親御さんが遺された骨とう品や掛け軸は、一見すると高価なものに見えても、いざ査定に出してみると「価値がほとんどつかない(鑑定額が0円)」というケースは少なくありません。
このような場合、他の相続人との間で遺産分割協議をどのように進めればよいのか、悩む方は多いのではないでしょうか。
この記事では、骨とう品や掛け軸の鑑定額が0円だった場合の適切な遺産分割の方法について、法律的・実務的な観点から分かりやすく解説します。
骨とう品や掛け軸の鑑定額が0円だった場合の遺産分割
故人が遺した美術品や骨とう品は、美術市場のトレンドや保存状態、真贋の判定によって価値が大きく左右されます。専門業者に鑑定を依頼した結果、価格がつかない(0円である)と判明した場合、遺産分割協議ではその財産をどのように処理すべきか迷いがちです。
結論から申し上げますと、経済的な価値が0円であれば、相続財産としての評価額も0円として処理を進めることが一般的です。
買取業者2〜3社の査定書を証拠として残す理由
骨とう品や掛け軸の鑑定額が0円であった場合、最も重要なのは「他の相続人に対して客観的な根拠をしめすこと」です。
例えば、「本当は価値があるのに、特定の相続人が安く買い叩こうとしているのではないか」と他の相続人が疑念を抱くケースがあります。このような無用なトラブルを防ぐためには、以下の対策が有効です。
- 1社だけでなく、買取業者2〜3社に査定を依頼する
- 各業者から「査定書」や「見積書(0円または値段がつかない旨の証明)」を取得する
- 査定の過程や結果を写真に残すなどして記録しておく
複数の専門業者から同様の評価を受けていれば、その骨とう品や掛け軸の客観的な市場価値が0円であると証明しやすくなります。
形見分けとして特定の相続人が取得する
客観的な証拠によって価値が0円(またはそれに近い少額)であることが確認できたら、次は実際の引き取り手を決めます。
多くの場合、これらの品物は「遺産」というよりも「形見」としての意味合いが強くなります。そのため、特定の相続人が「形見分け」という名目で引き継ぐことが現実的かつ円満な解決策となります。
価値が0円の財産であれば、他の相続人との間で遺産分割のバランス(代償分割など)を考慮する必要性も低いため、話し合いは比較的スムーズに進むでしょう。
トラブルを防ぐための遺産分割協議書の書き方
骨とう品や掛け軸を特定の相続人が取得する場合であっても、「形見だから遺産分割協議書には書かなくてもよい」と考えるのは禁物です。
後々の相続人同士の紛争を防ぐため、また近年厳格化している各種の手続きを見据えて、適切な対応を行うことが求められます。
「価値0円の財産」も遺産分割協議書に記載するべきか
遺産分割協議書には、原則としてすべての遺産を特定して記載します。しかし、価値が0円の骨とう品や掛け軸について、わざわざ細かく記載すべきか悩む方もいるでしょう。
実務上は、以下のように整理して記載することが推奨されます。
- 複数の専門業者による査定で価値がつかなかったことを前提とする
- 遺産分割協議書の中に「形見として特定の相続人が取得する」旨を明記する
- 曖昧な表現を避け、品目(例:「掛け軸〇点」「茶道具一式」など)を特定できるようにする
このように書面化しておくことで、「あの骨とう品は本当は高価だったはずだ」といった後からの蒸し返しを防ぐことができます。
近年の法改正を踏まえた遺産分割と相続登記の注意点
相続に関する法制度は近年大きな転換期を迎えています。
2024年(令和6年)4月1日からは相続登記の申請が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければ、過料の対象となるペナルティが導入されました。
また、2026年(令和8年)4月には住所変更登記の義務化も控え、相続手続き全般の正確性と透明性がより一層求められるようになっています。
骨とう品や掛け軸といった動産類は不動産登記の直接の対象とはなりませんが、遺産分割協議そのものが不十分であったり、相続人間で後からトラブルに発展したりすると、不動産を含む全体の遺産分割協議書全体が無効リスクを抱えることになりかねません。
「たかが骨とう品」と軽視せず、査定書という証拠をしっかりと残した上で、法的効力のある遺産分割協議書を作成することが、円満かつ確実な相続の第一歩となります。
まとめ
親の遺産である骨とう品や掛け軸の鑑定額が0円だった場合でも、適切に対処すれば遺産分割で揉めるリスクを大きく減らすことができます。
ポイントは、「買取業者2〜3社の査定書(評価0円)を客観的な証拠として残すこと」、そして「形見分けとして特定の相続人が取得する旨を遺産分割協議書に明記すること」の2点です。
感情的になりやすい形見の品だからこそ、客観的な事実と法律に基づいた丁寧な手続きを行いましょう。もし相続人同士の話し合いが難航する場合や、遺産分割協議書の作成に不安がある場合は、相続に強い専門家へ早めに相談することをおすすめします。
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