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親が子どもの「住宅ローンを肩代わり・繰り上げ返済」した時の贈与税回避

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

親が子供の住宅ローンを肩代わりすると「贈与税」がかかる?

Q 親が子どもの住宅ローンを肩代わり・一括繰り上げ返済した場合、贈与税はかかりますか?回避する方法はありますか?
A 【原則として高額な贈与税が課されます】親が子どもの住宅ローンを肩代わり・一括返済すると、実質的な経済的利益を与えたものとみなされ「みなし贈与」と判定されます。年間110万円の基礎控除を超える部分に対して最大55%の贈与税が課されるため、既存のローン返済に「住宅取得等資金の非課税特例」は原則として使えない点に注意が必要です。
【適切な契約や専門家への相談でリスクを回避します】贈与税を回避するためには、親から子どもへの「金銭消費貸借契約(借用書)」を正式に締結し、無利息ではなく適正な金利で返済実績を作ることが重要です。誤った資金移動は税務調査で追徴課税を受けるリスクがあるため、相続や贈与の法務に精通した弁護士などの専門家に事前に相談することをおすすめします。

親が子どもの住宅ローンを代わりに支払ったり、一括で繰り上げ返済を行ったりすると、税務署から「みなし贈与」と判断され、高額な贈与税が課されるリスクがあります。

家族間の助け合いであっても、税法上は「親から子どもへ金銭の贈与があった」とみなされるためです。

「みなし贈与」とは?

みなし贈与とは、当事者間で「あげます・もらいます」という贈与契約を交わしていなくても、実質的に経済的利益を与えた場合に贈与があったとみなす仕組みです。

住宅ローンの肩代わりは、子どもが本来支払うべき債務を親が消滅させたことになるため、贈与税の課税対象となります。贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、住宅ローンの繰り上げ返済は数百万円〜数千万円規模になることが多いため、最高55%の極めて高い税率が適用されるおそれがあります。

知っておくべき「住宅取得等資金の非課税特例」の落とし穴

子どもの住宅購入を支援する制度として「住宅取得等資金の非課税特例」が知られていますが、住宅ローンの肩代わりに関しては注意が必要です。

既存の住宅ローン返済には特例が使えない

この特例は、あくまで「住宅を新築・購入・増改築するための資金」に対して適用されるものです。

すでに組んでしまっている住宅ローンの返済や肩代わりには、原則として適用できません。

住宅を購入する際(引き渡し前やローン設定時)に親から直接資金提供を受ける場合には特例を活用できますが、購入から数年後に「ローンの残債を一括返済してあげる」というケースでは特例の対象外となります。

住宅ローンの肩代わりで贈与税を回避・軽減する4つの対策

では、親が子どものローン返済を支援しつつ、贈与税の発生を防ぐにはどのような方法があるのでしょうか。代表的な4つの対策を解説します。

1. 相続時精算課税制度を選択する

60歳以上の親から18歳以上の子どもへ贈与する場合、「相続時精算課税制度」を選択することができます。

累計2,500万円までは贈与税が非課税となり、超えた部分に対しても一律20%の税率で済みます。また、2024年の税制改正により、毎年110万円の基礎控除も新設されたため使い勝手が向上しました。

ただし、将来親が亡くなった際(相続発生時)に、贈与された金額を相続財産に加算して相続税を計算することになります。税金の支払いを将来に繰り延べる性質の制度である点に留意しましょう。

2. 親子間で「金銭消費貸借契約(借金)」を結ぶ

親からの資金提供を「贈与」ではなく「貸付(借入)」の形にする方法です。

金銭消費貸借契約書を作成し、子どもが親へ毎月返済していく形をとれば、贈与税はかかりません。ただし、税務署から「名目だけの借金」と疑われないために、以下の条件を確実に満たす必要があります。

  • 適切な金利を設定すること(無利息は一部贈与とみなされるリスクがあります)
  • 返済期日や返済方法を明確にした契約書を作成すること
  • 銀行口座振込などを利用し、実際に返済を行っている客観的な記録を残すこと

3. 親が不動産の「持分」を買い取る

住宅ローンの残債に相当する金額分、親が住宅の「持分(所有権の一部)」を取得する方法です。

子どもから親へ持分を売買し、その対価として得た資金で子どもがローンを一括返済します。これにより贈与ではなく「売買取引」となります。

ただし、不動産の名義(所有権持分)が変更されるため、法務局での所有権移転登記が必要となります。2024年4月からは相続登記が義務化されるなど、不動産登記に関する法令が厳格化されているため、専門家へ相談のうえ正確な手続きを行うことが不可欠です。

4. 年間110万円の基礎控除枠内で分割して贈与する

暦年課税の基礎控除(年間110万円)を活用し、毎年110万円以下の金額を親から子どもへ贈与し、子ども自身がその資金で少しずつ繰り上げ返済していく方法です。

ただし、最初から「合計1,000万円を10年に分けて贈与する」といった約束をしていると「定期贈与」とみなされ、初年度に1,000万円全体に対して贈与税が課される危険があります。毎年贈与契約書を作成し、独立した贈与として行うことが大切です。

まとめ:将来の相続まで見据えた正しい資金移動を

親が子どもの住宅ローンを肩代わり・繰り上げ返済する際は、安易に口座振込を行うのではなく、あらかじめ税務・法務の観点から適切な対策を講じることが重要です。

特に「住宅取得等資金の非課税特例」は購入時の資金移動に限定されるため、既存ローンの返済には使えません。親子間での契約書の作成や持分変更登記、さらには将来の相続時の遺産分割(他の兄弟姉妹との不公平感の解消など)も含めた慎重な判断が求められます。

税務調査でペナルティ(重加算税や無申告加算税)を受けないためにも、資金移動を行う前に法律事務所や税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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