親御様が亡くなられた際、銀行口座の預貯金だけでなく、自宅のタンスや金庫から現金(タンス預金)が見つかるケースは少なくありません。
目に見える現金はそのまま分けられると考えてしまいがちですが、適切な手順で遺産分割を行い、正しく申告しなければ後々のトラブルや税務調査の対象になるリスクがあります。
本記事では、タンス預金や金庫の現金の特定方法から遺産分割協議書の書き方、税務調査対策まで詳しく解説します。
親の自宅で見つかった現金は遺産分割の対象になる?
親が残した現金は、たとえ自宅で保管されていたものであっても、紛れもなく故人の「遺産」です。
特定の相続人が「同居していたから」「仏壇の引き出しに入っていたから」という理由で勝手に持ち帰ってしまうと、他の相続人との間で深刻なトラブルに発展するおそれがあります。必ず相続人全員で正確な金額を把握し、遺産の分け方を決める話し合い(遺産分割協議)を行いましょう。
預金口座以外の現金の正確な特定方法
タンス預金や金庫の現金を適切に分けるためには、まず「正確な金額を把握する」ことが大前提となります。
相続が発生したら、以下の場所を入念に確認しましょう。
- 金庫の中やその周辺
- タンスや仏壇の引き出し
- 書斎の机の引き出し、本棚の間
- 衣類のポケットやバッグの中
見つかった現金は、その場で数えるだけでなく、必ずメモに残して証拠写真を撮影しておきます。誰がどこでいくら見つけたのか曖昧な状態にしておくと、後から「本当はもっとあったのではないか」と疑心暗鬼を生む原因になります。
見つかった現金の金額と保管場所を記録する
現金の全貌が明らかになったら、「現金一覧表」のようなメモを作成し、相続人全員で共有しましょう。
- 発見日時
- 発見場所(例:寝室のタンスの引き出し、リビングの金庫等)
- 金額
- 保管している人(代表して保管する相続人の氏名)
これらを明確にしておくことで、次のステップである遺産分割協議を円滑に進めることができます。
遺産分割協議書へのタンス預金の記載方法
現金は預貯金口座のように「〇〇銀行〇〇支店、口座番号〇〇」といった明確な特定情報がありません。そのため、遺産分割協議書に記載する際は少し工夫が必要です。
遺産分割協議書に不備があると、後々税務署から指摘を受けたり、他の財産も含めて協議書全体が無効になったりするリスクがあります。
記載漏れを防ぐための具体的な書き方
遺産分割協議書には、タンス預金や金庫の現金であることを明記した上で、誰がそれを相続するのかを記載します。
記載例としては以下の通りです。
- 相続人〇〇は、被相続人の自宅(住所地)において発見された現金金〇〇万円を相続する。
- 相続人〇〇は、被相続人の自宅金庫内に保管されていた現金金〇〇万円を取得する。
このように、「どこで発見された」「いくらの現金か」を特定できる表現を用いることが重要です。
預貯金と合わせた分け方のポイント
現実は、現金だけでなく故人の銀行口座にある預貯金も一緒に分けることがほとんどです。
全ての遺産を合計した総額をベースに、誰がどの財産をどれだけ取得するのかをバランスよく調整します。
- 長男は自宅の不動産とタンス預金を相続する
- 次男はA銀行の預貯金を相続する
このように、現金はそのままの形で移動できるため、他の遺産の価額を調整するための「調整弁」としても使いやすいという特徴があります。
タンス預金に対する税務調査対策
「自宅の現金だし、銀行に預けていないから税務署にはバレないだろう」と考えてしまうのは大変危険です。
税務署は、故人の過去の所得や生前の銀行口座の動き(大きなお金の引き出し履歴など)を徹底的に調査します。タンス預金は、相続税の税務調査において最も指摘されやすいポイントの一つです。
税務署はなぜタンス預金を見つけられるのか?
税務署は、被相続人の「過去数年分の預貯金口座の入出金履歴」を必ず確認します。
生前に不自然な高額の引き出し(例えば、定期預金を解約して数百万円を現金でした形跡など)があるにもかかわらず、その使い道が通帳に残っていない場合、税務署は「自宅に現金として隠されている(タンス預金がある)」と推測します。
この調査能力は非常に高く、申告漏れが発覚すると、本来の相続税に加えて重加算税や延滞税といった重いペナルティが課されることになります。
正しく申告するための注意点
税務調査で追徴課税などのトラブルを避けるためには、以下の点に注意してください。
- 生前の預金口座の動きを確認し、引き出された現金がどこにあるか追跡できるようにする
- 見つかった現金は隠さずに、すべての相続財産に含めて相続税の申告を行う
- 相続人同士で現金をこっそり分け合わない(いわゆる「財産隠し」にならないようにする)
近年は、2024年の相続登記義務化をはじめとする法改正など、国の財産管理・把握の目がより厳しくなっています。2026年4月には住所変更登記の義務化も控え、国全体で個人の資産管理の透明化が進んでいます。
現金であっても例外なく正しく申告し、クリーンな状態で相続を完了させることが何よりも重要です。
まとめ
親の自宅から見つかったタンス預金や金庫の現金は、見落としがちですが立派な遺産です。
勝手に分けてしまったり申告から漏らしたりすると、後々の遺産分割トラブルや税務署からの厳しいペナルティにつながるおそれがあります。
まずは正確な金額と保管場所を特定し、相続人全員で話し合った上で、遺産分割協議書に正しく記載しましょう。不安な点がある場合は、相続に強い専門家に早めに相談することをおすすめします。
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