判例(訴訟上の和解について錯誤が成立すると主張し、原告が期日指定の申立てをした。訴訟が再開されて、①訴訟上の和解に錯誤が認められるか。そして、②錯誤が認められるとして、本案の争点をどのように審理すべきか、という形で審理が進められた。)
2026/06/04 更新
このページを印刷訴訟上の和解
(1)裁判上の和解は、訴訟を終了させる合意(訴訟上の合意)と、私法上の和解契約(私法上の合意)の2つの背性質を有している。
(2)裁判上の和解が無効である、と主張するには、どのような要件が必要でしょうか。これは、裁判上の和解について既判力を認めるかどうか、が問題となります。
既判力が認められると、①判決主文に示された判断に反する主張は許されません。②裁判上の和解の無効を主張するには、民事訴訟法338条1項の事由がある場合に再審の手続きが必要となります。
| 既判力とは、確定判決が後日の訴訟に及ぼす拘束力です。既判力の作用としては、後日の訴訟にて、当事者が、訴訟物たる権利又は法律関係の存否について争えないこと(消極的作用)と、後日の訴訟にて、裁判所が訴訟物たる権利又は法律関係の存否について矛盾した判断ができないこと(積極的作用)です。 |
既判力の肯定説
(1)民事訴訟法267条は、訴訟上の和解も確定判決と同様の効力を持っている、と規定されている。
(2)実務上、訴訟上の和解には、裁判所が関与して、事案の妥当性を検討したうえで解決がされており、判決と同様の手続保障がされている。
| 民事訴訟法267条 和解調書等の効力 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。 |
既判力の否定説
(1)訴訟上の和解は、紛争を早期に解決したい等の当事者の意思によって、紛争を解決したものであり、判決と同様の手続保障がされていない。
(2)訴訟上の和解は、紛争を早期に解決したい等の当事者の意思によって、紛争を解決したものであり、その意思に無効・取消原因がある場合には取り消しが認められるべきである。
制限的肯定説
(1)判例は、制限的肯定説を採用する。
(2)訴訟上の和解には既判力を認める。しかし、訴訟上の和解について瑕疵(錯誤、詐欺、脅迫、無権代理)等による無効や取消しを主張することも認める。
(3)例えば、訴訟上の和解によって訴訟が終了した後に、和解の対象(争点)の前提となっている事実について錯誤があるとして、期日指定の申立てがされれば、審理を再開して、「和解の対象(争点)の前提となっている事実に錯誤あるのか。」と「仮に錯誤がある場合には、争点ついてどのような判断をすべきか。」審理されることになります。
訴訟上の和解について無効を主張する方法
訴訟上の和解について錯誤を主張する方法としては以下の方法が考えられます。
| (1)訴訟の再開を求めて、和解をした裁判所に期日指定を申し立てる方法 (2)和解無効の別訴を申し立てる方法 (3)請求異議の訴えで、和解調書に基づく強制執行の不許を求める方法(民事執行法35条) |
広島地判令和7年3月26日判例タイムズ1543頁
1 事案
(1)がれきの撤去費用が1700万円であるとの前提で、被告が1700万円を支払う訴訟上の和解が成立した。
(2)しかし、撤去費用が2320万円かかることが分かった。
(3)原告は、訴訟上の和解について、和解の対象(争点)の前提となっている事実について錯誤があると主張して、期日指定の申立てをした。
(4)訴訟が再開されて、①訴訟上の和解に錯誤が認められるか。そして、②錯誤が認められるとして、本案の争点をどのように審理すべきか、という形で審理が進められた。
2 解説
(1)和解は互譲で成立するものであり、争点については、結論の適否をおいておいて解決する趣旨で和解がされる。
(2)錯誤が成立するのは、和解の対象(争点)の前提となっている事実について錯誤がある場合に限られる。
(3)本件では、がれきの撤去費用が1700万円程度であるとの共通認識のもとに和解が成立していたため、錯誤が認められた。






