遺言書を作成したものの、「特定の相続人から遺留分侵害額請求をされるのではないか」と不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた最低限の遺産取得分であり、これを侵害する遺言を残すと、将来的にトラブルに発展するリスクがあります。
しかし、法律で認められた正しい手法を用いれば、遺留分の割合を減らしたり、対象となる財産を圧縮したりすることが可能です。今回は、養子縁組や生前贈与を活用した、合法的な遺留分の生前対策について分かりやすく解説します。
養子縁組を活用して法定相続人の数を増やす
遺留分の割合は、相続人の構成によって法律で一律に定められています。この「法定相続人の数」を増やすことで、一人あたりの遺留分の割合(分母)を小さくするのが養子縁組を活用した対策です。
養子縁組が遺留分に与える仕組み
例えば、子供が1人いる方が「すべてを特定の支援団体や内縁の妻に遺したい」という遺言書を書いた場合、実子の遺留分は遺産全体の「2分の1」となります。
ここに養子を1人迎えた場合、法定相続人の数は「2人」になります。相続人が増えることで、総体的としての遺留分の割合自体は変わりませんが、各相続人が持つ遺留分の割合(分母)が変動し、実子の遺留分割合が「4分の1」に減少します。その結果、自由に処分できる財産の枠(自由財産枠)を広げることが可能です。
養子縁組を行う際の注意点
養子縁組は有効な手段ですが、以下の点に注意しなければなりません。
- 実子の遺留分が減る一方で、養子自身にも新たな遺留分が発生する
- 相続税法上の養子の人数制限(実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで)がある
- 遺産の分散や親族間の感情的なトラブルを招くおそれがある
特に、遺留分対策の目的があまりにも露骨である場合や、実質的な関係性がないケースでは、後々の遺産分割協議や裁判でトラブルになるリスクがあるため、専門家への相談が不可欠です。
生前贈与を活用した遺留分の圧縮
不動産や現金などの資産を生きているうちに譲渡する「生前贈与」も、遺留分対策の極めて有効な手段です。遺留分の計算基礎となる財産からあらかじめ除外、あるいは減額させることができます。
特別受益にならない一般贈与の活用
遺留分の計算において、相続開始前(亡くなる前)に行われた贈与は原則として「1年間」分しか算入されません(ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与などはこの限りではありません)。
したがって、計画的に長期間にわたって生前贈与を繰り返すことで、相続財産の総額そのものを減らすことができます。
- 毎年少しずつ現金を贈与する(暦年贈与の活用)
- 配偶者への居住用不動産の贈与(婚姻期間が20年以上の夫婦間の特例の活用)
- 子や孫への生活費や教育費の都度贈与
これらを適切に組み合わせることで、遺留分侵害額請求の対象となる財産を合法的に圧縮することが可能です。
生前贈与における注意点と最新の法改正
生前贈与を行う際には、近年の法改正や制度変更にも注意が必要です。
- 相続税の生前贈与加算期間の延長(段階的に3年から7年へ延長)
- 2024年4月に施行された相続登記の義務化に伴う、不動産の名義変更手続きの必要性
- 将来的な「所有不動産記録証明制度」の利用を見据えた資産管理
不動産を生前贈与する場合、登録免許税や不動産取得税などのコストもかかります。税理士や弁護士などの専門家に試算を依頼し、トータルでメリットがあるかを確認することが重要です。
相続法改正と所有不動産記録証明制度への備え
近年の法改正により、相続を取り巻くルールは大きく変化しています。2024年4月からは相続登記が義務化され、放置すると過料の対象となるなど、不動産の適正管理が厳格化されました。
また、被相続人が生前にどのような不動産を所有していたかを証明するための「所有不動産記録証明制度」も導入されています。生前対策として不動産を贈与したり、名義を整理したりする際には、これらの新しい法制度を正しく理解しておく必要があります。
生前贈与や養子縁組による遺留分対策は、一歩間違えると「相続人隠し」や「不公平な遺産分割」とみなされ、かえって深刻な骨肉の争い(争族)を引き起こす原因になりかねません。
当事務所では、ご依頼者様の家族構成や資産状況を詳細にヒアリングし、最も安全で確実なオーダーメイドの生前対策プランをご提案しております。遺留分に関するトラブルを未然に防ぎ、円満な相続を実現するために、ぜひ一度専門家へご相談ください。
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