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相手が調停調書の取り決めを守らない時の「履行勧告・履行命令(家裁)」

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

家庭裁判所の調停でせっかく合意に至り、「調停調書」を作成したにもかかわらず、相手がその取り決め(養育費や財産分与の支払いなど)を守ってくれないというケースは少なくありません。

約束を破られた側としては強いストレスを感じ、「また裁判をし直さなければならないのか」と不安になることでしょう。しかし、調停調書には法的効力があり、裁判を起こさなくても相手に履行を促す制度が用意されています。

今回は、家庭裁判所から相手へ「取り決めを守れ」と働きかけてもらえる「履行勧告」「履行命令」について、その仕組みと手続きの流れを分かりやすく解説します。

調停調書の取り決めを守ってもらえない時の解決策

Q 相手が調停調書の約束を守らない場合、どのような方法で解決できますか?
A 家庭裁判所に申し立てることで、費用無料の「履行勧告」や、より強いプレッシャーをかける「履行命令」を利用して、相手に取り決めを守るよう促すことができます。

調停調書は、裁判の確定判決と同じ強い法的効力(債務名義)を持ちます。そのため、約束が破られた場合には、家庭裁判所に申し出ることで相手にプレ圧力をかけることが可能です。

代表的な手段として、「履行勧告」「履行命令」という2つの制度があります。どちらも家庭裁判所が主体となって動いてくれますが、手続きの手軽さや法的な強制力には違いがあります。それぞれの特徴を正しく理解し、状況に応じた使い分けを検討しましょう。

履行勧告とは?(費用無料で使える手軽な制度)

履行勧告は、調停調書などの内容を守らない相手に対し、家庭裁判所が「取り決め通りに義務を履行するように勧告(促す)する」制度です。

  • 費用の負担:無料(切手代などの実費がかかる場合もありますが、基本的に費用はかかりません)
  • 申し立ての方法:電話や窓口での口頭、または簡単な書面で行うことができます
  • 特徴:裁判所が「話し合いの継続」の延長として、相手に電話や書面で注意を促してくれます

最大のメリットは、手続きが非常に簡単で費用がかからない点です。弁護士に依頼せずとも、自分で申し立てを行う人が多くいます。

履行勧告のデメリットと注意点

非常に便利な履行勧告ですが、万能ではありません。以下の点に注意が必要です。

  • 法的な強制力がない:履行勧告はあくまで「勧告(お願い・注意)」に過ぎません。そのため、裁判所から連絡を受けても相手が無視し続けた場合、裁判所が強制的に相手の財産を差し押さえることはできません
  • 対応のスピード:裁判所の混雑状況によっては、申し立てから実際に相手へ連絡がいくまでに数週間かかることもあります。

相手が「うっかり忘れていた」「少しお金に余裕ができたから、裁判所から言われれば払うだろう」という場合には、この履行勧告が非常に有効に働きます。

より強いプレッシャーをかける「履行命令」

履行勧告に従わない相手に対しては、さらに一歩進んだ「履行命令」の申し立てを検討します。

履行命令とは、家庭裁判所が一定の期日を定めて、金銭の支払いなどの義務を履行するよう「命令」する制度です。

  • 法的根拠:家事事件手続法に基づき、裁判所が正式に出す命令です
  • ペナルティの存在:正当な理由なくこの履行命令に違反した場合、10万円以下の過料(金銭的な罰則)というペナルティが科される可能性があります

履行勧告よりも心理的なプレッシャーがはるかに大きいため、「履行勧告を無視する相手」や「悪質に支払いを拒む相手」に対して効果的です。ただし、履行命令を出すためには、事前に相手の意見を聞く聴聞手続きなどが必要になるため、履行勧告に比べて手続きがやや厳格になります。

履行勧告・履行命令の手続きと注意すべきポイント

実際に家庭裁判所へ履行勧告や履行命令を申し立てる際の流れと、知っておくべきポイントを確認しておきましょう。

手続きの流れ

  1. 管轄の確認:調停が成立した(または審判があった)家庭裁判所へ連絡、または窓口に出向きます。
  2. 申し立ての実施:所定の用紙に必要事項を記入し、調停調書の写しなどを添えて提出します。(履行勧告の場合は電話受付が可能な場合もあります)
  3. 裁判所による審査と連絡:裁判所が内容を確認し、相手に対して電話や書面で勧告または命令を行います。

動かない相手には「強制執行」の検討も

履行勧告や履行命令を行っても相手が支払いに応じない場合、あるいは最初から財産を隠すような悪質な相手である場合は、これ以上の説得は難しくなります。

その場合は、裁判所を通じて相手の預貯金や給与、不動産などの財産を差し押さえる「強制執行(差押え)」の手続きへ移行する必要があります。2024年の相続登記義務化や近年の法改正により、不動産の差押えや財産開示手続のルールも変化しているため、相手が財産を持っていることが確実であれば、最初から強制執行を視野に入れることも重要です。

相手が約束を守らないと精神的にも大きな負担となりますが、泣き寝入りする必要はありません。まずは費用無料の履行勧告から、お気軽に家庭裁判所へ相談してみてはいかがでしょうか。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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