【試験の方法】リファレンスチェック、バックグランドチェックと法律問題
2024/08/10 更新
リファレンスチェック、バックグランドチェック
(1) 採用時に、候補者の人柄、能力を知るために、リファレンスチェック、バックグランドチェックを行うことが考えられます。
(2) リファレンスチェックとは、候補者から前職の上司や、同僚を紹介頂き、企業がその上司や同僚から候補者の評価を聞いて、採用の可否を判断する手法です。
(3) バックグランドチェックは、企業が専門業者に対し候補者の人柄、能力の調査を依頼することです。調査の対象は、前職での評判や、本人が公開しているSNSや、新聞記事等にも及びます。
リファレンスチェック、バックグランドチェックと法律上の問題
(1)調査を実施するということは、採用者の個人情報を収集することになります。また、調査会社に依頼する場合には、企業が調査会社に、最低限の情報(候補者の住所、名前、生年月日)を提供することになります。したがって、(企業が情報を習得すること、企業が専門業者に情報を提供すること、情報をどのように収集、利用するかについて)採用者の同意が必要になります。
(2)リファレンスチェックの場合には、候補者は企業に対し「この人に話を聞いてほしい。」という形になります。さらに、「企業が、候補者の紹介した人から候補者の評判を聞いて、採用の可否に使う」というプロセスも、候補者にとってイメージしやすくい(理解しやすい)ものとなっています。候補者の立場としても、前職の上司や同僚を紹介した事実からして、リファレンスチェックに同意したことを否定することは難しいでしょう。
(3)これに対して、(バックグラウンドチェックを含む)専門業者に調査を依頼する場合には、候補者の知り得ない方法で、候補者の反論する機会もなく、候補者の知らないところで不利益に判断される可能性がある点で問題があり、採用者から書面にて同意をもらうことが必要です。
採用手続とトラブル
(1)現実問題として、採用手続が違法であったとしても、それが問題になる可能性は低いといえます。
(2)不採用の理由を企業が候補者に伝えることはありません。採用されなかった人は、なぜ採用されなかった理由を知ることもなければ文句をいうことはありません。
(3)採用された人については、採用されたのですから文句の言いようがありません。
(4)もちろん、採用面接時の担当者の発言がSNSで炎上することはありえます。また、ブラックであると噂になれば企業は大ダメージを受けます。しかし、、採用手続そのものは問題になることはほとんどないのが現実です。
(5)しかし、採用すると解雇が難しいのが現実です。企業として、候補者の人柄、能力を見抜けなかったときのダメージの方がより大きいのは現実です。
リファレンスチェック、バックグランドチェックのタイミング
(1)リファレンスチェック、バックグランドチェックを行うことは、採用手続の最初の段階で説明しておくのが望ましいです。
候補者をしぼった後に、企業が調査を行うことを説明し、候補者が調査を拒否した場合には、最初から選考手続きをやり直す必要があるからです。
(2)調査にはコストがかかります。実際の調査そのものは、候補者を絞り込んだ後、最終選考の前に行うことになるでしょう。
(3)内定後、採用時の説明と、調査結果が違うからといって、内定の取り消しができるかは、その情報の重要度によりますので、弁護士等への相談が必要です。
参考
ビジネスガイド2024年8月号26頁以下