民事訴訟

令和4年度の司法試験の解答を教えて下さい。

2026/08/08 更新

設問1
第1 課題1
1 問題
(1)甲は、訴訟の被告となることを回避するため、名称を変更し、別会社である乙に甲と名乗らせた。
(2)Xは、乙を訴状等で被告として表示して訴訟を提起した。
(3)民事訴訟上の「当事者」たる被告は、甲なのか、乙なのか。
2 形式的当事者概念
(1)民事訴訟上の「当事者」は、実体法上の権利主体のことではない。訴状で記載された当事者のことである(形式的当事者概念)。
(2)本件では、実体法上の借主は甲であるが、訴状等で被告として表示されているのは、乙である。それでは、訴状の記載にしたがって、乙が被告だと判断すべきだろうか。
3 当事者の概念
(1)民事訴訟上の「当事者」は、原告の意思を合理的に推察して決めるべきである(意思説)という考え方がある。
 本件では、Xが訴状にて記載する賃貸借契約の借主は、甲であるから被告は甲である。
(2)民事訴訟法上の「当事者」は、訴状に記載された当事者(原告、被告)である(表示説)という考え方である。
  本件では、Zが被告となる。
(3)民事訴訟法上の「当事者」は、訴訟で当事者として活動したものである(行動説)という考え方もある。
 しかし、訴訟で活動したAは甲の実質代表者でかつ、乙の代表者であるから、行動説では決め手にならない。
4 当事者の概念その2
(1)もっとも、意思説については、事後的に当事者を判断することができるが、訴訟的の初期の段階では、被告が決められない。これは、不適切であるとされる。
 したがって、当事者とは、訴状に記載された当事者とするのが妥当である。
(2)乙を訴状等で被告として表示されており、被告は乙である。

第2 課題2
1 問題
(1)本件訴訟の被告は乙である。しかし、乙(乙の代表者であるA)が行った陳述に自白が成立するか。
(2)自白が成立するとして、真実と違うとして自白の撤回が認められるか。
2 裁判上の自白の要件
(1)裁判上の自白の成立要件は、①相手方の主張と一致すること、②口頭弁論または弁論準備手続における主張であること、③事実の主張であること、④自己に不利益な主張であることである。
(2)裁判上の自白が成立すると撤回できなくなる。
3 裁判上の自白のあてはめ
(1)被告が請求原因を認める陳述は、①②③を満たし、④自己が敗訴し、かつ、相手方が立証責任を負う事実を認めるものであり、不利益な主張である。
(2)被告が請求原因を認める陳述は、裁判上の自白が成立する。
4 裁判上の自白の撤回
(1)裁判上の自白が成立すると、当事者は、以下の場合を除いてこれを撤回できない(不可撤回効)。
 ①相手方の同意がある場合(最判昭34年9月17日民集13巻11号1372頁)
 ②刑事罰上罰すべき他人の行為により自白した場合(最判昭和36年10月5日民集15巻9号2271頁)
 ③自白が真実に反し、真実について錯誤があったときに限り、裁判上の自白を撤回できる(昭和25年7月11日民集4巻7号316頁)。
(1)確かに、賃貸人は乙ではなく自白は真実ではない。しかし、Aは、甲が訴訟の被告となることを回避するため、乙を設立させており、乙が甲でないことについて錯誤があるわけではない。
(2)その他①②③の要件を満たさず、真実と違うとして自白の撤回が認められない。

設問2
第3 
1 問題
(1)本件訴訟の被告は乙である。甲は乙を設立して、被告から逃れる積極的な隠匿稼働を行っている。
(2)Xは、本件訴訟において、甲を被告として追加できないだろうか。
2 最高昭和62年判決
(1)最判昭和62年7月17日民集41巻5号1402頁は、訴訟の継続中に当事者を追加する主観的併合については、民事訴訟法38条の要件を満たす場合でも認められない、とした。
(2)その理由は、①訴訟経済に資するととはいえないこと、②訴訟が複雑になること、③軽率な訴訟を誘発させる可能性があること、④訴訟の遅延になることです。
3 あてはめ
(1)仮に、主観的併合を認めなければ、Xは別訴を提起するだろう。その場合、甲と乙が実体的に一体であることや、甲が被告となることを逃れるために、乙を設立したことを考えれば、両訴訟は併合されるであろうし、甲として行った訴訟行為の結果に拘束されて、別訴でも、従前と異なる訴訟活動をすることは信義則上許されない。
(2)そうだとすれば、主観的併合を認める方が、そのまま訴訟を続けられるので、①訴訟経済に資するし、②被告が甲と乙に加わるだけでそのまま訴訟をするので訴訟は複雑にならないし、③被告が隠匿活動をした特殊な事案について例外を認めても、軽率な訴訟を誘発しないし、④そのまま訴訟活動をするのであれば、訴訟の遅延にもつながらない。
(3)結局、主観的併合を認めるか、新訴提起後の弁論の併合を認めるかは、結局、要件と効果は同じとなり、実質的な違いはない。
 主観的併合を認めれば、別訴提起の手間も省けるほか、本件では最高昭和62年判決の懸念も妥当しない。
(4)Xは、本件訴訟において、甲を被告として追加することができる。

設問3
第4 
 1 問題
(1)Zは、USBに入った文書のデータを提出しようとしている。
(2)同データが入ったUSBは、民事訴訟法231条の「情報示すために作成された物件で文書でないもの」として証拠調べをしてよいのか。
 2 文書
(1)文書は、作成者の意思が紙等の物理的な媒体に文字で記載されたものである。
(2)民事訴訟法231条は、「情報示すために作成された物件で文書でないもの」も文書と同じ過程を経て、取り調べを認めている。
(3)USBのデータは、物理的な媒体ではく、文書そのものではない。
(4)USBのデータは、プリントアウトすれば文書となる。
 USBのデータは、文書を作成したデータであるから、作成者の意思がそのまま記録されている。したがって、書証と同じ過程で審理すべきである。つまり、作成者の意向で作成されたことを立証できれば、その文書の内容どおり、作成者がその意思をもっていたことを推察するという経過を経て審理すべきである。
(5)以上より、USBのデータは、文書ではないが、文書として取り調べられるのが適切であるから、民事訴訟法231条の「情報示すために作成された物件で文書でないもの」に該当する。したがって、同条による取り調べが認められる。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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