相続放棄申述受理通知書とは?受け取った後の基本事項
家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、無事に受理されると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が届きます。この通知書は、家庭裁判所があなたの相続放棄を正式に受理したことを証明する極めて重要な書類です。
しかし、通知書が届いたからといって、すべての手続きが自動的に完了するわけではありません。特に被相続人(亡くなった方)に借金などの債務があった場合、通知書を受け取った後に適切な対応をとらなければ、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
相続放棄申述受理通知書は再発行が一切認められません。そのため、紛失しないよう大切に保管することが大前提となります。この通知書を手元に確保した上で、次に発生する具体的な手続きや対処法を確認していきましょう。
債権者から督促が来た場合の対処法
相続放棄が成立しても、債権者(お金を貸していた銀行、消費者金融、カード会社など)はその事実をリアルタイムで把握できるわけではありません。そのため、相続放棄の完了後に被相続人の督促状や請求書が自宅に届くことがあります。
このような場合の対処法は、以下の通りです。
債権者へ「受理通知書のコピー」を送付する
債権者から督促が届いた場合、まずはその債権者に対して「相続放棄申述受理通知書」のコピーを郵送またはFAXで送付します。
債権者は、法律上の相続人に対して請求を行っています。あなたが相続放棄をしたことを証明すれば、債権者はあなたに対してそれ以上の請求を行うことができなくなります。
送付する際のポイントは以下の3点です。
- 原本は絶対に送らない: 前述の通り、受理通知書は再発行できません。必ずコピーを送付してください。
- 送付状を同封する: 「〇〇の相続人であった〇〇ですが、家庭裁判所において相続放棄が受理されましたので、受理通知書の写しを送付いたします。今後は私へのご連絡・ご請求はお控えいただけますようお願い申し上げます」といった旨の文面を添えましょう。
- 配達記録が残る方法で送る: 後々のトラブルを防ぐため、特定記録郵便やレターパックなど、相手に届いたことが確認できる方法で郵送するのが確実です。
督促を放置しないことの重要性
「自分は相続放棄をしたから関係ない」と思い、債権者からの督促状を無視して放置することは非常に危険です。
債権者が相続放棄の事実を知らないまま裁判上の手続き(支払督促や訴訟など)に踏み切った場合、適切に対応しないと、最悪の場合財産を差し押さえられるリスクがあります。裁判所から訴状などが届いた場合でも、相続放棄受理通知書のコピーを提出して適切に反論(答弁書の提出など)しなければ、請求を認めたものとみなされてしまうためです。
督促が届いたら放置せず、速やかに相続放棄が完了している旨を伝え、証明書(コピー)を提示して請求を遮断しましょう。
「相続放棄申述受理通知書」と「相続放棄申述受理証明書」の違い
相続放棄に関する書類には、通知書のほかに「相続放棄申述受理証明書」というものがあります。この2つは名称が似ていますが、その役割や性質が異なります。
受理証明書が必要になるケース
「相続放棄申述受理通知書」は、家庭裁判所が申述人本人に対して「受理しました」と知らせるためのワンタイムの通知です。これに対し、「相続放棄申述受理証明書」は、相続放棄が受理されている事実を公的に証明する書類であり、必要に応じて何度でも再発行(交付申請)が可能です。
以下のような手続きを行う際には、通知書のコピーではなく「受理証明書(原本)」の提出を求められることが一般的です。
- 他の相続人が不動産の相続登記(名義変更)を行うとき
- 他の相続人が被相続人の預貯金の解約手続きを行うとき
- 債権者が「通知書のコピーではなく、公的な証明書の原本を出してほしい」と要求してきたとき
受理証明書の取得方法
受理証明書は、相続放棄の申述をした家庭裁判所に対して交付申請を行うことで取得できます。申請には以下のものが必要です。
- 相続放棄申述受理証明書交付申請書
- 申請手数料(通数分の収入印紙。1通につき150円)
- 返信用封筒と切手(郵送で請求する場合)
- 本人確認書類のコピー
他の共同相続人や、利害関係人である債権者から証明書の提出を求められた場合は、速やかに家庭裁判所で受理証明書を取得して交付しましょう。
相続放棄後に注意すべきポイントと法改正の関連
近年、相続や不動産登記に関する法改正が相次いで行われており、相続放棄後の手続きや義務についても正確な知識が求められます。
2024年4月からの「相続登記義務化」との関係
2024年(令和6年)4月1日より、不動産の相続登記(名義変更)が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠った場合は過料(ペナルティ)の対象となります。
あなたが相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったことになるため、この相続登記の義務を負うことはありません。
ただし、あなたが相続放棄をしたことによって、次順位の親族(例:子が放棄したことで、被相続人の親や兄弟姉妹)が新たに相続人となり、その不動産を相続することがあります。その際、新しく相続人となった方が登記手続きを進める上で、あなたが相続放棄をしたことを証明する「相続放棄申述受理証明書」の提出を求めてくることがあります。円滑な登記手続きに協力するためにも、求められたら証明書の取得に協力しましょう。
相続財産の「保存義務(管理義務)」
相続放棄をしたからといって、被相続人の財産に関する責任がすべて一瞬で消滅するわけではありません。
民法の規定により、相続放棄をした者は、その放棄によって新たに相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまでは、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の保存を継続しなければならないとされています(民法第940条第1項)。
特に、被相続人が所有していた空き家や土地がある場合、放置して近隣に危害を加えるような状態(建物の倒壊や土砂崩れなど)になると、管理責任を問われる可能性があります。次の相続人や相続財産清算人に適切に財産を引き継ぐまでは、最低限の管理意識を持っておく必要があります。
まとめ
相続放棄申述受理通知書を受け取った後は、以下のポイントを確実に押さえておきましょう。
- 通知書は再発行できないため、原本は厳重に保管する。
- 債権者から請求が来た場合は、通知書のコピーを送付して請求を遮断する。
- 登記手続きなどで原本の提出を求められた場合は、家庭裁判所で「受理証明書」を申請・取得する。
- 2024年からの相続登記義務化においては、相続放棄者は義務を負わないが、次順位の相続人の手続きに協力することが望ましい。
相続放棄後の対応に不安がある場合や、債権者とのやり取りでトラブルが生じた場合は、速やかに弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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