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長男の妻など親族による「特別の寄与(特別寄与料)」の金銭請求権

【この記事の監修者】

井上 正人 弁護士(大阪弁護士会所属 / 弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表)

家族のために長年尽くしてくれた長男の妻に、相続権がないのは不公平ではないか――。こうした長年の法的な課題を解決するため、民法が改正され、相続人以外の親族も故人に対して貢献した分の金銭を請求できる仕組みが誕生しました。

これが「特別の寄与(特別寄与料)」の制度です。本記事では、制度の要件や請求方法について、専門的な視点からわかりやすく解説します。

特別寄与料とは何か?制度の概要と基本知識

Q 長男の妻が被相続人を介護した場合、遺産をもらうことはできますか?
A 原則として長男の妻は法定相続人ではないため遺産を相続できませんが、「特別寄与料」の請求権を行使することで、相続人に対して金銭の支払いを求めることができます。

従来の相続法では、亡くなった人の介護に献身的に尽くしたのが「長男の妻」である場合、彼女は法律上の相続人ではないため、原則として遺産を受け取る権利がありませんでした。長男がすでに他界している場合などの例外を除き、妻の苦労が報われないケースが多く存在し、社会問題となっていました。

そこで、平成30年の民法改正により新設されたのが特別寄与料の制度(民法第1050条)です。これにより、相続人以外の親族であっても、被相続人の療養看護などに特別の寄与をした場合には、相続人に対して金銭の支払いを請求できるようになりました。

対象となる「相続人以外の親族」の範囲

この制度の対象となるのは、民法上の法定相続人以外の親族です。

  • 長男の妻(内縁の妻は含まれません)
  • 2親等以上の親族(甥、姪、祖父母など)
  • 3親等以上の親族(叔父、叔母など)

※配偶者や子、兄弟姉妹などの法定相続人は、この制度ではなく従来の「寄与分」を主張することになります。

特別寄与料が認められるための具体的な要件

誰もが簡単に請求できるわけではありません。特別寄与料が認められるためには、いくつかの厳格な要件を満たす必要があります。

1. 「特別の寄与」であること

単に同居していたり、通常の挨拶や世話をしていたりする程度では認められません。被相続人の療養看護(介護)や財産の維持・増加について、特別の貢献をしたと言える客観的な事実が必要です。

  • 無報酬またはそれに近い状態で、長期間にわたり手厚い介護を行った
  • 自分の費用を持ち出して、被相続人の財産管理や維持に多大な貢献をした

2. 無償性・継続性・専従性があること

介護等の寄与が、無償で行われていたこと(報酬を期待しないこと)が前提となります。また、その寄与が一時的なものではなく、ある程度の期間継続して行われていたことや、その労力が非常に大きかったことが求められます。

3. 相続財産の維持・増加に貢献したこと

結果として、被相続人の財産が維持されたり、減少が防がれたりしたという因果関係が必要です。

請求の手順と注意すべき期限(時効)

特別寄与料の請求は、原則として当事者間の話し合い(協議)から始まります。

  • 相続人との間で協議を行い、金額や支払方法を決定する
  • 協議がまとまらない場合や、相続人が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に対して「特別寄与に関する処分 の調停(または審判)」を申し立てる

ここで最も注意しなければならないのが、法律で定められた厳しい期限(消滅時効・除斥期間)です。

特別寄与料を請求できるのは、「相続の開始があったことを知った時(通常は被相続人が亡くなった日)から6ヶ月以内」、または「相続開始の時から1年以内」のいずれか早い方となります。この期間を過ぎてしまうと、権利が完全に消滅してしまうため、早めの行動が不可欠です。

近年の法改正と遺産分割・不動産登記における注意点

相続実務においては、2024年(令和6年)4月に施行された相続登記の申請義務化をはじめとする法改正にも注意が必要です。

特別寄与料の支払いが合意されたり審判が確定したりした場合、それは金銭債権となりますが、遺産の全体像や不動産の帰属が確定していないと、その後の手続きに支障をきたすことがあります。不動産が含まれる遺産分割協議を進める中で、特別寄与料の存在が発覚した場合、相続人間でのトラブルに発展しやすいため、専門的な調整が必要となります。

また、2026年4月には住所変更登記の義務化も控えており、相続に関連する権利関係や不動産の名義変更は、ますます迅速かつ正確な対応が求められる時代になっています。

まとめ:トラブルを防ぎ円満に解決するために

長男の妻などによる特別寄与料の請求は、故人に対する介護の苦労に報いるための正当な権利です。しかし、「どれほどの介護が特別の寄与にあたるのか」「いくら請求するのが妥当なのか」という点については、相続人との間で意見が対立しやすく、感情的なトラブルに発展するケースも少なくありません。

期限も「相続開始から6ヶ月」と非常に短いため、もし該当するご事情がある場合は、権利を失ってしまう前に、できるだけ早い段階で相続問題に強い弁護士などの専門家へご相談されることを強くおすすめいたします。

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弁護士 井上正人

この記事の監修

弁護士 井上 正人 (いのうえ まさと)

大阪弁護士会所属(登録番号:43449)
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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