親の介護を献身的に行ってきた同居の兄弟姉妹が、「親の財産を管理している」という理由で通帳やキャッシュカードを隠し、財産状況を開示してくれないというトラブルは、相続の現場で非常によく見受けられます。
「生前に親の世話をしたのだから使い込んでいい」という法律上の根拠はありません。もし不審な出金や使い込みの疑いがあるならば、感情的な対立を避けるためにも、客観的な証拠を集めて法的なアプローチを取ることが不可欠です。
この記事では、同居の相続人が通帳を見せてくれない場合の具体的な調査方法と、弁護士を活用した解決へのステップをわかりやすく解説します。
親の通帳を見せない同居の子に隠された財産を開示させる方法
親が亡くなると、相続人全員には遺産分割協議を行うための前提として、被相続人の遺産の全容を把握する権利が生じます。
同居している親族が「自分で管理しているから関係ない」「通帳なんてない」と主張して開示を拒んだとしても、相続人の一人として法的な手続きを踏むことで、金融機関から直接お金の流れを確認することが可能です。
なぜ同居の相続人は通帳を見せたがらないのか?
同居の子が通帳を見せない背景には、主に以下のような事情や心理が隠されています。
- 親の生前から無断で預金を引き出して自分の生活費や遊興費に使ってしまった(使い込み・不当利得)
- 生前に特定の相続人だけが多額の現金を生前贈与として受け取っていた
- 遺産が思ったよりも少なく、自分の寄与分を主張しにくいため隠したい
特に、親の判断能力が低下(認知症など)した後に、同居の家族が勝手にお金を引き出していた場合、それは遺産の使い込み(不当な財産減少)にあたり、他の相続人に対する損害賠償請求や不当利得返還請求の対象となります。
銀行の取引履歴(過去10年分)を取り寄せて使い込みを調査する
通帳の実物が手に入らない場合でも、諦める必要はありません。銀行の記録はデジタルで厳重に残されています。
相続人が自ら、あるいは弁護士を通じて各金融機関へ「取引履歴(過去の入出金記録)」の開示請求を行うことで、過去のお金の動きをすべて明らかにすることができます。
取引履歴請求のポイントと注意点
金融機関の取引履歴を取り寄せる際は、以下の点に注意が必要です。
- 相続人としての証明書類(戸籍謄本、除籍謄本、印鑑証明書など)一式が必要となります。
- 相続開始日(死亡日)時点の残高証明書だけでなく、生前の使い込みを暴くためには過去10年分程度に遡った取引履歴を取り寄せるのが鉄則です。
- 複数の銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)、ネット銀行などに口座を持っていた可能性があるため、故人の自宅にある郵便物やキャッシュカード、クレジットカードの明細などから口座のありかを探す必要があります。
近年は、法改正による財産調査の手法や、2024年の相続登記義務化をはじめとする法整備に伴い、不動産だけでなく動産・預貯金に関する権利関係の明確化が厳格に求められています。隠された財産を放置すると、のちの遺産分割協議で不利益を被るリスクが高まります。
弁護士に依頼して行う財産調査と法的アプローチ
自分で金融機関に取引履歴を請求することも不可能ではありませんが、膨大な枚数の履歴データを分析し、不正な出金を見つけ出すのは非常に労力がかかります。また、同居の家族と直接交渉しようとすると、激しい感情的対立に発展しがちです。
ここで弁護士を代理人に立てることで、以下のような強力なメリットが生じます。
- 弁護士会照会や職務上請求などの法的手法を用い、スムーズかつ網羅的に金融機関から取引履歴を取り寄せることができます。
- 過去の出金データから「不自然な引き出し(高額なATM出金、特定の口座への振込など)」を専門的な視点で精査し、使い込みの証拠を固めます。
- 遺産隠しや使い込みが発覚した場合、不当利得返還請求や遺産分割協議における特別受益の持ち戻しの主張など、法的な回収手続きを一任できます。
親の介護を頑張ってくれたことに対する感謝の気持ちがあったとしても、遺産の不正な使い込みは別問題です。公平な遺産分割を実現するためには、泣き寝入りせずに証拠を集め、専門家の力を借りて厳正に対処することが大切です。
「同居の子が通帳を見せてくれない」「使い込みの疑いがあるがどう証拠を集めればいいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ一度、相続問題に強い弁護士へご相談ください。
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