実家の山林などを相続したものの、管理の手間や固定資産税の負担から「相続土地国庫帰属制度」を利用して国に手放したいと考えている方は少なくありません。しかし、すべての土地が無条件に引き取られるわけではなく、申請にはさまざまな要件が課されます。
特に質問の多い「山林に生い茂る木や大木」の扱いについて、制度の仕組みとあわせて詳しく解説します。
相続土地国庫帰属制度における「樹木・森林」の取り扱い
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に引き取ってもらうための便利な制度ですが、土地の「状態」によっては引き取りが拒絶される「却下事由」や「不承認事由」が法律で定められています。山林の木々についても、この審査基準をクリアしなければなりません。
通常の樹木が生えている山林は原則として対象内
山林であれば、木が生い茂っているのはごく自然な状態です。雑木林や、一般的な植林(杉やヒノキなど)がされている山林については、通常の樹木や森林であればそのままの状態でも制度の利用が可能です。
国庫帰属の審査では「管理や処分のために過多な費用や労力がかからないこと」が求められますが、自然の範囲内にある山林の樹木を理由に一律で拒絶されることはありません。
放置された「大木」や「危険樹木」が問題になるケース
問題となるのは、手入れが一切されずに放置された結果、隣家や道路に倒れかかるような過度な危険樹木(大木)が存在しているケースです。
以下のような状態の山林は、国の管理に支障をきたすと判断される可能性が高くなります。
- 強風や雪の重みで、いつ隣家の屋敷内に倒れてもおかしくない枯れ木や巨木
- 病害虫に侵されて広範囲に立ち枯れしている森林
- 土砂崩れを引き起こす恐れのある危険な斜面と一体化した大木
これらに該当する場合、申請者は国庫帰属の承認を受けるために、事前に自らの費用と責任で危険木を伐採・処分するなどの措置を求められるのが一般的です。
申請前に知っておくべき注意点と最新の法改正
山林を国に引き渡すためには、樹木の状態だけでなく、所有者としての法的な義務や手続きにも注意を払う必要があります。
境界の確定と隣地とのトラブル防止
山林は一般的に境界が曖昧であることが少なくありません。相続土地国庫帰属制度の申請にあたっては、土地の境界が明確であり、隣地との間に紛争がないことが前提となります。
大木が隣地にはみ出している場合などは、境界トラブルに発展しやすいため、申請前に隣接地の所有者と協議を行い、必要に応じて枝の剪定や伐採を行う配慮が不可欠です。
相続登記の義務化との関係
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが法律で義務化されました。さらに、2026年4月からは住所変更登記の義務化も控え、放置された山林であっても所有者情報の明確化が厳しく求められています。
「国庫帰属制度を使いたいから」といって、相続登記をせずに放置することは法律違反となりますので注意してください。まずは名義変更を正しく行い、その上で土地の引き取り申請を進めるという手順を踏む必要があります。
申請には「負担金」の納付が必要
国庫帰属の承認を受けた場合、土地を手放すだけで終わりではありません。山林を含む宅地や農地以外の土地(雑種地・原野・山林など)については、原則として面積に応じた10年分の管理費用相当額(負担金)を国に納付しなければなりません。
大木の伐採費用に加え、この負担金の支払いが発生するため、費用対効果も含めて慎重に検討することが大切です。
まとめ:山林の引き取りは事前の現地調査と専門家への相談を
地木や大木が生い茂る山林であっても、通常の森林であれば相続土地国庫帰属制度の対象となります。しかし、倒木の危険がある危険木が放置されている場合は、事前の伐採などの整備が必須条件となります。
また、境界の確定や複雑な申請書類の作成、最新の法改正への対応など、一般の方が単独ですべてをこなすのは大きな負担となります。山林の現状や樹木の状態で不安がある場合は、申請手続きを進める前に、不動産登記や相続問題に精通した弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
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