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知らなかった借金が後から発覚!
「3ヶ月を過ぎてから相続放棄」を成立させる方法

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

3ヶ月を過ぎても相続放棄は可能?「知らなかった借金」への対処法

Q 亡くなってから3ヶ月を過ぎた後でも、借金が発覚した場合に相続放棄はできますか?
A 【法律上の結論と要件】はい、借金の存在を知った時から3ヶ月以内であれば、最高裁判所の判例に基づき例外的に相続放棄が認められる可能性があります。ただし、被相続人に借金が全くないと信じるべき相当な理由があったことや、それを証明する特別な上申書の提出が不可欠です。
【手続きの注意点と対策】期間経過後の相続放棄は裁判所の審査が厳しくなるため、自己判断で進めると却下されるリスクがあります。確実性を高めるためには、相続問題に強い弁護士に相談し、事情を的確に伝える上申書の作成や申述手続きのサポートを依頼することをおすすめします。

身内が亡くなった後、しばらく経ってから突然、亡くなった人(被相続人)の借金の督促状が届くことがあります。

民法の規定では、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行わなければならないと定められています(これを「熟慮期間」と呼びます)。

しかし、生前に疎遠だった場合など、借金の存在をまったく知らずに3ヶ月が経過してしまうケースは少なくありません。このような場合でも、一定の要件を満たせば、3ヶ月を過ぎてからでも相続放棄を受理してもらうことが可能です。


期限を過ぎた相続放棄が認められる「要件」とは

最高裁判所の判例(昭和59年4月27日判決)により、3ヶ月の熟慮期間を過ぎた後でも相続放棄が認められる「例外的な基準」が示されています。

具体的には、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • 被相続人に相続財産(借金などの負債を含む)が「まったく存在しない」と信じていたこと
  • そう信じていたことについて、「相当な理由」があること(生前に疎遠であった、財産状況を調べる術がなかったなど)
  • 借金などの遺産(債務)の存在を「知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をすること

つまり、「亡くなったことは知っていたが、借金があるとは夢にも思わず、督促状が届いて初めて借金を知った」という状況であれば、その「督促状が届いた日(借金を知った日)」から3ヶ月以内に手続きをすれば、相続放棄が認められる可能性が十分にあります。


家庭裁判所に提出する「上申書(事情説明書)」の重要性と書き方

3ヶ月を過ぎてから相続放棄を申し立てる場合、通常の必要書類(申述書や戸籍謄本など)を提出するだけでは、家庭裁判所に却下されてしまう可能性が極めて高くなります。

そこで重要となるのが、期限を過ぎてしまった正当な理由を説明する「上申書(または事情説明書)」の作成と提出です。

上申書には、裁判官に対して「なぜ3ヶ月以内に手続きができなかったのか」「なぜ今になって借金が発覚したのか」を論理的かつ客観的に説明する必要があります。具体的には、以下の内容を記載します。

  • 被相続人との生前の関係性 生前、何年も音信不通であったことや、別居していて生活実態を全く把握していなかったことなどを詳細に書きます。

  • 財産がないと信じるに至った経緯 被相続人の手元に目立った財産がなく、生前も借金の話を一切聞いていなかったため、相続すべき財産は存在しないと信じていた状況を説明します。

  • 借金の存在を知ったきっかけと日付 「〇年〇月〇日に、債権回収会社から〇〇円の督促状が自宅に届いた」など、借金の発覚日とその経緯を具体的に記載します。

  • 証拠の添付 届いた督促状のコピーや、封筒の消印など、「その日に初めて借金を知ったこと」を裏付ける客観的な証拠を一緒に提出します。

上申書は書き方ひとつで裁判所の判断が分かれるため、あいまいな表現を避け、事実関係を時系列で整理して正確に記述することが不可欠です。


3ヶ月超の相続放棄で絶対にやってはいけない「単純承認」の罠

借金が発覚した際、焦って以下のような行動をとってしまうと、法律上「相続することを認めた(単純承認した)」とみなされ、相続放棄ができなくなってしまいます。

  • 被相続人の財産を処分・使用する 被相続人の預貯金を引き出して使ったり、遺品整理で価値のあるものを売却したりする行為は単純承認にあたります。

  • 督促に対して一部でも返済(弁済)してしまう 債権者から「少しでもいいから返してほしい」と言われ、応じてしまうと「債務の承認」となり、相続放棄が認められなくなります。

  • 遺産分割協議を行う 他の相続人と「誰が何を相続するか」を話し合い、遺産分割協議書に署名捺印する行為も、相続を承認したとみなされます。

2024年4月から「相続登記の申請」が義務化されましたが、相続放棄をすれば最初から相続人ではなかったことになるため、登記義務も発生しません。しかし、慌てて不動産の名義変更手続き(相続登記)を進めてしまうと、それも単純承認とみなされるリスクがあるため注意が必要です。

借金が発覚した場合は、相手方の債権者には連絡せず、まずは一切の遺産に手を触れないことが鉄則です。


期限後の相続放棄は専門家へ相談すべき理由

3ヶ月を過ぎた相続放棄のチャンスは「一度きり」です。

もし家庭裁判所に提出した上申書の内容が不十分で却下されてしまった場合、その決定に対して不服申し立てをすることは極めて困難であり、被相続人の借金をすべて背負うことになってしまいます。

確実に相続放棄を成立させるためには、相続分野に強い弁護士などの専門家に相談・依頼することを強くお勧めします。専門家であれば、個別の事情に応じた説得力のある上申書を作成し、債権者への対応も含めてトータルでサポートすることが可能です。

「もう3ヶ月が過ぎてしまったから」と諦めず、まずは専門家に状況を説明し、解決の糸口を見つけましょう。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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