判例(補足意見ではあるものの、不貞行為についての審理の手順が最高最判として示された。)
2026/06/07 更新
このページを印刷最判令和8年6月5日
(1)多数決意見では、個人事情として、不貞行為に基づく不法行為の損害賠償について、故意の有無に審理し直すように、原審に差し戻しました。
(2)補足意見において、不貞行為についての審理の手順が示された。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96060.pdf
補足意見
(1)多数の裁判官の賛成によって決定される「多数意見」が判決の結論です。となります。
(2)補足意見は、多数決意見として公表するに至らなかった裁判官の一意見です。したがって、最高裁判決としての権威は持ちませんが、一裁判官の意見としては参考になります。
(3)逆に言えば、以下解決する補足意見としては、最高判決として出すまでは議論が固まっていないという結論でもあります。
尾鳥明裁判官の補足意見
尾鳥明裁判官の補足意見は以下のとおりです。
1 離婚慰謝料と不貞慰謝料の訴訟物は異なる
(1)離婚慰謝料とは、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、当該第三者が、単に不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がある場合に成立する。(最判平成31年2月19日民集73巻2号187頁)。
(2)離婚慰謝料と不貞慰謝料の訴訟物は異なる。
(3)既婚者であると知りながら肉体関係(性交渉)をすることは、他人の夫婦関係を棄損する行為であり、不法行為に基づく損害賠償請求を負う。これが不貞慰謝料です。
| なお、私見ではありますが、不貞慰謝料であっても、離婚に至った事実は、慰謝料の増額理由となるでしょう。 |
2 不貞慰謝料についての審理
(1)まずは、訴訟物の確認が必要です。離婚慰謝料と不貞慰謝料の訴訟物は異なります。
離婚慰謝料とは、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、当該第三者が、単に不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がある場合に成立する。
原告が離婚慰謝料のみを請求しているのであれば、上記の要件について審理します。
(2)次に、不貞慰謝料が問題となっているとすると、肉体関係(性交渉)があったか問題となる。
肉体関係(性交渉)が認定できなければ、不貞を理由とする慰謝料請求を棄却する。
(3)肉体関係(性交渉)が認定できる場合に、被告が婚姻関係の破綻を主張するのであれば、婚姻関係の破綻と、肉体関係(性交渉)とその前後関係が問題となります
夫婦の婚姻関係が破綻していること、その破綻が肉体関係(性交渉)の前であれば、不貞を理由とする慰謝料請求を棄却することになります。
(3)「夫婦関係が破綻していない。」もしくは、「夫婦関係が破綻しているが、その時期が不肉体関係(性交渉)の後だった」場合には、被告は故意過失を争うことが考えられます。
既婚者は、交際相手に対し、自らの夫婦関係は破綻していると説明することが多い。しかし、その説明を受けたからといって、安易にそれを信じたのであれば、過失が認められます。
したがって、被告は、夫婦関係が破綻しているかどうかについて調査を行い、かつ、どのような根拠で「夫婦関係が破綻している。」と信じたのか立証する必要があります。
この立証が成功した場合にも、不貞を理由とする慰謝料請求を棄却することになります。






