Q 上訴の利益について教えて下さい。
2026/09/06 更新
上訴の利益
(1)上訴の利益は、原判決について不服を申し立てる利益です。
(2)不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っていれば上訴の利益が認められます(形式的不服説)。
最判昭和31年4月3日民集10巻4号297頁
(1)判決の理由だけの不服を理由とする上訴の利益は認められない。
(2)同判決は、上訴の利益は既判力が及ぶ範囲にしか上訴の利益が認められないことを示した判例である。
訴え却下判決と上訴の利益
(1)訴え却下判決では、訴訟要件の存否(裁判所が判断した事項に限る)について既判力が認められます。例えば、訴えの利益、当事者適格の存否の判断について既判力が及びます。(藤田広美「解析 民事訴訟 第2版」336頁、岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻」136頁)
(2)不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っていれば上訴の利益が認められます(形式的不服説)。
(3)訴え却下判決に対しては、原告のみならず、請求棄却を求めていた被告も上訴の利益を有する。(藤田広美「解析 民事訴訟 第2版」509頁)
相殺の主張と上訴の利益
(1)上訴の利益は、不服の申立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っているかで判断する(形式的不服説)。したがって、予備的な相殺の抗弁の主張で、請求棄却となった場合に、一審原告に上訴の利益を認めることができない。
(2)しかし、相殺の抗弁が認められた場合には、、裁判所が相殺によって自働債権が消滅したとする理由中の判断について既判力が生じ(民事訴訟法114条2項)不利益が発生する。したがって、相殺の成否が判断されたときには、例外的にその点にも上訴の利益が認められる。
| 形式的不服説では、予備的な相殺の抗弁の主張で、請求棄却となった場合に、一審原告に上訴の利益を認めることができない。相殺の成否が判断されたときには、上訴の利益が認められるのは、例外であると説明することになる。(越山和広「ロジカル演習 民事訴訟法 補訂版」222頁以下、藤田広美「解析 民事訴訟 第2版」386頁) |
| 上訴の利益と不利益変更禁止の原則の関係(私見) 1 原判決の分析 既判力は主文と、相殺が認容された場合にはその理由の判断に及ぶ(民事訴訟法114条)。 つまり、訴訟物なる請求権の存否と、相殺の自働債権の存否に呼ぶ.・・・① 2 不服申立て (1)不服申し立てと原判決を比べて原判決が申立てを下回っていれば上訴の利益が認められる(形式的不服説)。 (2)不服の申立て・・・②と、①を比べて、①が下回っていることが必要である。 (3)②不服申立は、①についての原告の請求が認められなかった部分である。 3 不利益変更禁止の原則 (1) 不利益変更禁止は、相手方の控訴または附帯控訴がない限り、自己の不服申し立ての範囲を超えて自己に不利益に第一審判決を変更されないという意味である。 (2)控訴審における裁判所の心証があるとする・・・③ (3)控訴審が、③の認定をしたいと思っていたとしても、①について②以外の部分以外を変更して張らない原則である。 |




