Q 令和5年度の司法試験の解答を教えて下さい。
2026/08/10 更新
設問1
第1
1 問題
(1)Yが無断でパソコンを閲覧して、そのメールを証拠提出した。
(2)このメールは違法収集証拠にあたるので、証拠能力が否定されないか。
2 違法収集証拠の趣旨と要件
(1)民事訴訟法では、違法に収集した証拠の証拠能力を否定する規定はない。しかし、当事者には誠実な訴訟活動が求められ(訴訟における信義則・民事訴訟法2条)、違法に収集された証拠は証拠能力が否定される。
(2)よって、①証拠の重要性と、②違法の程度を考慮して判断する。
3 違法収集証拠の要件とあてはめ
(1)①本件動産の売買は口頭でやりとりされているから、売買契約の存在を示す本件メールは唯一の証拠である。
(2)②Xは、必要なメールを取得したのではなく、関係な第三者の情報が入った大量の個メールを取得しており、Xのプライバーを大きく侵害する。
もっとも、メールにはいろいろなプライバシー情報が含まれるものの第三者が見ることを前提にその第三者に送るものであるから、プライバシー侵害の程度は低い。よって、本件メールには証拠能力が認められる。
設問2
第2
1 上訴の利益
(1)判決の理由だけの不服を理由とする上訴の利益は認められない。
(2)もっとも、相殺については、その成否が裁判所に判断された場合、裁判所が自働債権を不存在としたその理由中の判断について既判力が生じる(民事訴訟法114条2項)から、相殺の判断についての理由中の判断には、上訴の利益が認められる。
(3)原判決は、主文としては、「甲債権は存在する。」と判断する。
(4)加えて、原判決は、「乙債権と甲債権は存在したが、丙債権と乙債権は相殺により消滅する。」「乙債権を自働債権とする相殺の主張は認められない。甲債権は存在する。」という判断をしている。
裁判所は、相殺の抗弁について判断をしており、この理由中の判断にも既判力が生じるので、この範囲でも上訴の利益がある。
2 原告の不服申し立ての範囲
(1)本判決では、相殺を除くと、「甲債権は存在する(一審原告有利)」「乙債権は存在する(一審原告不利)」「丙債権は成立する(一審原告有利)」という判断をしている。
(2)つまり、これを控訴している一審原告であるXの不服申し立ての範囲は、「乙債権は存在する(一審原告不利)」に限られる。
3 不利益変更禁止の趣旨と定義
(1)控訴審は、控訴人の不服申立ての範囲でのみ、第一審を取消し変更できる(民事訴訟法304条) 。
(2)控訴審の審判対象も当事者が決めることができる(処分権主義)。不利益変更禁止の原則の根拠は、処分権主義である。
(3)不利益変更禁止は、相手方の控訴または附帯控訴がない限り、自己の不服申し立ての範囲を超えて自己に不利益に第一審判決を変更されないことである。
4 (ア)甲債権は弁済により消滅した、という判断をした場合
(1)控訴審の裁判所は、「甲債権は存在しない。」という判断をした。この場合、相殺の抗弁は他の抗弁が認められない場合に判断をするものであり、「乙債権、丙債権については判断しない。」ことになる。
(2)しかし、これは、「甲債権は存在する(一審原告有利)」という、一審原告にとって不利益に判断するもので許されない。
(3)控訴審は、原審判断を維持しなければならないので控訴を棄却しなければならない(民事訴訟法302条)
5 (イ)丙債権は存在しないという判断をした場合
(1)控訴審の裁判所は、「丙債権は存在しない。」という判断をした。
(2)しかし、これは、「丙債権は成立する(一審原告有利)」という、一審原告にとって不利益に判断するもので許されない。
(3)控訴審は、原審判断を維持しなければならないので控訴を棄却しなければならない(民事訴訟法302条)
6 (イ)乙債権は存在しないという判断をした場合
(1)控訴審の裁判所は、「乙債権は存在しない。」という判断をした。この場合、相殺の抗弁は他の抗弁が認められない場合に判断をするものであり、「丙債権については判断しない。」ことになる。
(2)しかし、これは、「乙債権は存在する(一審原告不利)」という、一審原告にとって利益に変更するものである。
(3)また、「丙債権は存在した。」という判断から「丙債権については判断しない。」ことになるが、これは一審原告にとって、一審から求めていた判断であるから、一審原告にとって不利益になるものではない。
(4)控訴審は、原審を取り消し(民事訴訟法305条)、「甲債権は存在する。乙債権については存在しない。丙債権については判断しない。」という判断を出せる状態ではあるので、自判しなければならない(民事訴訟法307条但書)。
設問3
第3 課題1
1 問題
(1)Zは保証人である。Yの主債務が存在すれば、実体法上、保証人としての義務を負うのが整合的である。
(2)例えば、主債務者と債権者との間で主債務の履行請求訴訟において、主債務者の勝訴が確定した。しかし、債権者が保証人に対し保証債務の履行請求をして、保証人が敗訴すれば主債務者に対し求償請求をすることは考えられ、主債務者は勝訴した意味がなくなるという問題がある。
(3)既判力は、当該確定判決に係る訴訟の当事者に限られるのが原則である。しかし、反射効として、Yの判決はZに及ばないか。
2 反射効
(1)反射効は、「実体法上、前訴の当事者の地位に依存する関係に立つ者に対し、既判力を及ぶ(反射効)」という考え方である。
(2)しかし、既判力の根拠は手続保障であり、訴訟に関与していない第三者に判決の効力を及ぼすことはできない。
(3)確かに、実体法の統一的解決が望ましい。しかし、例えば、主債務者が夜逃げしており、全く争わずに判決が確定することもありえために、手続保障の観点からは、訴訟に関与していない第三者に判決の効力を及ぼすことはできない。
(4)よって、反射効として、Yの判決はZに及ばない。
第4 課題2
1 問題点
(1)ZはYの訴訟に補助参加した。Yは敗訴した。Zは、補助参加の参加効として、Yの敗訴(主債務が存在する。)点について、争えないと主張できるか。
(2)通常、補助参加については、被参加者が参加人に効力が及ぼすものであり、逆に、参加人が主張することが許されるか。
2 補助参加の本質
(1)補助参加には参加的効力が認められる(民事訴訟法46条1項)。参加的効力の本質は敗訴責任の分配である。
(2)したがって、同じく敗訴した参加人Zが参加手効力を主張することが許される。
3 問題点
(1)補助参加の参加手効力は、争点について積極的に訴訟活動をした結果としての敗訴責任を負担すべきであるからである。Yは争点について積極的に訴訟活動をしたといえるか。
(2)Yとして、主債務を免れるために必要な訴訟活動をしている。また、Yとしては自己の訴訟戦術のために、Zの免責の主張を認めず、Zの尋問請求を却下している。
(3)Yとしては、主債務の存否について積極的な訴訟活動を行い、かつ、Zの免責の主張を認めなかったことについてYは責任を負うべきである。
ZとYの訴訟においてに、補助参加の参加効として、Yは、Yの敗訴(主債務が存在する。)点について争えない。
以上




