民事訴訟

Q 令和8年度の司法試験の解答を教えて下さい。

2026/08/12 更新

設問1
第1 課題1
 1 事実
(1)Xは、Y1とY2を共同被告として通常共同訴訟を提起した。
(2)Y1には売買代金請求であり、Y2には、保障請求ですから、「権利・義務が共通している場合や、同一の事実・法律上の原因に基づいている」おり、通常共同訴訟となる(民事訴訟法38条)。
 2 通常共同訴訟
(1) 通常共同訴訟は、個別の事件について一定の関連性があるため (民事訴訟法38条)、1つの手続に併合されているに過ぎない。
(2)証拠共通の原則を除いて、共同訴訟人の1人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)(共同訴訟人独立の原則)。
 3 問題
(1)Xは売買代金の支払い請求をしている。売買契約の成立は請求原因である。なお、民法575条の利息を請求するのであれば、引き渡しも請求原因である。
(2)Y1は、L2を通じて、売買代金の支払いや引き渡しを認めており自白である。
 なお、共同訴訟人の一人がした訴訟行為(自白を含む)は、他の共同訴訟人に影響を与えない(民事訴訟法39条)。Y1の行為はY2にも効力は及ばない。
(3)Y2は、契約不適合責任を主張して相殺を主張している。請求原因と両立して、その効果を妨げるので、これは抗弁である。
 同じく、Y1の行為はY2にも効力は及ばない。
3  当然の補助参加の理論
(1)そこで、学説において、「主債務者には保証人のために補助参加する利益があるので、補助参加の申し出をしなくても、補助参加をしたのと同一の効力を認めてよい(当然の補助参加理)」という考え方がある。
(2)Y1がした訴訟行為を、Y2との関係で補助参加人として訴訟行為をしたと認めようという考え方である。。
(3)これを肯定説と呼ぶ。
4 肯定説
(1)肯定説の根拠は、矛盾した判決の防止と、その後の不利益の回避である。
(2)例えば、本件では、主債務者Y1と保証人Y2が共同被告人となっている通常共同訴訟であるが、保証人Y2が欠席すれば、主債務が否定されても、保証債務だけ認められてしまいます。そうなると、Y1は主債務がないとして訴訟で勝ったとしても、Y2が敗訴して保証債務を支払い、その後、Y2に求償すると、Y1は主債務で勝訴した意味がなくなる。
(2) これが肯定説の根拠である。

第2 課題2
問題
(1)肯定説の問題点について指摘せよ。
‘否定説
(1)共同訴訟独立の原則に反する。
(2)補助参加の場合には、補助参加43条1項の申し出が必要であるが、これがない。
(3)補助参加を認めるとしてその要件や効果も不明確であるからです。
補助参加の利益
(1)補助参加を認めるとして、補助参加の利益があるか。
(2)補助参加は敗訴責任の分担であるから、保証人Y2が敗訴したときにしか効力が発生しません。したがって、Y1が行った訴訟行為で、保証人Y2が勝訴しても、何ら効力を有しません。

設問2
第3 課題1
 1 事実
(1)Xは、本件図面について文書開示命令の申立てをした。
(2)これに対してZは、職業の秘密に該当するとして開示を拒んだ。
 2 4号文書と「職業の秘密」
(1)4号文書は、民事訴訟法220条4号が定める除外事由がない限り、文書の提出義務を負うという一般的な提出義務が認められていることを定めている。
(2)しかし、「職業の秘密」(民事訴訟法220条4号ハ、民事訴訟法197条1項3号)にあれば、文書提出命令は認められない。
 3 「職業の秘密」
(3)最判18年判例と最判20年判例は、以下のことを明確にした判例である。
(4)民事訴訟法220条4号ハ、民事訴訟法197条1項3号の「職業の秘密」とは、その事項が公表されると、当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいう。
 金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された情報について、当該顧客が訴訟当事者として裁判手続上に開示義務を負う場合には、金融機関が職業の秘密として保護に値する独自の利益を有する場合は別として、その情報は、職業の秘密にあたらない。
4 あてはめ
(1)まず、ZはXのために製品を製造しているが、Xが開示義務を負う場合には、Zの独自のする利益を有する場合は別として、その情報は、職業の秘密にあたらない。
(2)本件図面には、Xの製造工程の秘密は含まれていない。
(3)しかし、ZはXと別々に工場を持ち、設備等を共有せず、本件図面には、部外秘とされているZの他の主力商品の製造と共通する部分が多く、その事項が公表されると、当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になることから、「職業の秘密」にあたる。

第4 課題2
(1)平成16年判決は、「黙秘すべきもの」として、弁護士が秘匿する主観的利益だけでなく、客観的にみて保護に値する利益をいう、とする。
(2)弁護士は、顧客やその業務のために、絶対に外にもらさないと約束することで、顧客等から本音で話をしてもらうことができる。
 これは、その情報が保護に値するかどうかとは別の問題である。
(3)なぜなら、弁護士が受け取った情報が、その顧客にとって大切ではないという理由で開示されてしまうと、顧客は安心して話をするっことができず、弁護士が職務上受け取った情報がどんなものでも開示されないという利益があるからである。
(4)課題1は、情報を提供した人にとって、その情報が重要でなければ開示の対象となるのに対し、弁護士の守秘義務としては、その話を外部にもらさないと約束することで、顧客と本音で話すことを可能として司法制度を成り立たせるという別の利益がある。
 したたって、「黙秘すべきもの」の解釈は、平成16年度と同じ基準で判断されるべきではない。

