相続土地国庫帰属制度は生前贈与や売買で取得した土地でも使える?
近年、利用価値のない土地を国に引き取ってもらう手段として注目されている「相続土地国庫帰属制度」ですが、利用にあたっては厳格な要件が定められています。
なかでも多くの人が誤解しやすいのが、「誰が土地を取得したか」という点です。結論から言うと、この制度はすべての土地所有者が使えるわけではありません。制度の対象者に関する正確なルールを理解しておきましょう。
制度を利用できるのは「相続または遺贈」で土地を取得した人
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を抱えた相続人の負担を軽減するために作られた制度です。そのため、法律上、申請できる人は限定されています。
申請者として認められるケース
この制度を利用できるのは、原則として以下のケースに該当する人のみです。
- 相続によって土地の所有権を取得した相続人
- 遺贈(遺言によって特定の財産を譲ること)によって土地の取得をした受遺者(※法定相続人以外の第三者であっても、遺贈であれば対象に含まれます)
自分がこの条件に当てはまるかどうかは、登記簿謄本の原因欄を確認することで正確に把握できます。
共有名義の場合の注意点
相続人全員で土地を共有している場合、原則として「共有者全員が共同で」申請手続きを行う必要があります。
一部の相続人だけが勝手に申請することはできないため、他の相続人との協力が不可欠となります。話し合いがまとまらない場合は、制度の利用自体が難しくなる点に注意が必要です。
生前贈与や売買で取得した土地が対象外である理由
「自分も親から土地を譲り受けたから使えるだろう」と考えている方がいますが、生前贈与や売買によって取得した土地は、一切の申請ができません。これには明確な理由があります。
安易な制度利用を防ぐため
もし生前贈与された土地も対象にしてしまうと、税金対策や管理責任逃れのために、使えない土地をあらかじめ子どもへ生前贈与し、すぐに国庫に帰属させるという行為が横行する恐れがあります。
国が不要な土地を引き取るこの制度は、あくまでも「望まない相続によって、意図せず負担の大きい土地を背負ってしまった人」を救済するためのものです。そのため、自身の意思や事前の計画で購入・贈与された土地は、救済の対象外とされています。
所有者自身の責任原則
売買や生前贈与は、当事者間の合意によって自発的に行われる取引です。取得した時点でその土地の価値や管理コストを予測・判断できたはずであるため、管理責任を国に転嫁することは認められていません。
最新の法改正と周辺制度の動向にも注意
不動産の相続や管理をめぐる法制度は、近年大きな転換期を迎えています。
2024年4月からは、相続登記の申請が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を行わなければ過料(罰則)が科されることになりました。さらに、2026年4月には氏名や住所変更登記の義務化も控え、国はすべての所有者不明土地の把握に力を入れています。
こうした背景から、相続したものの使い道のない土地を手放す選択肢として「相続土地国庫帰属制度」の需要は高まっています。しかし、前述の通り、生前贈与ルートではこの受け皿を利用できません。
まとめ:生前贈与を検討する際は事前の出口戦略が不可欠
相続土地国庫帰属制度は、「相続または遺贈」で土地を取得した人にしか門戸が開かれていない制度です。
将来の負担を減らそうと、安易に生前贈与で土地を子供に引き渡してしまうと、かえって将来の選択肢を狭めてしまう結果になりかねません。生前贈与や売買を検討する段階から、その土地の将来の活用法や手放し方について、専門家を交えて慎重に計画を立てることが重要です。
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