相続が発生した際、相続人のなかに刑務所に服役中の方がいる場合、どのように遺産分割協議を進めればよいのか戸惑う方は少なくありません。服役中であっても相続権が失われるわけではないため、その人を含めて協議を行う必要があります。
本記事では、服役中の相続人がいる場合の具体的な遺産分割協議の手順や注意点について、分かりやすく解説します。
【具体的な手続きと注意点】刑務所長を経由した手紙のやり取りで協議書を郵送し、本人の署名および指印または印鑑登録証明書を添えてもらうことで進められます。手続きに不安がある場合は弁護士への相談をおすすめします。
服役中の相続人がいても遺産分割協議は可能
故人が残した遺産を分けるためには、原則として全ての相続人が参加して遺産分割協議を行う必要があります。相続人の一人が刑務所に服役中であっても、その人が相続人である事実に変わりはありません。
「連絡を取るのが難しい」「面会に行けない」という理由で、服役中の相続人を除外して遺産分割協議を行っても、その協議は無効になってしまいます。必ず服役中の方を含めた全員で協議をしなければなりません。
服役中の相続人と連絡を取る方法
刑務所にいる受刑者とは、手紙のやり取り(信書の発受)や面会を行うことが可能です。遺産分割協議を進めるにあたっては、まず本人宛に手紙を送り、遺産分割の内容について話し合いの打診を行います。
受刑者は自由な外出や通信が制限されているものの、相続に関する書類のやり取りは正当な理由として認められています。
服役中の相続人と遺産分割協議を進める具体的な手順
服役中の相続人と実際に遺産分割協議を行い、書類を完成させるまでの具体的な流れは以下の通りです。
1. 遺産分割の内容をまとめる
まずは、他の相続人全員で遺産分割の案(誰がどの財産を相続するか)をまとめます。
2. 刑務所長を経由した書類の郵送
遺産分割協議書を作成したら、服役中の相続人宛てに郵送します。この際、宛先には受刑者がいる矯正施設(刑務所や少年刑務所など)の名称と、本人の氏名・囚人番号などを正確に記載します。 刑務所では外部からの郵便物は職員による検閲が行われますが、相続に関する書類のやり取り自体は拒絶されません。
3. 書類への署名と認証(証明)
書類を受け取った本人が内容に同意した場合、遺産分割協議書に署名と押印を行います。
ここで重要なポイントとなるのが「印鑑証明書」の取得です。服役中の身であっても、出所前までに印鑑登録をしていれば市区町村役場を通じて印鑑登録証明書を取得することができます(刑務所の職員を通じて代理申請・郵送請求を行います)。
もし印鑑登録をしていない、あるいは印鑑証明書が用意できない場合は、「署名および指印(または署名のみ)」を行い、刑務所長による「署名・指印の認証(証明)」を受ける方法をとります。これは、その署名と指印が本人のものであることを刑務所長が公的に証明する手続きです。
近年の法改正を踏まえた注意点
遺産分割協議がまとまり、不動産などの相続手続きを行う際には、近年の法改正にも注意が必要です。
- 相続登記の義務化(2024年4月施行):不動産を相続した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました。服役中の相続人がいる場合でも、この期限は猶予されないため、速やかに協議を進める必要があります。
- 住所変更登記の義務化(2026年4月施行予定):住所が変わった場合の手続きも義務化されます。相続人の中に住所が変わる可能性がある人がいる場合は注意しましょう。
- 所有不動産記録証明制度の活用:故人が全国に所有していた不動産を漏れなく把握するため、この制度を利用して財産調査を確実に行うことが重要です。
スムーズに進まない場合の対策
服役中の相続人が遺産分割の内容に納得しない場合や、意思疎通が困難な場合は、当事者間での話し合いが難航することがあります。
そのようなときは、無理に自分たちだけで解決しようとせず、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。弁護士であれば、代理人として刑務所への面会や書類のやり取り、服役中の相続人との交渉を円滑に進めることが可能です。正確かつ確実な遺産分割協議を行うために、専門家のサポートを検討してみてください。