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認知症の親の「カード(キャッシュカード)」を無断で使っていた親族への損害賠償

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

認知症の親のキャッシュカードを無断で使う行為は許されるのか

Q 認知症の親のキャッシュカードを親族が無断で使っていた場合、法的にどのような問題が生じますか?
A 本人の意思能力が失われた後に無断で預金を引き出す行為は、不法行為(民法709条)や窃盗罪に該当する可能性があります。他の相続人から損害賠償請求や不当利得返還請求を受けるリスクがあります。

親が認知症になり判断能力を失った後、その親族が「介護費用に使った」「お世話の苦労に対する当然の報酬だ」として、無断でキャッシュカードを使用し預金を引き出すケースが後を絶ちません。しかし、たとえ親族であっても、本人の同意なく財産を持ち出す行為は重大な法的問題を引き起こします。

「親のためだから」「自分も相続人だから問題ないだろう」という認識は大きな間違いです。後々、他の相続人との間で深刻な遺産分割トラブルや法的紛争に発展するケースが非常に多く見られます。

判断能力喪失後のカード使用における不法行為性

親が認知症などにより自身の財産を管理・処分する能力(判断能力)を完全に喪失している場合、その財産は本人以外の者が勝手に処分することはできません。

民事上の責任(不法行為と損害賠償)

他人の財産を無断で消費・費消した行為は、民法上の不法行為に該当します。預金を引き出した親族は、引き出した金額と同額(および利息や弁護士費用)を、相続人全員(または後見人)に対して損害賠償請求として支払う義務を負います。また、法的根拠なく利益を得たとして、不当利得返還請求の対象にもなります。

刑事上の責任(親族間の犯罪と特例)

刑法上、親族間での窃盗罪には「親族相成例(しんぞくそうせいれい)」が適用され、刑が免除される場合があります(配偶者、直系血族、同居の親族など)。しかし、同居していない親族や、他の相続人との関係においては、窃盗罪や詐欺罪として刑事告訴されるリスクが十分にあります。

介護保険の要介護認定資料を活用した「判断能力」の立証

カードを無断で使っていた親族に対し、損害賠償請求や不当利得返還請求を行うためには、「いつの時点で親が判断能力を失っていたか」を客観的な証拠をもって証明する必要があります。この証明において強力な武器となるのが、介護保険の要介護認定資料です。

認定調査票や主治医意見書の活用

要介護認定の際に作成される「認定調査票」や「主治医意見書」には、当時の本人の認知機能の状態が詳細に記録されています。

  • 「意思疎通の難易度」
  • 「短期記憶の障害の有無」
  • 「金銭管理能力の有無」

これらの公的な記録を取り寄せることで、カードが不正に使用されたとされる期間に、親がすでに自力で財産管理や意思表示を行えない状態であったことを論理的に立証できます。

遺産分割における「特別受益」や「寄与分」の主張への影響

預金を勝手に引き出していた親族が、のちの相続手続きにおいて「自分がどれだけ介護に貢献したか」を主張して寄与分を求めてきたり、逆に他の相続人がその不正引き出しを特別受益として主張したりするケースがあります。

不正な引き出しは寄与分として認められない

介護の苦労を理由に生前勝手に預金を引き出していた場合、それは正当な寄与分としては認められません。むしろ、遺産の先食い(遺産隠しや使い込み)とみなされ、相続分の減額や損害賠償の対象となります。

また、2024年4月に施行された相続登記の義務化や、将来的な所有不動産記録証明制度の整備など、相続を取り巻く法制度は年々厳格化しています。不動産だけでなく、預貯金の管理においても、法律に則った透明性の高い手続きが不可欠です。

まとめ:トラブルを防ぐための専門家への相談

認知症の親の財産管理を親族間で行うことには、多くの法的リスクが伴います。

  • カードの無断使用は不法行為や刑事責任に問われる可能性がある
  • 判断能力の喪失は要介護認定資料で証明できる
  • 「良かれと思って」「当然の権利として」行った行為でも損害賠償請求の対象になる

もし親族による預金の使い込みやカードの無断使用が発覚した場合は、感情的な対立に発展しやすいため、個人の力で解決するのは困難です。泣き寝入りをせず、また違法な実力行使に走る前に、相続問題に強い弁護士などの専門家へ早めにご相談ください。適切な証拠の集め方や、法的な手続きを通じた解決へのアドバイスを受けることができます。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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