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2024年1月施行:相続時精算課税制度の改定「年110万円の基礎控除新設」の活用

【本記事の監修者】
弁護士 井上 正人(大阪弁護士会所属 / 登録番号:第43449号 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表弁護士)
※本記事は、遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄・不動産登記義務化等の相続実務経験に基づき、最新の民法および裁判所実務に沿ってわかりやすく解説しています。

2024年1月改定!相続時精算課税制度の新「110万円基礎控除」とは

Q 2024年の法改正で新設された相続時精算課税制度の「年110万円の基礎控除」とはどのような内容ですか?暦年贈与や従来制度との違いも含めて教えてください。
A 【制度の要点と基礎控除の仕組み】従来の累計2,500万円の特別控除に加え、年110万円までの贈与について贈与税の申告が不要かつ非課税となり、将来の相続税の課税対象への持ち戻しも不要となった点が最大の改正ポイントです。
【注意点と専門家への相談メリット】従来の使い勝手の悪さが解消され生前対策の選択肢として非常に有効になりましたが、暦年贈与の持ち戻し期間が7年間に延長された点なども踏まえ、個別の資産状況に応じた最適な選択を行うために相続に精通した弁護士や専門家に相談することをおすすめします。

2024(令和6)年1月1日以降の贈与より、生前贈与に関する税制が大きく変わりました。なかでも注目されているのが、「相続時精算課税制度」における年110万円の基礎控除の新設です。

従来の相続時精算課税制度は、累計2,500万円までの贈与について贈与税が非課税となる反面、少額の贈与であっても毎年の贈与税申告が必要であり、贈与した財産はすべて将来の相続税の計算時に持ち戻される(加算される)という使い勝手の悪さがありました。

しかし、今回の改正により、制度選択後であっても毎年110万円までは申告不要で非課税となり、相続財産への持ち戻しも不要となりました。これにより、生前対策の選択肢として非常に使いやすく、魅力的な制度へと進化しています。

従来制度や暦年課税との違い

生前贈与の課税方式には、「暦年課税(暦年贈与)」と「相続時精算課税制度」の2種類があります。今回の改定を踏まえ、両者の仕組みや違いを正しく理解することが重要です。

暦年課税(暦年贈与)の特徴と改正

暦年課税は、受贈者(受け取る人)1人につき年間110万円までの贈与が非課税となる制度です。ただし、2024年の税制改正により、死亡前のアセット持ち戻し期間(生前贈与加算)が従来の「3年間」から「7年間」へ段階的に延長されました。

そのため、相続開始直前の生前贈与によって相続税を節税することが困難になっています。

相続時精算課税制度の最新の仕組み

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ贈与する際に選択できる制度です。2024年以降の仕組みは以下のようになります。

  • 年間110万円以下の贈与:贈与税は非課税。申告不要で、相続時の持ち戻しもありません。
  • 年間110万円を超える贈与:超えた部分が累計2,500万円まで特別控除(非課税)となります。この超えた部分については、将来の相続時に贈与時の価値で相続財産に加算して精算します。

つまり、「年110万円の非課税枠」と「累計2,500万円の非課税枠」の二重構造になり、非常に使い勝手が向上しました。

暦年課税と相続時精算課税、どちらを選ぶべきか?

生前対策を進めるにあたり、どちらの制度を選択すべきかは個々の資産状況や家族構成によって異なります。

相続時精算課税制度が向いている人

次のようなケースでは、相続時精算課税制度の活用が非常に有効です。

  • 将来の値上がりが予想される財産を贈与したい場合 株式や再開発予定地の不動産など、将来価値が上がる資産を贈与する場合、相続時には「贈与時の評価額」で加算されるため、大幅な節税効果が期待できます。
  • 収益物件(賃貸アパートなど)を早期に引き継ぎたい場合 収益不動産を早めに子や孫へ贈与することで、将来得られる家賃収入が受贈者の資産となり、被相続人の相続財産の増加を抑えられます。
  • 毎年110万円以下の範囲でコツコツ贈与したい場合 暦年課税と違い、相続前7年間の持ち戻しルールがないため、何年前に贈与したものであっても年110万円以下であれば相続税の対象になりません。

暦年課税が向いている人

一方で、以下のような場合には引き続き暦年課税が適しています。

  • 孫や子の配偶者など、相続人以外の親族に贈与したい場合 相続人以外の第三者への贈与であれば、原則として暦年課税の7年持ち戻しルールの対象外となります。
  • 多くの人に長期間にわたって分散贈与したい場合 子供や孫が多数いる場合、受贈者ごとに年110万円の非課税枠が使える暦年課税の方が、全体としての節税額が大きくなるケースがあります。

相続時精算課税制度を利用する際の注意点

制度の利便性は大きく向上しましたが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。

1. 一度選択すると「暦年課税」に戻せない

相続時精算課税制度を選択するための「届出書」を税務署へ提出すると、同一の贈与者からの贈与については二度と暦年課税へ変更することはできません。将来的に暦年贈与に戻したくなっても不可能なため、長期的なシミュレーションが必要です。

2. 初回の手続きと110万円超の申告

制度を初めて利用する際は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

また、年間110万円を超える贈与を受けた年は、超えた部分について正しく贈与税の申告を行わなければなりません。

3. 小規模宅地等の特例との兼ね合い

相続時精算課税制度を使って宅地(土地)を贈与した場合、相続時に「小規模宅地等の特例(評価額を最大80%減額できる制度)」が適用できなくなるおそれがあります。土地の贈与を検討する際は、専門家への相談が不可欠です。

まとめ:最適な生前贈与の実行に向けて

2024年の税制改正により、相続時精算課税制度に「年110万円の基礎控除(申告不要・持ち戻しなし)」が新設され、使い勝手が劇的に向上しました。

しかし、暦年課税の持ち戻し期間延長(7年化)も含め、どちらの制度が適しているかは遺産の内容や法定相続人の構成、将来の資産推移によって異なります。間違った選択をすると、かえって税負担が増えてしまうリスクもあります。

ご自身の家庭に最適な生前対策・相続対策を進めるためにも、法務と税務の双方に精通した弁護士や税理士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人
(いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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