判例(請求異議の訴えを提起して、さらに、強制執行の停止を申し立て、これによって強制執行が停止された。請求異議の訴えの審理の結果、強制執行の停止を命じた判決が取り消された場合には、故意過失のある債務者は債権者が強制執行の停止によって被った損害を賠償する義務を負う。債務者の故意過失が推定される結果、債務者が強制執行の申立てをすべき相当な事情を立証しなければ、同損害賠償義務を免れない。)
2026/05/31 更新
このページを印刷請求異議の訴え
(1)請求異議の訴えは、弁済や相殺等により、既に判決等で記載された請求権が消滅して、判決等に記載された請求権と、実体法上の請求権が一致しない場合に、利用する手続です。
(2)請求異議の訴えを提起しても、強制執行は自動的に停止されない。強制執行の停止を求める場合には、別途申立てが必要です。
(3)請求異議の訴えを提起して、さらに、強制執行の停止を申し立て、これによって強制執行が停止された。請求異議の訴えの審理の結果、強制執行の停止を命じた判決が取り消された場合には、債務者はどのような責任をおうでしょうか。
最判令和7年9月9日民集79巻6号2652号 判例タイムズ1543号22頁
(1)請求異議の訴えを提起して、さらに、強制執行の停止を申し立て、これによって強制執行が停止された。請求異議の訴えの審理の結果、強制執行の停止を命じた判決が取り消された場合には、故意過失のある債務者は債権者が強制執行の停止によって被った損害を賠償する義務を負う。
(2)債務者の故意過失が推定される結果、債務者が強制執行の申立てをすべき相当な事情を立証しなければ、同損害賠償義務を免れない。
解説
1 民事訴訟と不法行為
最判昭和63年1月26日民集42巻1号1頁によれば、民事訴訟の訴えの提起であっても、提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる場合には不法行為責任を負います。
2 民事保全と不法行為
(1)民事保全について、債権者の故意過失が推定されます。したがって、債権者が相当な理由を立証しない場合には、債務者の損害を義務を負いまます。
(2)最高昭和43年12月24日民集22巻13号3428頁は、「仮処分命令がその被保全権利が存在しないために当初から不当であるとして異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情のない限り、申立人において過失があったものと推認するのが相当である。」と述べています。
3 本判決
(1)本判決では、本版判決で結果が出ており、請求異議の訴えの見通しについて調査可能であることや、強制執行の停止の申立ては債権者の選択であること考慮して、「最高昭和43年12月24日民集22巻13号3428頁」と同様の枠組みで判断することを明確にしたものです。
参考
判例タイムズ1543号22頁






