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緊急時の遺言「危急時遺言」とは?
病床で意識が薄れる中での作成手続き

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

人生の最期や急病など、残された時間がわずかとなった緊迫した状況において、遺言を残したいと考える方は少なくありません。一般的な自筆証書遺言や公正証書遺言を作成する余裕がない場合、法律で認められている特別な遺言の方式として「危急時遺言(ききゅうじゆいごん)」が存在します。

病床で意識が薄れる中、どのようにして遺言を形に残せばよいのか、その具体的な要件や複雑な手続きについて詳しく解説します。

危急時遺言とは?その定義と活用される場面

Q 病床で意識が薄れる緊急時に「危急時遺言」を成立させるための具体的な要件と手続きは何ですか?
A 【要件と手続きのポイント】病気やケガで死亡の危急に迫った人が利用できる一般危急時遺言では、「証人3名以上の立ち会い」が必須であり、遺言者が話した内容を1名の証人が筆記し、各自が署名・押印します。さらに、作成後「20日以内に家庭裁判所へ赴き、遺言確認の審判を申し立てる」必要があります。
【注意点と弁護士活用のメリット】この確認手続きを怠ると遺言が無効になるため迅速な対応が不可欠です。厳格な要件を確実に満たし、その後の遺産分割や不動産登記手続きを円滑に進めるためにも、急ぎ専門の弁護士へご相談ください。

危急時遺言は、民法に定められた「特別方式の遺言」の一つです。不慮の事故や急激な病状の悪化により、通常の遺言(自筆証書遺言や公正証書遺言)を作成する時間的・身体的余裕がない場合に用いられます。

この遺言にはいくつかの厳格な要件がありますが、特に利用されることが多いのが「一般危急時遺言」です。病床に伏し、まさに死期が迫っているような状態であっても、遺言者の意思を法的に残すための最後の手段となります。

危急時遺言の種類

  • 一般危急時遺言:病気やケガで死亡の危急に迫られている人が行う遺言
  • 伝染病隔離者遺言:伝染病によって行政処分などにより交通を絶たれた人が行う遺言(現代では極めて稀なケースです)

危急時遺言を成立させるための厳格な要件

危急時遺言は、通常の手続きを経ない簡易的なものであるため、悪用や偽造を防ぐ目的で非常に厳格な成立要件が課されています。これらを満たしていない場合、遺言自体が無効となってしまうため注意が必要です。

医師の立ち会いと証人3名以上の必須要件

一般危急時遺言を成立させるためには、以下の人的・手続的要件をすべてクリアしなければなりません。

  • 証人3名以上の立ち会い:遺言の内容を正確に聞き取るため、必ず3名以上の証人が同時に立ち会う必要があります。
  • 利害関係者の排除:推定相続人や受遺者(財産をもらう人)、およびその配偶者や直系血族などは証人になれません。
  • 遺言の口授(こうじゅ):遺言者が証人の1人に対し、遺言の趣旨を口頭で伝えます(話すことが困難な場合は、うなずくなどの明確な意思表示による代わりの方法が認められることもありますが、極めて慎重な判断が求められます)。
  • 医師による証明:危急時遺言の作成にあたっては、医師の立ち会いや、遺言者が遺言能力を有していたことについての医師の証明が実務上極めて重要視されます。

証人の役割と筆記・署名の手続き

証人の1人は、遺言者が口頭で述べた趣旨を筆記(書き留める)します。これを遺言者と他の証人に読み聞かせる、または閲覧させます。

その後、各証人がその筆記が正しいことを承認し、各自が署名および押印を行います。病床での緊迫した状況であっても、これらの法律上のプロセスを正確に踏まなければ、後に遺言の効力が争われる原因となります。

作成後に必須となる家庭裁判所での確認手続き

危急時遺言は、証人の前で作成して終わりではありません。法律上の効力を完全に発生させるためには、作成後に行うべき重要なステップが存在します。

2ヶ月以内の家庭裁判所への請求

危急時遺言を作成しただけでは、まだ不完全な状態です。遺言者または利害関係人は、遺言の成立後2ヶ月以内に、家庭裁判所に対して遺言の確認を請求しなければなりません。

この「2ヶ月以内」という期限は極めて重要です。もしこの期間内に家庭裁判所への請求を行わなかった場合、その危急時遺言は無効になってしまいます。

家庭裁判所での確認手続きの流れと注意点

家庭裁判所での確認手続きでは、立ち会った証人全員に出頭してもらい、その遺言が遺言者の真意に基づいているか、適法に作成されたものであるかの尋問や審理が行われます。

  • 証人による申立てのサポートや、書類の不備がないかの確認
  • 遺言者が当時、遺言能力(自分の財産を処分する判断能力)をしっかりと有していたことの立証
  • 医師の診断書やカルテなどの客観的証拠の提出

裁判所が「この遺言は遺言者の真意に基づいて正しく作成された」と確認(審判)して初めて、危急時遺言としての法的な効力が完全に認められることになります。

まとめ:危急時遺言の限界と事前の備えの重要性

危急時遺言は、病床で意識が薄れる中、急を要する状況で遺言を残すための最後の切り札です。しかし、医師の立ち会い、証人3名以上の確保、そして厳格な2ヶ月以内の家庭裁判所での確認手続きなど、クリアすべきハードルは決して低くありません。

また、どれほど急を要する場合であっても、遺言者に自身の財産を処分する明確な意思能力が認められなければ、危急時遺言は無効と判断されてしまいます。

このようなリスクや遺族の負担を避けるためにも、健康なうちから通常の公正証書遺言などを活用して、計画的に相続の準備を進めておくことが最も確実な方法といえます。もし現在、緊急で遺言の作成を検討せざるを得ない状況にある場合は、少しでも早い段階で相続に強い専門家や法律事務所へご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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