民事訴訟

Q 平成23年度の予備試験の解答を教えて下さい。

2026/09/12 更新

第1 問題
1 概要
(1)XはYを被告として、XとYの売買契約に基づく代金を支払えとの訴訟を提起した。・・・本件訴訟
(2)平成22年4月3日、Yは死亡した。
(3)平成22年4月7日、ZがYの代わりに、本件訴訟の訴状を受け取った。
 なお、Yの相続人は子であるXのみであった。
(4)XはYの法定代理人として、本件訴訟で訴訟活動をしており、第一審の判決が出た。
(5)本件訴訟について控訴がされた。
2 問題
(1)訴訟係属はいつ生じるのか。
 訴訟手続の受継(124条)の問題となるか。
(2)任意的当事者変更として解決すべきか。
(3)当事者の確定の問題として解決すべきか。
第2 訴訟係属
 1 訴訟係属の定義
(1)訴訟係属とは、提訴によって当事者間の特定の事件が裁判所で審判される状態をいう。
(2)いつの時点で訴訟係属したといえるか。
(3)なお、訴訟係属後に、当事者が死亡した場合には訴訟の受継(民事訴訟法124条)の問題となる。これに対して、訴訟係属前に、当事者が死亡した場合には、当事者を欠くことにある。
 2 訴訟係属の発生時期
(1)訴訟係属の発生時期については、原告の訴状提出時、裁判長の期日指定時、被告への訴状送達時などが考えられる。
(2)裁判所と当事者の3者がそろって審理を始めれるのは、被告への訴訟送達時である。それ以前の被告の関与がない状態を訴訟係属とするのは被告の防御権を損なう。
(3)よって、被告への訴状送達時に訴訟係属する。
 3 あてはめ
 訴状の表示では被告はYである。しかし、訴状が到達したときにYが死亡しており、当事者を欠くことになる。
第2 任意的当事者変更
 1 問題
(1)ZがYに代わって、Yを騙って訴訟活動をしてきた。・・・①
(2)Zは、Yの相続人であるから、実体法上は、Yの地位を引き継ぐものである。・・・②
(3)本来、Xの訴訟はXにしか控訴できないところ、Zは原審を控訴して、当事者となれるか。
 2 当事者の問題
(1)当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。
(2)本件訴訟では被告はYと表示されていたのであるから、被告はYである。
(3)本件訴訟の被告を訴訟手続の受継(124条)や、任意当事者変更の手続にて、Zに変更できないか。
 3 訴訟手続の受継(124条)
(1)訴訟係属後に、当事者が死亡した場合には訴訟手続の受継(124条)という制度がある。しかし、同制度は訴訟結後の承継制度である。
(2)訴訟係属前に、当事者が死亡した場合には、同制度の適用はない。
 4 任意的当事者変更
(1)本件訴訟の被告を任意当事者変更の手続にて、Zに変更できないか。
(2)任意的当事者変更は任意的当事者変更については、新訴の提起と旧訴の取り下げを行う複合行為である。
(3)本件では、一つの考え方として控訴を認めて、第一審に差し戻して、第一審で当事者を欠くから請求を却下する。そのうえで、Yを被告とする新訴訟を提起する方法もある。
 しかし、この方法は考え方としてはありえあるが、今までの訴訟行為をやりなおす必要があり、妥当な解決とはいえないだろう。

第3 当事者の確定
 1 問題
(1)やはり、①②を考慮すれば、本件訴訟では被告をZに変更するのが妥当であろう。
  Zは原審を控訴して、そのまま、本件訴訟の控訴人として、控訴審の当事者となることができないか。
(2)本件訴訟の被告Yであるが、Zが第一審被告(控訴人)となれる法律構成がありえないだろうか。
 2 当事者の記載
(1)当事者の確定が問題となるが、訴状に記載された当事者(原告、被告)が訴訟の当事者となる(表示説)。
 しかし、訴訟の記載を前提としたがらも、裁判所で誰が当事者として振る舞ったか(行動説)か、原告の意思(実体法の解釈)を考慮し(意思説)、その表示を実質的に解釈すべきである(実質的表示説)。
(2)②の事実を考えれば、訴訟係属時(訴状の送達時)には、Yが死亡しており、Yの地位をZが承継しており、Zを被告するべき訴状の記載を解釈できる。
 ①の事実を考えれば、Zが被告として訴訟活動をしており、信義則上、その訴訟の被告として扱われても仕方がないだろう。
(3)よって、①②の事実を考慮すれば、本件訴訟の被告はZであるから、その記載が間違っていることになる。
 3 控訴審での内容
(1)まず、訴状の記載について表示の訂正として、第一審の被告をXと訂正すべきある。
 これによって、本件訴訟は当事者が存在することになる。
(2)次に、控訴審は控訴を受け入れて、続審として本件を審理すべきである。
 以上

弁護士 井上正人
 この記事の著者・監修 弁護士 井上 正人(いのうえ まさと) 大阪弁護士会所属(登録番号:43449) /
弁護士法人夕陽ヶ丘法律事務所 代表

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