民事訴訟

Q 令和4年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/08/08 更新

1 問題
(1)Xは権利能力なき社団である。Xが権利能力なき社団として原告として訴訟提起できるか。
(2)Xに権利能力があるのか。
(3)Xに権利能力があるとして、どのような方法で訴訟提起ができるか。
2 権利能力なき社団の定義と要件
(1)民事訴訟法29条の「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」の要件を満たす限りにおいて、当事者能力を認める。
(2)法人でない社団は、民法の権利能力なき社団と同じ概念である。権利能力なき社団は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいう(最判39年10月15日民集18巻8号1671頁参照)。
3 権利能力なき社団のあてはめ
(1)Xには、運営の規約が存在し、規約では多数決で意思決定するとされ、構成員が30名いて、20年以上活動しており、不動産、動産、預金を有し、重要な財産の処分には、構成員の3分の2以上の賛成が必要である等の団体としての主要な点が確定している。
(2)Xには代表者の定めがあり、現在の代表者Aである。
(3)Xには、「法人でない社団」で「代表者」の「定めがあるもの」にあたる。
4 構成員全員が原告となる。
(1)権利能力なき社団が訴訟提起する方法は、2つある。
(2)権利能力社団の財産は構成員に総有的に帰属するので、構成員全員が原告となる方法である。
(3)この場合には固有必要的共同訴訟となる。反対者がおり、その者が訴訟当事者にならなければ、当事者適格を欠くことになる。
 この場合には、反対者を被告として訴訟当事者に含める方法が考えらえる。
5 代表者が原告となる。
(1)権利能力なき社団の権利義務は構成員に総有的に帰属する。代表者が訴訟担当となる場合には、他人である構成員の権利義務について争うことになる。
(2)代表者が、訴訟担当となる場合には、訴訟の対象となる目的物を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権が必要となる。敗訴すれば、同処分を失うことになるからである。
(3)本件では不動産の処分であるから、Xは3分の2の多数の同意が必要である。
(4)しかし、この方法の場合には、反対者を被告にする必要はない。

設問2
第1 事例の整理
(1)XはYに対し土地所有権(総有権)の確認の訴えを提起した。・・・①
(2)YはXに対し土地所有権に基づく明け渡し請求をすることを考えている。・・・②
(3)Yは、①の訴訟で勝訴して、Xに土地所有権(総有権)がないことを確認した後に、Xに対し、Yの土地所有権に基づく明け渡し請求をすることを考えている。・・・③
第2 問題
(1)①と②の訴訟は、二重起訴(民事訴訟法142条)に該当し、②の訴えは許されないのではないか。
(2)本件では、①と②の訴訟では、①の訴訟物はXの所有権(総有権)、②の訴訟物は、Y所有権に基づく妨害排除請求権であるから、訴訟物は一致しない。
(3)しかし、一物一権主義により同じ不動産について、Xの所有権(総有)とY所有権は矛盾する。矛盾する訴訟の提起は、二重起訴で禁止されるだろうか。
第3 二重起訴
(1)二重起訴の趣旨としては、二重に審理をすることによる裁判所や被告の負担や、二つの訴訟の既判力が矛盾することによる混乱の回避である。
  しかし、訴訟物が違うために既判力の抵触は起きない場合には、実質的に争点が同じで、両判決の判断が矛盾しそうな場合でも、二重起訴(142条)に該当しない。
(2)もっとも、実質的に争点が矛盾しそうな場合には、事件の移送、弁論の併合(152条1項)、訴訟の事実上の中止など、多様かつ柔軟な対応がされることになる。
(3)したがって、①と②の訴訟は、二重起訴(民事訴訟法142条)に該当しないので、②の訴訟を提起できる。
第4 問題
(1)Yは、①の訴訟で勝訴して、Xに土地所有権(総有権)がないことを確認した後に、Xに対し、Yの土地所有権に基づく明け渡し請求をすることを考えている。・・・③
(2)③の訴訟の既判力はどのように及ぶか。
(3)①と②の訴訟物は同一ではないが、一物一権主義により、Yは、①の訴訟で勝訴して、Xに土地所有権(総有権)がないことが確認されるので、③の訴訟で、Yは自己に所有権があるとは争えない。
 しかし、③の訴訟で、Yは自己に所有権があることを立証しなければならない。これに対して、①の訴訟の既判力として、「Yに所有権がある」という判断の効力が及ぶものではないから、YはXには所有権がないと争うことは許される。

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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