設問3
第5 課題1
1 事実
(1)XとY1の訴訟で、裁判所は、売買代金500万円と契約不適合責任に基づく損害賠償請求の相殺を認めた。
(2)既判力は、主文に包括するものに限り生じる(114条1項)のが原則である。しかし、被告が相殺の抗弁を主張し、その成否が裁判所に判断された場合、裁判所が自働債権を不存在としたその理由中の判断について既判力が生じる(114条2項)。
(3)したがって、XとY1の訴訟で、売買代金500万円と契約不適合責任に基づく損害賠償請求が相殺で消滅したことに既判力が生じる。
2 既判力の主観的範囲
(1)既判力は、当該確定判決に係る訴訟の当事者に限られるのが原則です。
(2)したがって、XとY1(主債務者)の確定判決の効力は、実体法上、訴訟当事者の影響を受けるべき第三者(保証人である)Yに及ばない。
3 実体法上の問題
(1)例えば、主債務者と債権者との間で主債務の履行請求訴訟において、主債務者Y1の勝訴が確定した。しかし、債権者が保証人に対し保証債務の履行請求をして、保証人Y2が敗訴すれば主債務者Y1に対し求償請求をすることは考えられ、主債務者Y2は勝訴した意味がなくなる。
(2)したがって、保証人が、主債務者の判決を援用できなければ、実体法上の整合性が持てなくなる。
4 反射効
(1) 反射効は、「実体法上、前訴の当事者の地位に依存する関係に立つ者に対し、既判力を及ぶ(反射効)」という考え方である。
(2) 反射効として、保証人であるY2とXの訴訟に、、XとY1(主債務者)の確定判決の既判力を及ぼせないか。
4 反射効を認め場合
(1)この点、保証人が敗訴して、保証債務を支払った。その後に、主債務者が勝訴したとして、主債務者の訴訟を援用出来としても、二つの矛盾する判決が存在するだけであり、結局保証人が救済されるわけではない。
(2)つまり、反射効を認めても、実体法上の整合性をとることはできない。
(4)したがって、反射効は認められない。
 Y2は反射効を理由として、証人であるY2とXの訴訟に、、XとY1(主債務者)の確定判決の既判力を及ぼせない。

第6 課題2
1 事実
(1)XとY2の訴訟で敗訴した。
(2)しかし、Y1の相殺の主張は、訴訟上の相殺である。
 訴訟上の相殺は、裁判所において判断されることを停止条件として実体法上の効力が生じる。
(3)Y2は、Y2の口頭弁論終結後に、Y1の相殺の生じているとして、後訴訟で、Y1の相殺による主債務が消滅し、これによって保証債務は消滅したと主張できるか。
2 遮断効
(1)実体法上は、訴訟の結果によって相殺の主張の援用を制限する理由はない。
(2)既判力の基準時は、当該確定判決に係る訴訟の口頭弁論終結時である。Y1の相殺の主張の効力が生じたのは、Y1の判決確定時であるから、Y2の訴訟の口頭弁論終結後の事情である。これらの行使は既判力では遮断されなくてもよいはずである。
(3)しかし、これらの行使を自由に認めては、紛争が蒸し返される結果、原告にとって大きな負担となる(法的安定性)。
(4)よって、Y2が、同相殺の主張を行使できたのにしなかったのであるから、これらの権利行使を認められない。
3 あてはめ
(1)昭和40年判決は、判決確定後に相殺の抗弁を主張することが認められたが、同事案では、自働債権を失っており、実質の敗訴という結論は変わっていなかった。しかたって、Xの利益を考えると、本件を昭和40年判決と同じだとはいえない。
(2)しかし、Y2は保証人であって、本件機械を利用しておらず、これに欠陥があるか分からないために損害賠償を行使できるか情報がない。また、Y1はY2に任せておけといって、Y1はこれを信じた。弁論が分離され、Y2の損賠賠償請求(と相殺の抗弁)が成立するか情報が入ってこなかった。
(3)よって、Y2は、後訴訟で、Y1の相殺による主債務が消滅し、これによって保証債務は消滅したと主張できる。

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

相続や遺産分割、借金問題、既婚者との男女トラブルなど、日常の不測の事態に直面した皆様の心理的なご負担を少しでも和らげ、円満な解決を導くためのサポートを徹底して行っています。どんな小さなお悩みでも、まずは当事務所の事務スタッフがLINEのチャットにて丁寧にお話をお伺いいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

「民事訴訟」トップに戻る

Contact.お問い合わせ

ご質問・ご相談などお気軽に
お問い合わせください。