民事訴訟

Q 弁論主義(第一テーゼ)の要件と効果について教えて下さい。

2026/09/06 更新

弁論主義の第一テーゼ

(1)弁論主義の第一テーゼは、「裁判所は、①当事者の②主張しない③事実を裁判の基礎として採用してはならない。」という原則である。
(2)これは、 裁判所は、①当事者が②主張しない③事実を認定することはでない、という意味である。

弁論主義と不意打ち防止
(1)仮に、本件各事実を認定することが不意打ちにあたらないとしても、弁論主義違反となるのはなぜか。
(2)弁論主義の根拠は、民事訴訟で審理の対象となる紛争については、もともと当事者が自由に話し合って解決することができるものであることから、どのような事実の有無が争点となるか、争点の設定という訴訟進行について当事者の意思を反映させるものである(私的自治)。
(3)例えば、裁判所が当事者が主張していない事実を指摘すれば、当事者に反論の機会を保障すれば、その事実を認めても不意打ちにあたらない。しかし、これを自由に認めてしまえば、争点設定について当事者の意思を無視することになるだけでなく、(当事者の主張していない)あらゆる事実が争点になることになり、争点が無限に増えることになり妥当ではない。

①当事者

(1)当事者とは、原告もしくは被告のどちらでもよい。
(2)原告もしくは被告のいずれかの当事者が主張すれば、裁判所は、その事実を認定しても弁論主義違反とならない。

②主張されていること

(1)「主張されている」とは、訴状、答弁書、準備書面(以下、「主張書面」という。)に事実が記載されて、期日にて、例えば、当事者が「準備書面のとおり陳述します。」と口頭で述べたことが必要である。
 また、期日にて、例えば、当事者が口頭で「時効を援用します。」と陳述し、裁判所が手続調書にその旨を記載する方法で、「主張する」こともある。
(2)例えば、証拠として提出されている契約書等から判明している事実であっても、それは、当事者が主張した事実ではない。
 尋問手続で、当事者が証言した内容(から判明している事実)も証拠である。それは、当事者が主張した事実ではない。

③事実

(1)主要事実だけが弁論主義の対象となる。
(2)主要事実だけでなく、重要な間接事実についても、弁論主義の対象となる、という考えもある。
(3)主要事実だけが弁論主義の対象となるのは、間接事実は、主要事実の推認に役立つ事実であり、証拠と同じ働きをする。例えば、Aさんが金回りがよくかったという間接事実があるとして、これに弁論主義が適用された結果、裁判所が他の証拠との関係でこれが真実であると考えたとしても、その事実を認定できなくなります。

 釈明権の議論では、「裁判所には司法権として、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任がある。」とされています。
 「弁論主義によって裁判所がある事実認定できない、もしくはある事実が存在する」と認定させられることは、「証拠に基づいて、裁判所が正しいと思える事実を認定することができなくなる」という危惧があり、主張事実に限定されるのが、通説です。

参考
 長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法 第3版補訂版」79頁以下 

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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