亡くなった方が生前、友人にまとまったお金を貸していたという事実が発覚した場合、その「貸付金」は相続財産(プラスの遺産)として、相続の対象になります。
しかし、銀行などの金融機関からの借入とは異なり、個人間の貸し借りでは契約書が残っていないケースも少なくありません。適正な手続きを踏まなければ、貸したお金を回収できなくなる恐れがあります。
ここでは、被相続人が無担保の個人間貸付を残していた場合の適切な対処法と、証拠の集め方について詳しく解説します。
個人間貸付の有無と返済請求における重要なポイント
被相続人が残した個人間貸付を回収するためには、まず「本当にお金を貸したのかどうか」を法的に立証する証拠を集める必要があります。無担保の口頭約束だけでは、相手が借金を否定した場合に回収が極めて困難になるためです。
貸付金を立証する主な証拠
お金を貸し付けた事実を証明するためには、以下のような客観的な資料を探します。
- 被相続人の署名・捺印がある手書きの借用書(金銭消費貸借契約書)
- 銀行口座の預金通帳履歴(実際にまとまった金額が相手の口座に振り込まれている事実)
- スマートフォンに残されたLINEやメールのやり取り(「いつまでに返す」「待ってほしい」などの文面)
特に、昨今では紙の借用書がないケースも増えていますが、LINEの履歴や銀行の振込記録があれば、有力な補助証拠として貸付の事実を主張できる場合があります。
手書きの借用書やLINE履歴がない場合の対応
「借用書が見当たらない」「スマホの履歴も消去されている」という場合でも、諦めるのはまだ早いです。次のような状況証拠から立証を試みます。
銀行口座の入出金履歴の精査
被相続人の通帳を記帳し、あるいは過去の取引履歴を取り寄せます。定期的に一定額が引き出され、同じ相手の口座へ継続的に振り込まれている、あるいは逆に相手から「利息」名目で少額の入金がある場合は、貸付の強力な裏付けとなります。
メモや日記、手帳の確認
被相続人が遺した日記やメモ帳に、貸付金額や返済期日に関する覚書が残されていることがあります。これらは直接的な契約書にはならないものの、事実関係を推認させる資料として活用できるケースがあります。
債務者(友人)への返済催告と法的手続きの流れ
貸付の証拠が揃ったら、次は実際の回収に向けたアクションを起こします。相続人の勝手な判断で感情的に取り立てを行うと、トラブルに発展するリスクがあるため、冷静かつ法に則った手順で進めましょう。
1. 内容証明郵便による返済催告
まずは、相続人全員の合意または遺産分割協議に基づき、債務者である友人に向けた内容証明郵便を送付します。内容証明郵便には、以下の内容を明確に記載します。
- 被相続人が死亡し、自分が相続人として債権を相続したこと
- 貸付金の総額および残高
- 指定した期日までに一括(または分割)で返済を求めること
内容証明郵便を送ることで、時効の完成を猶予させる法的効果(催告)が生まれるほか、相手に対して「本気で回収する意思がある」ことを示すことができます。
2. 時効の管理に注意する
個人の貸付金には消滅時効が存在します。原則として、最後の返済期日から一定期間(民法改正前の借入であれば10年、改正後は権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年)が経過すると、相手が「時効の援用」を主張した場合、返済を請求できなくなります。時効期間が迫っている場合は、早急な法的措置が必要です。
3. 話し合いがつかない場合の法的手段
内容証明を送っても相手が無視する、あるいは「もらったお金だ」「すでに返した」と主張して支払いに応じない場合は、次のような裁判所を介した手続きを検討します。
- 支払督促:裁判所を通じて債務者に支払いを命じてもらう手続き
- 民事調停:裁判所の調停委員を交えて話し合いによる解決を目指す手続き
- 少額訴訟・民事訴訟:裁判を起こし、判決や和解によって強制的な回収を図る手続き
個人間貸付の回収は、法的な知識や証拠の評価が不可欠です。相手との交渉が難航している場合や、証拠が十分にあるか不安な場合は、泣き寝入りする前に相続問題に強い弁護士などの専門家へ早めにご相談ください。
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