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「自筆証書遺言書保管制度」で法務局に預けられた遺言書も無効にできるか?

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

相続において、故人の遺志を尊重するために遺言書の作成は非常に重要です。2020年からは「自筆証書遺言書保管制度」がスタートし、法務局で安全に遺言書を保管してもらえるようになりました。

しかし、法務局に預けられた遺言書であっても、その内容や作成時の状況に問題がある場合は無効にできるのでしょうか? 結論から申し上げますと、法務局で保管されている遺言書であっても、裁判によって無効にすることは可能です。

この記事では、法務局による保管制度の仕組みと、保管された遺言書が無効になる理由について詳しく解説します。

法務局に預けた自筆証書遺言は無効にできるのか?

Q 法務局に保管された自筆証書遺言は、無効訴訟を起こして無効にすることができますか?
A はい、可能です。法務局の保管制度は形式的な要件を確認するだけであり、遺言書作成時の遺言者の意思能力(判断能力)までは厳格に審査しないため、後から裁判で無効を争うことができます。

自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に遺言書を預けた場合、「公的な機関が認めた有効な遺言書なのだから、もう覆すことはできないのではないか」と考える方が少なくありません。

しかし、法務局の担当官が行うのは、あくまで民法が定める形式的要件を満たしているかどうかの確認のみです。そのため、法務局で保管されているという事実自体が、遺言の法的な有効性を完全に保証するものではありません。

法務局がチェックするのは形式面のみ

法務局で遺言書を保管してもらう際には、申請時に厳格な形式チェックが行われます。

具体的には、以下のような点を確認されます。

  • 遺言書が自筆で書かれているか
  • 日付や署名、押印があるか
  • 所定の様式(用紙のサイズや余白など)に適合しているか

このように、外形的なルールに違反していないかは確認されますが、内容の妥当性や遺言者の精神状態について深く踏み込んで調査されることはありません。

意思能力の有無は審査されない

遺言書が法的に有効であるためには、作成時に遺言者が自分の行為の結果を弁識できるだけの精神能力、すなわち「遺言能力(意思能力)」を備えている必要があります。

認知症の症状が進行している状態や、意識が混濁している状態で書かれた遺言書は、本来であれば無効となります。しかし、法務局の窓口で保管申請を受け付ける際、医師の診断書の提出が義務付けられているわけではありません。

したがって、認知症を発症した後に作成された遺言書であっても、形式さえ整っていれば法務局に保管されてしまうのです。

保管済みの遺言書が無効となる主な理由

法務局に預けられた遺言書に対して無効確認の訴えを起こす場合、主に以下のような理由が争点となります。

1. 遺言能力(意思能力)の欠如

最も多い争点は、遺言書作成時の遺言者の精神上の障害に関する問題です。

高齢や病気により、自身の財産の状況や誰にどの財産を相続させるべきかを正常に判断できる状態ではなかったことが証明できれば、遺言能力の欠如を理由に無効と判断される可能性が高くなります

医療カルテや介護記録、ケアマネジャーの報告書、当時の様子を知る親族の証言などを集め、当時の判断能力を立証していくことになります。

2. 偽造や脅迫による作成

遺言者が自分の意思で書いたものではなく、第三者が無理やり書かせた場合や、文字を偽造したような場合も無効となります。

法務局への申請は本人出頭が原則ですが、巧妙な誘導や脅迫によって本人の意思が抑圧されていたケースでは、「真意に基づかない遺言」として無効訴訟の対象になります

遺言書の無効を主張するためのステップ

法務局に保管されている遺言書の内容に納得がいかず、無効を主張したい場合は、感情論ではなく客観的な証拠に基づく法的な手続きが必要です。

遺言書情報証明書の取得と調査

まずは、法務局に対して「遺言書保管事実証明書」の請求や「遺言書情報証明書」の交付請求を行い、実際の遺言書の内容を確認します。どのような財産配分になっているか、不自然な点がないかを細かくチェックします。

話し合い(遺産分割協議・調停)から訴訟へ

遺言書の有効性について相続人間に争いがある場合、まずは当事者間での話し合いや、家庭裁判所での遺産分割調停が行われます。しかし、遺言の有効性そのものが争点となる場合は、調停での解決が難しいため、地方裁判所への「遺言書無効確認請求訴訟」を提起することになります。

訴訟では、遺言書作成当時のカルテや日記、介護記録などから、遺言者に十分な意思能力があったかどうかが厳密に審理されます。

まとめ

「法務局に預けられたから絶対に有効だ」という誤解は禁物です。法務局はあくまで形式的な保管場所であり、作成時の遺言者の意思能力までは審査していません

もし、認知症が進行している中で作成された疑いがある遺言書や、特定の人物に不自然に誘導されて書かれた遺言書が法務局に保管されている場合は、泣き寝入りせずに弁護士などの専門家に相談し、無効確認の手続を検討する余地があります

遺言書の効力を巡るトラブルは証拠収集が鍵となりますので、お早めにご相談ください。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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