Q 令和6年度の司法試験の問題を教えて下さい。
2026/08/08 更新
[民事系科目]
〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は、35:35:30])
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
【事 例】
1.Aは、令和2年4月1日、その所有する建物(以下「本件建物」という。)をYに対して賃貸する旨の契約を締結し(以下「本件契約」という。)、本件契約に基づき本件建物をYに引き渡した。本件契約では、賃貸期間を契約日から3年間とすること、賃料は月額6万円を前月末日までに支払うこと、Yは本件建物を居住用建物として使用し、他の目的での使用はしないこと、Yが賃料の支払を怠ったとき又は前記使用目的に違反したときは、Aは催告を要することなく本件契約を解除することができることが定められた。
2.その後、Aは令和3年7月に死亡し、その子であるX1、X2及びX3(以下、併せて「Xら」という。)が遺分割協議をした。その結果、本件建物については、Xらがそれぞれ3分の1の持分で共有すること、本件契約については、Xら全員が賃貸人となること、本件契約の更新、賃料の徴収及び受領、本件建物の明渡しに関する訴訟上あるいは訴訟外の業務についてはX1が自己の名で行うことが取り決められた。
3.これを受けて、X1は、同年9月に本件契約の現状について調べたところ、同年6月から8月までの3か月分の賃料が支払われていないことが判明したことから、X1は、本件契約を解除して本件建物の明渡しを求める訴訟を提起しようと考え、X2及びX3にその旨を相談した。これに対し、X2及びX3は、Yに対して本件建物の明渡しを求めるとのX1の意向には賛成したが、自らが当事者となることは時間的・経済的負担が大きいことを理由に、X1単独で訴訟を提起してほしいと述べた。
以下は、X1から相談を受けた弁護士L1と司法修習生Pとの間の会話である。
L1:X1としては、できればX2及びX3と共同で訴訟を提起したいとの気持ちがあるようですが、それが難しいようなら、自分一人で訴訟を提起することもやむを得ないということでした。
そこで、X1のみが原告となって訴訟を提起する方法について検討してみましょう。
P:本件建物の明渡しについて、賃貸借契約の終了に基づく明渡請求権を訴訟物とした場合は、X1単独で訴訟を提起することができるのではないかと思います。
L1:固有必要的共同訴訟ではないということですね。それ以外に何かありませんか。
P:X1が自らの請求権について当事者となるだけでなく、X2及びX3の訴訟担当者としても関与するということでしょうか。本件では、X2やX3からの選定行為はないので、X1は選定当事者になることはできませんが、明文なき任意的訴訟担当とすることが考えられると思います。
L1:なるほど。それでは、まず、任意的訴訟担当の意義及びそれが明文なくして認められるための要件を説明してもらえますか。その要件の説明に当たっては、民法上の組合契約に基づいて結成された共同事業体を契約当事者とする訴訟について当該共同事業体の代表者である組合員の任意的訴訟担当を認めた最高裁判所昭和45年11月11日大法廷判決・民集24巻12号1854頁を踏まえるようにしてください。これを「課題1」とします。その上で、課題1における意義及び要件の説明を踏まえ、本件においてX1による訴訟担当が明文なき任意的訴訟担当として認められるかについて、検討してください。その際、本件と前記最高裁判例の事案との異同に留意するようにしてください。これを「課題2」とします。
〔設問1〕
あなたが司法修習生Pであるとして、L1から与えられた課題1及び課題2について答えなさい。
なお、以下に掲げる【事例(続き・その1)】及び【事例(続き・その2)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。
【事 例(続き・その1)】
4.X2及びX3はX1の説得に応じ、Xらはそろって弁護士L1にYに対する訴訟の提起等を委任した。これを受けて、L1は、令和4年1月24日、令和3年6月から8月までの3か月分の賃料の支払がないとして、催告することなく、同日をもって本件契約を解除する旨を内容証明郵便にてYに送付した。さらに、L1は、Xらを原告、Yを被告として、本件契約の終了に基づく本件建物の明渡しを求める訴え(以下、この訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)を提起した。
5.これに対し、Yは、弁護士L2に訴訟委任をした上、本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、「未払とされる賃料は全額支払済みである。無催告解除が認められるに足りる信頼関係の破壊の事実はない。」と主張してXらの請求を争った。
6.裁判所は、本件訴訟に係る事件を弁論準備手続に付すこととした。その際、前記3か月分の賃料の支払を示す書証が提出されていなかったことから、裁判官の示唆により、第1回弁論準備手続期日においては、賃料不払による無催告解除の可否に関して当事者間の信頼関係の破壊を基礎付ける事実関係の存否につき、当事者双方が口頭で自由に議論し、その結果を踏まえ、第2回弁論準備手続期日以降に準備書面を提出して具体的な争点を確定することとされた。
