。特に近年の法改正によって、相続に関する手続きの厳格化が進んでいます。

相続登記の義務化と最新の法改正

2024年(令和6年)4月1日より相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければならなくなりました。正当な理由なく怠ると過料が科されるため注意が必要です。 さらに、2026年4月からは住所変更登記も義務化されます。これらに伴い、国は「所有不動産記録証明制度」を導入し、保有物件の把握を容易にするなど、不動産の管理責任を厳しく問う姿勢を強めています。

売却に向けた実務上のポイント

既存不適格や違法建築の収益物件を売却する場合、以下の点に留意する必要があります。

  • 買い手の限定:一般の個人投資家はローンが組めないため購入が難しく、現金を持つプロの不動産投資家や買取専門業者への売却が中心になります。
  • 契約不適合責任の免責:築古のトラブル物件では、引き渡し後のトラブルを防ぐため、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を免責または限定する条件で売買契約を結ぶことが一般的です。
  • 専門家との連携:建築基準法や税法、不動産市場の動向が複雑に絡み合うため、相続に強い弁護士や税理士、不動産の専門家に早期に相談することが、トラブルを防ぐ確実な方法となります。
弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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