【重要判例】判例(債権者代位訴訟に債権者が参加する方法)
2026/09/13 更新
債権者の別訴提起
(1)かつては、債権者代位訴訟が提起された場合、債権者は債権者訴訟の提起を知ったときには、被代位債権の処分権限を失うとされていた。
(2)民法改正により、民法423条の5は、債務者は、被代位権利について、処分権を失わないと規定した。
(3)しかし、民法改正下でも、先に債権者代位訴訟が提起されている場合、債務者自身が別訴訴訟提起することは二重起訴の禁止に触れて許されません。(岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻」601頁)
債権者代位訴訟が先行しているときに、債務者が同訴訟に参加する方法
(1)債権者の債務者に対する債権(被保全債権)の不存在を争わない場合には、債務者は、被代位債権の支払いを求めて債権者代位訴訟に対し共同訴訟参加できる(民事訴訟法52条)。
(2)これに対して、債務者は、債権者の債務者に対する債権(被保全債権)の不存在を主張し、自ら第三債務者に対して訴訟上権利行使をするためには、債権者代位訴訟に独立当事者参加(権利主張参加 民事訴訟法47条1項)すべきである(最判昭和48年4月24日民集27巻3号596頁)
参考
名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」113頁。
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻」601頁
最判昭和48年4月24日民集27巻3号596頁
1 事案
(1)債権代位の転用の事案であるが、債権者Yは債務者Xを代位して第三債務者Zに対して、XのZに対する請求(・・・・①)を行使する。債権者代位訴訟を提起していた。つまり、債権者代位訴訟が先行していた。
(2)債務者Xは、債権者Yに対しては、債務者に対する債権(被保全債権)の不存在(・・・②)を主張し、第三債務者Zに対しては、①と訴訟物が同じ、XのZに対する請求(・・・・③)を主張し、債権者代位訴訟に独立当事者参加した(権利主張参加、民事訴訟法47条1項)。
2 問題
(1)債権者代位訴訟の訴訟物は、①の債権である。したがって、③の訴訟は二重起訴に抵触しないか。
(2)独立当事者参加の権利主張参加には、「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する」ことが必要である(民事訴訟法47条1項後段)。
具体的には、参加人の請求と被参加人の請求(本訴請求)が論理的に両立しえない関係にあることが必要である。①と③の請求は両立しないといえるか。
3 論理的な問題
(1)裁判所が、②の訴えを否定してしまえば、債権者Xの債権者代位訴訟の①の請求は認容される。債権者XのYに対する①の請求も認容される。
(2)裁判所が、②の請求を認めれば、債権者Xの債権者代位訴訟の①の請求は訴訟要件を満たさず却下される。しかし、債権者XのYに対する①の請求も認容される。
(3)問題として、(1)の場合に、債権者Xの債権者代位訴訟の①の請求と、債権者XのYに対する①の請求も認容されるので、参加人の請求と原告の請求(本訴請求)が論理的に両立してしまう。
(4)つまり、①の請求と、③の請求は、両立する場合もあれば、両立しない場合もある請求である。(長谷部由起子「基礎演習 民事訴訟法 第3版補訂版」17頁)
4 民法改正
(1)かつては、債権者は債権者訴訟の提起を知ったときには、被代位債権の処分権限を失うとされていた。
(2)しかし、民法改正により、「民法423条の5は債務者は被代位権利について処分権を失わない。」とした。
(3)「民法改正下では、上記のように裁判所の結果によって、①の権利行使をする権限を失うかどうか決まる」ように変わった。(民事訴訟法判例百選(第6版)17頁)
5 判例
(1)最判昭和48年4月24日民集27巻3号596頁は、以下のように述べる。
「債権者が民法423条1項の規定により代位権を行使して第三債務者に対し訴を提起した場合であつても、債務者が民訴法71条(現民訴法47条)により右代位訴訟に参加し第三債務者に対し右代位訴訟と訴訟物を同じくする訴を提起することは、民訴法231条(現民訴訟142条)の重複起訴禁止にふれるものではないと解するのが相当である。けだし、この場合は、同一訴訟物を目的とする訴訟の係属にかかわらず債務者の利益擁護のため訴を提起する特別の必要を認めることができるのであり、また、債務者の提起した訴と右代位訴訟とは併合審理が強制され、訴訟の目的は合一に確定されるのであるから、重複起訴禁止の理由である審判の重複による不経済、既判力抵触の可能性および被告の応訴の煩という弊害がないからである。したがつて、債務者の右訴は、債権者の代位訴訟が係属しているというだけでただちに不適法として排斥されるべきものと解すべきではない。もつとも、債権者が適法に代位権行使に着手した場合において、債務者に対しその事実を通知するかまたは債務者がこれを了知したときは、債務者は代位の目的となつた権利につき債権者の代位権行使を妨げるような処分をする権能を失い、したがつて、右処分行為と目される訴を提起することができなくなる(大審院昭和一三年(オ)第一九〇一号同一四年五月一六日判決・民集一八巻九号五五七頁参照)のであつて、この理は、債務者の訴提起が前記参加による場合であつても異なるものではない。したがつて、審理の結果債権者の代位権行使が適法であること、すなわち、債権者が代位の目的となつた権利につき訴訟追行権を有していることが判明したときは、債務者は右権利につき訴訟追行権を有せず、当事者適格を欠くものとして、その訴は不適法といわざるをえない反面、債権者が右訴訟追行権を有しないことが判明したときは、債務者はその訴訟追行権を失つていないものとして、その訴は適法ということができる。」
判例の解説
1 二重起訴
判決は、二重起訴の問題については、独立当事者参加した訴訟は、全ての審理を一括で行うから矛盾が生じないので許されるとした。
2 権利主張参加の要件
(1)独立当事者参加の権利主張の要件である「参加の参加人の請求と被参加人の請求(本訴請求)が論理的に両立しえない関係にあること」についてはどのように考えるべきか。
(2)判例は、旧法下の理解の前提で、「債権者は債権者訴訟の提起を知ったときには、被代位債権の処分権限を失う。」ことを理由に、①の請求と、③の請求は両立しないとした。
(3)しかし、民法改正により、「民法423条の5は債務者は被代位権利について処分権を失わない」とした。
(4)民法改正により、債務者に対する債権(被保全債権)の不存在(・・・②)となれば、債権者Xの債権者代位訴訟の①の請求は訴訟要件を満たさず却下される。これに対して、債権者XのYに対する③の請求は認容される。したがって、①の請求と、③の請求は、両立しないと説明することになるだろう。
(長谷部由起子「基礎演習 民事訴訟法 第3版補訂版」17頁、名津井吉裕ほか「事例で考える民事訴訟法 」114頁。)