7.第1回弁論準備手続期日において、Yは、「令和3年10月以降、自分の妻が、本件建物において何回か料理教室を無償で開いたことがあった。X1は夫婦でその料理教室に毎回参加していたが、賃料の話など一切出なかった。」と話したところ(以下、Yのこの発言を「本件陳述」という。)、第2回弁論準備手続期日の前に、L1から、「Yによる本件建物の使用は本件契約において定められた使用目的に違反するものであり、賃料不払とは別の解除原因を構成するものであるところ、Yはかかる請求原因事実を自白したものであり、Xらはこれを援用する。」と記載
された準備書面が裁判所に提出された。
以下は、第2回弁論準備手続期日の前にされた、L2と司法修習生Qとの間の会話である。
L2:Yは、本件陳述はXらとの間の信頼関係が破壊されていないことを裏付ける事実として述べたにすぎないのに、このような形でXらが主張してきたのは心外であると怒っていました。
Q:私も、このような揚げ足取りの主張は許されないと思います。
L2:そうですね。第2回弁論準備手続期日においてXらの準備書面を陳述させるべきでないと主張することが考えられますが、裁判所が陳述を許すことも想定しておく必要があります。そこで、次善の策として、裁判上の自白は成立しない、又はこれが成立するとしても撤回が許されるとの主張を準備しておきましょう。この点について検討してもらえますか。検討に当たっては、まず裁判上の自白の意義及び要件に触れ、それを前提に、本件陳述がされた場面や当該手続の目的等を踏まえ、本件陳述について裁判上の自白が成立しないとの立場又はこれが成立するとしても撤回が許されるとの立場のいずれかを選択して論じてください。これを「課題」とします。
〔設問2〕
あなたが司法修習生Qであるとして、L2から与えられた課題について答えなさい。
なお、以下に掲げる【事例(続き・その2)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。
後記8以下においては、前記6及び7の事実は存在しないことを前提として、〔設問3〕に答えなさい。
【事 例(続き・その2)】
8.裁判所は、本件訴訟につき、令和5年4月に口頭弁論を終結し、Yが主張する賃料の支払は認められないものの、未払の期間及び本件契約の解除に至る経緯等からすれば、信頼関係が破壊されたとまでは認められないとして、Xらの請求を棄却するとの判決(以下「本件判決」という。)をし、本件判決は確定した。
9.その後、Yが、令和3年1月から令和5年1月までの間、本件建物において、株式投資に関するセミナー(以下「本件セミナー」という。)を有料で月一、二回の割合で開催していたことが判明した。そこで、Xらは、これが用法遵守義務違反に該当するとして本件契約を解除することができないかと考えるに至り、L1に相談した。
以下は、L1と司法修習生Rとの間の会話である。
L1:Xらとしては、本件訴訟では敗訴したが、本件訴訟とは異なる前記9の用法遵守義務違反を理由として本件契約を解除し、再度本件建物の明渡しを求める訴え(以下、この訴えに係る訴訟を「後訴」という。)を提起したいと考えているようです。所有権に基づく明渡請求権を訴訟物とすることも考えられますが、ここでは、賃貸借契約終了に基づく明渡請求権を訴訟物とすることを前提に検討してみましょう。
R:本件訴訟の訴訟物は賃貸借契約終了に基づく明渡請求権ですから、後訴も同一の訴訟物になります。そして、本件セミナーの開催は、いずれも本件訴訟の事実審の口頭弁論終結時(以下「基準時」という。)より前の事実であり、基準時後は開催されていないとのことですから、確定した本件判決の既判力が後訴に作用し、後訴は請求棄却となるように思います。また、解除権の行使は基準時後にされていますが、学説では、基準時後の解除権の行使の主張が既判力により遮断されないとするのは難しいとする説が強いということを授業で聞きました。
L1:そうですか。それでは、別の観点から検討してみましょう。Xらによれば、XらがYによる本件セミナーの開催に気付いたのは本件判決の確定後であったとのことですから、用法遵守義務違反を理由とする解除権の行使の主張は本件判決の既判力によっては遮断されないと考えることはできないでしょうか。
R:確かに、本件判決の既判力によって主張を制限してしまうのは、Xらにやや酷な気もします。
L1:ただ、Xらに酷というだけでは裁判所は受け入れてくれないと思いますので、そのための理論構成を考える必要があります。まず、既判力によって基準時前の事由に関する主張が遮断される根拠を考えてみましょう。そして、それを踏まえ、本件の具体的な事実関係に照らし、本件判決の既判力によって解除権行使の主張を遮断することが相当かどうかを検討してください。
これを「課題」とします。なお、結論はどちらでも構いませんが、検討に当たっては、自説と反対の結論を採る見解にも留意するようにしてください。
〔設問3〕
あなたが司法修習生Rであるとして、L1から与えられた課題について答えなさい。
なお、【事例(続き・その1)】に記載されている6及び7の事実関係は考慮しなくてよい。




