成年後見人が選任された後に親族への贈与が認められない理由
親が認知症などで判断能力を失い、家庭裁判所によって成年後見人が選任されると、家族であっても親の財産を自由に動かすことはできなくなります。特に「孫への小遣い」や「親族の結婚祝い」といった、これまで家族間で行われてきた経済的な支援も、原則として「本人の財産維持」という観点から厳しく制限されます。なぜこのような厳しいルールがあるのか、後見制度の目的と法的根拠を詳しく解説します。
成年後見人の第一の使命は「本人の財産維持」
成年後見制度は、判断能力が不十分な本人を保護し、その生活と財産を守るための制度です。成年後見人には、本人の財産を減らさないように管理し、本人のためにのみ使用するという「善管注意義務」が課せられています。
この義務があるため、後見人は「本人のためにならない支出」を一切認められません。たとえ親族からの頼みであっても、本人の生活や療養看護に必要不可欠な支出以外は、すべて「財産の減少」とみなされます。
贈与が禁止される法的な理由
法律上の観点から見ると、孫への小遣いや結婚祝いは、本人にとっての「贈与」に該当します。贈与はあくまで「本人の意思」に基づくべきものであり、判断能力を失った本人が自らの意思で「孫にお金をあげたい」と考えることは困難であると法的に判断されます。
また、後見人が本人の財産を親族に分与することは、「本人の財産の私的流用」と疑われるリスクを伴います。万が一、後見人が本人の財産を減らしたとみなされれば、後見人は損害賠償責任を問われる可能性すらあるのです。
過去の習慣や「情」は通用しないのか
「以前は毎年お年玉をあげていた」「親も生前は孫を可愛がっていた」といった事情を主張するケースは非常に多いですが、残念ながら成年後見制度において「情」は優先されません。
たとえ本人に十分な資産があったとしても、後見人が独断で贈与を行うことはできません。もし、どうしても支出が必要な特別な事情がある場合には、後見人が家庭裁判所に事情を説明し、個別に許可を得る手続きが必要となります。しかし、単なるお小遣いやお祝いといった目的では、許可が下りることは極めて稀です。
財産管理の透明性が求められる時代
近年、相続や成年後見の現場では、財産管理の透明性がより一層重視されています。特に2024年4月からの相続登記の義務化や、将来的な不動産関連の法改正など、国全体で「個人の財産を明確に管理する」という意識が高まっています。
後見人は、年に一度、家庭裁判所に対して財産目録や収支状況を報告する義務があります。この際、使途不明金や、本人の生活に不要な支出(贈与など)が発覚すれば、裁判所から厳しく指摘を受けます。
後見人が注意すべき支出の例
- 親族への誕生日プレゼントや結婚・出産祝い
- 孫の入学祝いや学費の補助
- 親族旅行の費用負担
- 本人名義の不動産の無償貸与や処分
上記のような支出は、たとえ家族であっても「本人の財産を不当に減らしている」と判断される可能性が高い項目です。後見人を選任する際は、このような制約があることを家族全員で十分に理解しておく必要があります。
もし贈与を継続したい場合はどうすべきか
成年後見制度を利用しながら、どうしても孫への支援などを継続したい場合は、以下の点に注意してください。
- 後見人の判断に任せる: 後見人は裁判所の監督下にあるため、個人的な感情で支出を決定することはできません。後見人に対する無理な要求は控えましょう。
- 本人の生活費を優先する: まずは本人の介護費用や医療費、生活費が十分に確保されていることが大前提です。
- 専門家へ相談する: 複雑な事情がある場合は、後見人を選任する前の段階で、弁護士などの専門家に相談し、将来の財産管理の方針を検討することをお勧めします。
結論として、成年後見人が選任された後は、「本人の財産は本人のためだけに使う」というルールを徹底する必要があります。家族間での経済的な助け合いは素晴らしいことですが、法律という枠組みの中では、公平かつ厳格な管理が求められることを忘れないでください。
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