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使い込みの「時効」は何年?
不法行為(3年/5年)と不当利得(10年)の違い

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

相続財産の使い込みが発覚したとき、多くの相続人が直面する深刻な問題が「時効(消滅時効)」です。家族の誰かが勝手に故人の預金を引き出していたとしても、法的な手続きを行わずに時間が経ってしまうと、せっかくの財産を取り戻せなくなる恐れがあります。

使い込みに対する返還請求権の時効は、どのような法的根拠に基づいて請求するかによって期間が異なります。今回は、不法行為と不当利得における時効の違いや、起算点の考え方について詳しく解説します。

遺産の使い込みにおける時効の仕組みと請求根拠

Q 遺産の使い込みにおける時効は何年ですか?不法行為と不当利得の違いを教えてください。
A 【請求根拠による時効の違い】遺産の使い込みに対する返還請求の時効は、請求の法的根拠によって異なります。加害者の行為を「不法行為」として損害賠償請求する場合は、損害と加害者を知った時から3年(または不法行為の時から5年)で時効となります。一方、法律上の原因なく利益を得たとして「不当利得返還請求」を行う場合は、権利を行使できる時から10年が時効となります。
【注意点と弁護士への相談】起算点の判断や証拠集めは複雑であり、時間が経過するほど立証が困難になります。「使い込みかも」と発覚した段階で、時効が成立する前に速やかに弁護士などの専門家へ相談し、内容証明郵便の送付や法的措置を検討することが重要です。

遺産の使い込みが発覚した場合、被害を受けた相続人は使い込んだ人物に対して、失われた財産の返還や損害賠償を請求できます。しかし、民法では権利を行使しない状態が一定期間続くと、その権利が消滅する「消滅時効」が定められています。

どのような理由で請求するかによって適用される時効が異なるため、正確な法的性質を理解することが重要です。

不法行為に基づく損害賠償請求の時効

他人の財産を勝手に使い込む行為は、民法上の「不法行為」に該当します。この不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は、以下の2つの条件のいずれか早い方が経過することで成立します。

  • 被害者が損害および加害者を知った時から3年
  • 不法行為の時から5年(※人の生命または身体を害する不法行為以外の場合)

「損害および加害者を知った時」とは、単に「お金が減っている気がする」という段階ではなく、誰がどのような不正を行ったのかを具体的に認識した時点を指します。そのため、使い込みの発覚が遅れると、あっという間に3年の時効が迫ってくる危険性があります。

不当利得返還請求の時効

もう一つの法的根拠が、法律上の原因なく他人の財産によって利益を得たとして請求する「不当利得返還請求」です。遺産の使い込みにおいても、この不当利得として返還を求めることができます。

不当利得返還請求権の時効は、以下の期間です。

  • 権利を行使することができることを知った時から5年
  • 権利を行使することができる時から10年

不法行為に比べて時効期間が長く設定されているため、発覚から時間が経過していても請求できる可能性が残されます。実務上は、不法行為と不当利得の双方の請求権を検討し、有利な方を選択して請求を行うことが一般的です。

時効を止める(完成を猶予・更新する)方法

時効が迫っている場合や、相手と話し合いが平行線をたどっている場合は、時効の進行をストップさせる法的措置を取る必要があります。民法改正により、現在は「時効の完成猶予」および「更新」という制度に整理されています。

主な方法は以下の通りです。

  • 催告(内容証明郵便など):裁判外で請求の意思表示を行うことで、6ヶ月間時効の完成が猶予されます。ただし、催告を行えるのは一時的な措置であり、この期間内に次の法的アクションを起こす必要があります。
  • 裁判上の請求(訴訟・調停など):裁判所に訴えを提起したり、遺産分割調停を申し立てたりすることで、時効の進行が止まります(完成猶予)。訴訟等が続いている間は時効は進まず、判決などが確定すれば時効はリセットされます(更新)。
  • 承認:相手が使い込みの事実や返還義務を認める発言をしたり、一部でも返済を行ったりした場合、時効は更新されます。

特に「催告」は手軽に見えますが、6ヶ月の猶予期間の間に訴訟などの本格的な手続きを行わなければ、時効の完成を防ぎきれません。

近年の法改正と不動産の使い込みへの影響

遺産の対象は現金や預貯金だけでなく、不動産などの実物資産も含まれます。近年、相続をめぐる法制度は大きな変化を迎えています。

2024年4月からは相続登記の申請が義務化され、さらに2026年4月からは住所変更登記の義務化もスタートします。これらは直接的な金銭の使い込みとは異なりますが、不動産を勝手に売却されたり、名義を書き換えられたりといった不正があった場合、放置すると所有権を取り戻すための法的ハードルがさらに高くなります。

また、所有不動産記録証明制度なども整備される中、権利関係の調査や時効の管理はより厳格に行う必要があります。

まとめ:使い込みの発覚後は迅速な専門家への相談を

遺産の使い込みにおける時効は、不法行為であれば「知った時から3年(または5年)」、不当利得であれば「10年」と定められていますが、個別の事案によってどちらの時効が適用されるか、また起算点をどこに置くべきかの判断は非常に複雑です。

「いつから使い込みを知っていたか」「時効のタイムリミットはいつか」を正確に見極めないと、本来取り戻せるはずの財産を失う結果になりかねません。時効の完成が迫っている場合や相手が話し合いに応じない場合は、法律の専門家である弁護士に早めにご相談ください。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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