自筆証書遺言を法務局に預けると検認は不要ですか?
ご自身で遺言書を作成される方が増えていますが、その保管方法や死後の手続きについて不安を抱える方は少なくありません。特に、自筆証書遺言は自宅で保管していると、発見されないリスクや、相続人による勝手な開封・偽造・変造といったトラブルが起こりやすいという問題点がありました。
こうした懸念を解消するために創設されたのが、法務局における「自筆証書遺言書保管制度」です。この制度を利用して法務局に遺言書を預けた場合、相続人にとって大きなメリットとなるのが、「家庭裁判所の検認が不要になる」という点です。
ここでは、検認が不要になる理由や、法務局に預けるメリット、そして遺言執行における注意点について詳しく解説します。
自筆証書遺言の「検認」とは何か?
従来、自宅で保管されていた自筆証書遺言を発見した場合、相続人は勝手に開封してはならないという決まりがありました。遺言書の偽造や変造を防ぐためです。
発見した遺言書は、相続人が家庭裁判所へ持参し、「検認(けんにん)」という手続きを経なければなりませんでした。検認とは、相続人等の立ち会いのもと、裁判官が遺言書の状態を確認し、これ以上の偽造・変造を防ぐための法的な保全手続きです。
検認手続きが持つデメリット
検認手続きには、以下のような時間的・精神的な負担が伴います。
- 全ての相続人を特定し、戸籍謄本などの必要書類を収集しなければならない
- 申立てから実際に検認期日が決まるまでに、数ヶ月程度かかることが多い
- 平日に裁判所へ出頭する必要がある
このように、遺言者の死後すぐに預貯金の払い戻しや不動産の名義変更を行いたくても、検認が終わるまでは身動きが取れないという大きな足かせとなっていました。
法務局の遺言書保管制度を利用すれば検認が不要に
2020年7月から始まった「法務局における自筆証書遺言書保管制度」を利用して、法務局(遺言書保管所)に遺言書を預けていた場合、家庭裁判所の検認は一切不要となります。
法務局の保管制度では、形式上の要件(自筆であること、署名・押印があることなど)をあらかじめ満たしているかチェックされた上で専用のデータとして厳重に管理されます。そのため、法的な信頼性が高く担保されており、死後にあらためて裁判所で内容の真偽を確認(検認)する必要がなくなるのです。
これにより、相続人は検認を待つことなく、法務局で「遺言書情報証明書」の交付を請求し、直ちに相続手続きへと移行できるようになりました。
法務局に遺言書を預けるその他のメリット
検認が不要になること以外にも、法務局の遺言書保管制度には多くのメリットがあります。
紛失や隠蔽・破棄のリスクを防げる
自宅で保管していると、火災や地震などの災害で消失したり、相続人によって隠されたり破棄されたりするリスクがあります。法務局であれば、頑丈なセキュリティのもとで原本が安全に保管されます。
相続人への通知制度がある
遺言者の死亡後、遺言書の保管を証明する証明書を請求した相続人等がいる場合、あるいは遺言書情報証明書の交付請求があった場合には、他の相続人に対して法務局から遺言書が保管されている旨の通知がなされます(※生前に通知が行くことはありません)。これにより、遺言書の存在が相続人に伝わらないという事態を防げます。
最新の法改正と不動産相続に関する注意点
遺言書に基づいて不動産を引き継ぐ場合、相続手続きにおいて重要な法改正に対応しておく必要があります。
2024年4月1日から、相続登記(不動産の名義変更)の申請が法的義務となりました。正当な理由なく不動産の取得を知った日から3年以内に登記を申請しない場合、10万円以下の過料の対象となるため注意が必要です。
また、2026年4月からは、住所変更登記の申請も義務化される予定です。遺言書によってスムーズに不動産を取得したとしても、その後の名義変更を放置してしまうとペナルティを受ける可能性がありますので、遺言書を執行する際は速やかに専門家に相談し、登記手続きまで一気通貫で進めることを強くおすすめします。
自筆証書遺言の作成や、法務局での保管手続き、さらには将来の相続手続き全体に不安がある場合は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。専門的な視点から、確実で安心できる相続対策をサポートいたします。
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