相続放棄と相続土地国庫帰属制度の関係とは
親世代から受け継いだものの、利用価値のない遠方の土地や、管理に困る山林などを持て余すケースが増えています。近年注目されている「相続土地国庫帰属制度」を使えば、国に土地を引き渡せるのではないかと考える方も少なくありません。
しかし、そもそもその土地を「相続放棄」した場合、この国庫帰属制度は利用できるのでしょうか。結論から言うと、相続放棄をした者は同制度の申請人となることができません。本記事では、その理由や、放棄後の土地がたどる運命、そして類似の救済策である「相続財産清算人」との違いについて詳しく解説します。
相続放棄をした人が国庫帰属制度を使えない理由
相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たした上で国に土地を引き渡すことができる制度です。
ここで重要なのは、制度の申請ができるのは「土地の所有権を相続等により取得した人」に限定されているという点です。
民法上、相続放棄を行うと、その人は「初めから相続人ではなかったもの」とみなされます。つまり、相続放棄をした者は、問題となっている土地の所有権を一切取得していないため、国庫帰属制度を申請する前提となる「土地の所有者」の立場にありません。したがって、相続放棄をした後に自ら進んでこの制度を利用することは不可能なのです。
相続放棄した土地は最終的にどうなるのか?
「自分が相続放棄をすれば、土地の管理義務やトラブルから完全に解放される」と考えている方も多いでしょう。しかし、法律上は相続放棄をしても直ちに土地の手間がなくなるわけではありません。
2024年4月からは「相続登記の義務化」がスタートしており、不動産の権利関係を明確にすることが社会的により強く求められています。相続放棄をした場合、以下のプロセスをたどります。
- 次順位の相続人への影響
- 管理人選任までの管理継続義務
次順位の相続人への影響
自分が相続放棄をすると、相続権は次の順位の人(例えば、子どもから兄弟姉妹や甥・姪など)へと移っていきます。結果として、遠縁の親族が突然土地の管理問題に巻き込まれるトラブルが後を絶ちません。すべての順位の相続人が放棄を行った場合、はじめて誰も相続しない「相続人不在」の状態となります。管理人選任までの管理継続義務
民法第940条の規定により、相続放棄をした人であっても、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができる jusqu'à(至る)まで」は、自分の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない義務を負います。完全に手を放せるわけではない点に注意が必要です。土地清算人選任との比較
相続放棄をした後に、管理に困る土地をどうにかしたい場合、国庫帰属制度の代わりに検討されるのが「相続財産清算人(旧・相続財産管理人)」の選任申し立てです。
それぞれの特徴や違いを把握しておきましょう。
- 相続土地国庫帰属制度の利用要件
- 相続財産清算人の申し立て
相続土地国庫帰属制度の利用要件
土地の所有者が自ら申請し、審査手数料や10年分の管理費相当額の負担金を支払うことで、最終的に土地を国庫に帰属させます。ただし、建物がある土地や、一定の勾配・汚染がある土地などは申請が却下されます。相続財産清算人の申し立て
相続人全員が相続放棄をした場合や、そもそも相続人がいない場合に、利害関係人(債権者や特定受遺者など)や検察官の請求によって家庭裁判所が選任します。清算人は、被相続人の財産を調査・換価し、債権者への弁済などを行った後、残った財産を最終的に国庫に帰属させます。この手続きには予納金などの費用がかかるのが一般的です。まとめ:状況に応じた最適な選択を
「相続放棄」と「相続土地国庫帰属制度」は、どちらも厄介な不動産を手放すための有効な手段のように見えますが、法的な前提や利用できる立場が全く異なります。
相続放棄を選択した後に国庫帰属制度を利用することはできません。もし、親族間で誰がどのように土地を引き継ぐべきか、あるいは全員で放棄すべきか迷ったときは、自己判断で手続きを進める前に、相続問題に強い法律の専門家に相談することをおすすめします。現在の法改正や制度の要件を踏まえた上で、最もリスクの少ない解決策を導き出すことができます。
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