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相続税の「連帯納付義務」:他の兄弟が相続税を滞納した時の自分への督促

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

相続税の「連帯納付義務」とは?他の兄弟が滞納した時のリスク

Q 相続税の連帯納付義務とは何ですか?他の兄弟が滞納すると自分に請求が来るのですか?
A 相続税には、共同相続人の一人が税金を滞納した場合に、他の相続人が代わりに納税しなければならない連帯納付義務があります。そのため、兄弟が期限までに納付しないと、税務署からあなた自身に督促状が届くおそれがあります。

親から財産を相続した際、兄弟などの他の共同相続人が税金を支払わず、税務署からの督促を無視し続けた場合に、自分宛てに突然納税の通知が届くことがあります。これが相続税の連帯納付義務です。

相続税は、被相続人から財産を取得した人それぞれが個別に納めるのが基本ですが、国への確実な税収確保という観点から、民法および相続税法によって連帯して納める義務が課されています。この仕組みを知らずにいると、予期せぬ金銭的トラブルや差し押さえのリスクに直面しかねません。

本記事では、連帯納付義務の基本的な仕組みから、税務署から通知が届いた場合の対処法、そしてトラブルを未然に防ぐための事前対策について詳しく解説します。

連帯納付義務が発生する仕組みと限度額

相続税の申告と納税は各相続人が単独で行うものですが、法律上は「お互いに相手の相続税の納税について連帯して責任を負う」ことになっています。

なぜ連帯して納税する義務があるのか

相続税は、遺産の総額に対して課される税金(相続税の総額)を、実際に取得した財産の割合に応じて各相続人が分担して支払います。しかし、特定の相続人が無資力であったり、行方不明であったりして税金が回収できない場合、国としては税金を取りっぱぐれることになってしまいます。これを防ぐため、他の共同相続人が代わりに納める仕組みが用意されているのです。

連帯して支払うべき金額の限度額

他の相続人が滞納したからといって、その人の相続税全額を無制限に肩代わりしなければならないわけではありません。連帯納付義務には法律上の限度額が定められています。

  • 他の相続人が滞納した金額
  • 自分が実際に取得した財産の価額(純資産額)を限度とする額

つまり、自分が相続した財産の価値を超える金額まで請求されることはありません。しかし、自分の相続財産の範囲内であれば、兄弟の滞納分を全額支払う義務が生じる可能性があるため注意が必要です。

税務署から督促が届いたときの具体的な流れ

ある日突然、税務署から「他の相続人の滞納分を納付してください」という通知(納税通知書)が届いた場合、どのように手続きが進むのでしょうか。

税務署からの「納付通知書」の送付

税務署は、まず主たる滞納者である本人に対して督促を行い、それでも財産が差し押さえられないなどの理由で納税が完了しない場合に、連帯納付義務者であるあなたに対して納付通知書を送付します。この通知書が届いた場合、記載された期限までにその税額を納付しなければなりません。

納付に応じない場合の差し押さえリスク

もし通知を無視して放置し続けると、税務署はあなたの財産(預貯金、不動産、給与など)を差し押さえる法的措置に出ます。兄弟の滞納が原因であっても、あなた自身が法的・金銭的な不利益を被ることになるため、通知を受け取ったら迅速な対応が不可欠です。

立て替えた分は兄弟に請求できる(求償権)

他の相続人の代わりに自分が相続税を納付した場合、法律上、その立て替えた金額を本来の納税義務者である兄弟に対して請求する権利(求償権)が発生します。

  • 立て替えた分を兄弟に請求する
  • ただし、そもそもその兄弟に資力(支払い能力)がないから滞納しているケースが多いため、全額を回収できる保証はない

この点からも、できる限り連帯納付義務が発動する事態を避けることが重要です。

連帯納付義務を回避・解除するための対策

連帯納付義務という重いリスクを避けるためには、相続発生時の遺産分割や、その後の手続きにおいて適切な対策を講じることが極めて有効です。

相続財産の適切な把握と「物納」の検討

相続税を現金で一括納付することが困難な場合、相続税法には不動産や有価証券などで納税する「物納」という制度が用意されています。

  • 現金がない相続人がいる場合、無理に借金をして納税するのではなく、物納の手続きを進めるよう促す
  • 相続人全員がそれぞれの方法(現金や物納)で確実に期限内に納税を完了させることが、連帯納付義務を発生させない最大の防御策となります

相続放棄の活用

被相続人が多額の借金を抱えている場合や、他の相続人との関係性が希薄で相続トラブルに巻き込まれたくない場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行うという選択肢があります。

  • 相続放棄をすれば、初めから相続人ではなかったことになります
  • 相続人ではないため、当然ながら相続税の納税義務も、連帯納付義務も一切発生しません

不動産の所有権移転と名義変更の重要性

2024年(令和6年)4月1日より、相続登記の申請が法律上の義務となりました。また、2026年4月からは住所変更登記等も義務化され、不動産の所有者情報を明確にするための法改正が続いています。

  • 遺産分割協議がまとまったら速やかに相続登記を行い、誰がどの財産を取得したかを明確にする
  • 遺産分割がスムーズに行われない状態(未分割)が続くと、各相続人の税額確定や納税管理が曖昧になり、結果として滞納やトラブルの原因を生むことになります

まとめ:トラブルを防ぐために弁護士や専門家に相談を

相続税の連帯納付義務は、誠実に納税を済ませた人にとっても大きな負担となり得る法制度です。特に、兄弟仲が良くない場合や、他の相続人の経済状況に不安がある場合には注意が必要です。

万が一、税務署から他の相続人の滞納に関する通知が届いた場合や、事前の相続対策としてトラブルの芽を摘んでおきたい場合は、一人で悩まずに相続税に強い税理士や弁護士などの専門家へご相談ください。法的な権利を守りながら、安全かつ円滑に相続手続きを完了させましょう。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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